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密を避ける宿泊施設の対応

休業要請が解除になり形のうえではコロナ禍の前に戻った形ですが、いわゆる「新しい生活様式」を実践した中での営業をしなければいけないため、温浴施設も宿泊施設もそれをどう落としこむか大変なことと思います。

検温やマスク着用、こまめな消毒などは既にやって当然のこと。
そこからさらに工夫して、お客さんに安心感を感じさせつつ独自性を出すのに知恵を絞り出す必要があります。
その中で、どんな工夫がされているかを調べてみました。

ウカスイモシリの予約システム

2019年に道北は豊富温泉に誕生した宿、ウカスイモシリ。
北海道では湯治できる温泉として最も知られている温泉地かもしれません。私の知り合いも数名湯治で通い、そのまま移住しています。
ウカスイモシリも、湯治で通っていた方が「豊富温泉に恩返ししたい」という思いで建てた宿です。温泉は引いていませんが、1階に自由に出入りできるコミニュティスペースがあり、コロナ禍前はイベントもよく行われていました。

こちらの宿は基本的に予約はウェブで、決済は予約時にネット決済で行います。予約が成立すると自動的に部屋番号が決まり、部屋に入るためのパスワードが生成されて予約者にメールで送信されます。

予約担当の方が台帳を見て部屋割りをしたり、チェックイン/アウトの時に清算したり鍵をやり取りする工程がありません。飛び込みのお客さんに対応するため人がいる必要がありますが、一般的な宿のフロント・予約担当者とは少し違う立ち位置になるような気がします。

こういった予約システムの採用が可能なのは全ての部屋が同じ広さ・同じ造りになっているからです。オープン時(昨年春)に実装されていたのでコロナ対策として導入されたものではありませんが、アフターコロナの時代にもうまくマッチするシステムだと思います。

山静館の部屋交代システム

登別カルルス温泉にある温泉宿・山静館では、当面の間18室あるところ9室しか使用しないとアナウンスしました。

ただ単純に使う部屋を半分にして人数を減らすというのではなく、部屋を2グループに分け、毎日交代で使うというものです。今日お客さんを入れた部屋は翌日は使わない、お客さんにとっては常に1日インターバルがある部屋に通される、安心感が持てる方法だと思いました。

私がホテル時代に見てきた客室の掃除は、最終のチェックアウト時間前から始まる時間との戦いです。部屋数が多ければ多いほどそれは熾烈になり、(本当はいけないのですが)省略できる作業はしてしまうことに。
コロナ禍で通常の作業に加え消毒などが加われば、清掃時間は戦争です。
もし山静館さんと同じシステムなら、単純計算で1部屋の清掃にかけられる時間が倍になりますし、万が一チェックインまでの間に全ての部屋の作業が終わらなくても、その後の空き時間にしっかり時間をかけて殺菌などができます。

また夕食時間の間にスタッフが部屋に入って布団を敷くというのが温泉宿でのおもてなしの1つだと思いますが、山静館さんではそれも中止。チェックイン時に布団が敷かれています。
部屋に入ったら、「あ〜着いた着いた!つかれた!」って荷物を置いてすぐ布団にゴロゴロできる…個人的にはそちらのスタイルの方が好きです笑

湯元館の無人日帰り入浴受付

良きモール温泉が楽しめる斜里町の温泉宿、湯元館。
日帰り入浴もやっていて、良い湯を気軽に楽しむことができます。
その受付システムを最近見て、なるほど!と思いました。

なんと入浴料をガチャガチャで支払う方式だそうです。
フロントで直接の小銭の受け渡しも、対面での接触もありません。が、全く知らない方がここで戸惑うことも考えられますし、この方式を実際に導入するのは少々勇気がいることです。
そう思うだけに、無人販売方式をよくぞ導入したと思います。
これは良識あるお客さんが多い証しでもありますね。

おもてなしとのバランス

上記の3軒はいずれも、お客さんとの接触時間をできるだけ減らしたり安心感をもって利用してもらうために有効な方法ではないかと思います。

ただ、お客さんと対面で接する機会がほとんどなければ、お客さんを観察しながら最適なおもてなしをする日本旅館の良さも減ることになります。
どちらかといえば私もチェックイン後は誰にも部屋に入ってほしくないタイプですが、温泉宿とビジネスホテルがその面で大差ないのであれば少し寂しい話ですし、日本の旅館が紡いできた文化がそこで途切れる可能性もあるかもしれません。

お客さんと接する機会が減る分、「客として歓迎されている」ということがしっかり伝わるような所作で少ない機会を生かす必要があります。
その面でも、これからが頑張りどころです。

温泉経営者だった経験を生かし、北海道の温泉をさらに盛り上げる活動をしていきたいと思っています。サポートしていただけたら嬉しいです!