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地球のはなし 休肝日その後

 年に1度の定期健康診断の時期になった。幸いなことに「異常なし」がずっと続いていたので、唯一の取りえは丈夫な内臓であるなどと、自信めいたものを感じていた。ところが、ものごとすべて、いつまでもうまく行くものではなさそうで、このところ、あちこちにガタが現れ始めた気配がある。ここ数年は毎年、中性脂肪が高いと注意を受ける始末だ。理由は明らかで、百も承知のことだし、少し摂生すれば済むことなのに、これまた、思ったようにうまくはいかない。

 先だって、『下戸列伝』なる本を見つけた。この種の本はすぐ目に付くのである。意外な人物が、体質的にアルコール類を受け付けない正真正銘の下戸だったとある。そういう人々がいる一方で、上戸はそれこそ掃いても捨てきれないほどいる。どうも私は、後の方に属するらしい。

 「濁り酒濁れる飲みて」と歌った島崎藤村も下戸の口だったそうだ。中学2年のとき学芸会で、その「千曲川旅情の歌」を朗読させられたことがある。そのころはもちろん、酒をなめてみたこともなかったのに、歌の雰囲気を自分なりに理解したつもりになっていた記憶があるところからすると、生来の上戸かたぎがあったのかもしれない。

 もうかれこれ10年ぐらいも前、この「灯」に、少しは肝臓をいたわりたいが首尾よくいくかどうか…と書いたのだが、さて、どうであったかというと、これまでのところ、首尾よくいかなかったようである。
                           (2001.6.26)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。


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