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地球のはなしスペイン旅行 

 スペイン8日間の旅という格安のパック旅行が目に付いた。いつかは行ってみたいと思っていた国だったし、スケジュールもなんとか調整できそうだったので、決心して出かけた。旅そのものを目的にした海外旅行も、添乗員の指示のとおりに行動するというのも初めてだったが、そんな旅を望んでもいた。

 バルセロナから地中海沿岸に沿って南下し、バレンシア、グラナダを経てラマンチャ地方を北上し、マドリードに至る約1500キロをバスで移動した。ほとんどバスに乗っていたと言えなくもない。

 この旅の行程の大部分は、なだらかに広がる水に乏しい丘陵地である。古くはローマ人たちが水道を引き、中世にはイスラムの人たちが大規模なかんがいを行った。今では大きなスプリンクラーが備えられている。

 季節は春の盛りに向かっていた。空には一片の雲も無いほどであった。バレンシア辺りに広がるオレンジ畑ではすでに主収穫期が過ぎていたようだったが、深い緑のあちこちに金色の果実が輝いている。ラマンチャでは、白いアーモンドの花とピンクの桃の花がオリーブの暗い緑と映え合っている。しかし、整然と手入れされた農地を離れると、丈の低い草がまばらに生える荒れ地である。

 目の届くかぎり続くこうした風景はすべて、この地に足跡を残したさまざまな民族が作り上げてきたものなのであろう。トレドを始めとする歴史に富む都市群も印象的であったが、半乾燥地に展開する農村風景が目に焼きついた。
                           (2002.3.29)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。

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