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地球のはなし セミ

 この前の日曜の午後、あまりの暑さにうんざりして、外出する気にもならず、本を読む気にもならず、ぼんやり外を眺めていたら、伸びるにまかせた雑草が、狭い庭をますます狭くしていて、暑さがいや増してきた。

 意を決して草抜きを始めたのだが、細い草の茎にセミのヌケガラがしがみついているのに気がついた。木の枝にもしがみついている。それも少なくない数なので、家人にそう言うと、セミが多いみたい、家の中にもなんども飛び込んできた、との返事である。

 今夏のセミの声には、せみ時雨の風流さを通り越して、うるさいと言いたくなるほどの激しさを感じていた。そう感じるのは、例年にない猛暑のためにいらついているせいだろうと思っていたのだが、それだけではなく、我が家のまわりには、実際にセミが多いようなのである。

 セミの一生の大部分が土の中で過ごす幼虫期であることは、よく知られている。手持ちの本によると、幼虫期がはっきりしている日本のセミはアブラゼミとミンミンゼミで、産卵の年から7年目に成虫になるのだそうな。子供のころよく捕ったシャワシャワと鳴くクマゼミのことが書かれてないのは、意外にも分っていないのかもしれない。

 ともかく、1994年ごろの夏に生まれたセミが、ようやく大人になり、鳴いているのを聞いているわけで、それをうるさいなどとは手前勝手な言い分であるに違いない。しかし、今年の夏は暑い。涼風が立つのを期待しています。
                           (2001.8.25)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。


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