地球のはなし 日本縦断
2004年に退職してから当然出張はなくなり、大分県外に出るのは、たまさかの私用の旅だけとなった。
ところが、めぐりあわせで、昨年9月末から年始にかけての約3ヶ月間に、北は釧路から南は長崎まで、あちこち訪ねることになって、結果を大げさに言えば、日本をほぼ縦断した。
札幌・京都・長崎への旅は学会・同窓会・講演会という公的なものだったが、横浜には孫たちと正月を過ごすためにでかけたのだった。
これらの旅で実感したのは、日本の風物や景観の豊かな多様性である。いくつか挙げると、釧路湿原では広大さを、定山渓一帯では異形の岩山を、草津では深い山々を、外房では太平洋の水平線と荒波の磯と浜を、そして各地の歴史的遺産を楽しむことができた。
しかも、晩秋から初冬にかけていたので、黄葉や紅葉に彩られた景観に出合ったのは幸運だった。
後楽園(岡山)の紅葉を観て、1週間後に京都は岩倉辺りの盛りの紅葉に浸ったのは、贅沢の極みである。
しかし、楽しいことばかりではない。東京では、かれこれ40年も昔の南極での仕事をはじめ、大恩を受けた鳥居鉄也先生のご葬儀に列した。
享年90であったから、この日が来ることは避けられないと分かっていたとはいえ、往時がしのばれてつらく哀しいことであった。
(2009.1.23)
別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。--
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