見出し画像

地球のはなし 日本人の評判

 来年の9月末に国際温泉科学会の大会を別府で開催することになり、その説明のため、11月初めにイタリアのレビコ温泉で開かれた国際温泉科学会の会議に出掛けた。レビコ温泉はロミオとジュリエットの舞台であるベローナの北方、トレントの郊外にある。

 イタリア旅行は初めてである。少なからぬ人から置引やスリには注意するようにと忠告されたし、ガイドブックにもそう書いてあるし、1人旅ではあるし、不安な気持ちで出発したのだが、実際は至って安全で快適な旅であった。

 例えば、トレントからレビコまでのローカル線では、何のアナウンスもなく、乗り過ごすのではないかとヒヤヒヤしていたら、たぶん下校中の高校生らしい男の子が世話を焼いてくれたりした。

 会議では、たいていは私は全然分からないイタリア語で、フランス語やスペイン語(これらも分からない)を話す人もいて、概要がときどき英訳されるくらいである。英語を話す人はまれであった。それでも、話の筋は分った気になったから不思議である。

 驚いたことがある。コーヒーブレイクで地元のお役人と顔を合わせた途端、「日本人は仕事に忙しくて、温泉に行くことなんかないのじゃないですか?」と言われた。会食の席では、ルーマニアの人から「日本では今でも週6日間働くと聞いているけど、本当ですか?」と真顔で尋ねられた。日本人の生活の実情は、ほとんど知られていないようなのである。
                           (2002.11.30)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?