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地球のはなし 鉄腕アトムと握手

 6月初めの週末、大学の教養部時代の同級生が、京都の嵐山に集まった。当時の担任の先生もお誘いしたら、三高のときでしたか新制になってからでしたかとの質問があって、昭和35年入学ですと答えると、ぼくとあまり(年が)違わないなあ、とおっしゃったそうだ。実は20ほども違うのだが、還暦を過ぎると、似たり寄ったりと言えなくもない。

 フェリーは早朝に大阪に着く。それで、宝塚の手塚治虫記念館に行くことにした。念願だったのだ。とっくに廃刊された雑誌『少年』に「鉄腕アトム」の前身である「アトム大使」の連載が始まったのは、小学5年のときだった。ほぼ同じころに出合った「新世界ルルー(消えた秘密境)」とともに、飛びつくようにして読んだ。

 「ジャングル大帝」「ロック冒険記」「ぼくの孫悟空」などから晩年のものまで、ずっと読み続けた作品の題名を挙げるだけでも、この原稿はいっぱいになってしまうだろう。

 記念館には、少年時代の作品群(とても子供のものとは思われない精密な昆虫のスケッチ、ヒゲオヤジやヒョウタンツギがすでに登場している漫画)から、私たちが親しんだ作品の原稿までが系統立てて展示されていて、2時間ほどを楽しませてもらった。

 子供たちはぬいぐるみを着た鉄腕アトムにさわったり、握手している。そろそろ退館しようとしたら、ジジイの私にまで手を差し出してくれた。

 アトムと同窓会での懐かしい顔。ちょっぴり若さを思い出した1日となった。
                            (2002.7.2)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。


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