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地球のはなし マニュアル

 近頃は、郊外の大型ショッピングセンターに出かけることがある。と言っても、家人たちが品定めに回っている間、2人の孫の世話をするのが役目である。

 先だって、ひとしきり遊ばせてから、ソフトクリームを食べさせてやろうと、たまたま目の前にあったファーストフードのチェーン店で買おうとした。サイズは大人向けのものしかないので、2つに分けてもらえないかと頼んだら、駄目とのこと。では私のほうで2つに分けるから、カップだけを1つ下さい、もちろん代金を払いますと言うと、これも駄目。堅苦しいですなと言うと、規定にないものですからとにべもない。唖然とした。結局、スプーンですくっては、食べさせることになった。

 最近、似たようなことにときどき出会う。その1つ。飛行機を利用して登録すると点数が溜まり、特典が与えられるというのがある。昨年の海外旅行で事後登録をしたら、帰国の分は認めるが、出国の分は書類不備のため認められないとの連絡があった。当社の便で出国したという証拠を出せという。そんな証拠を持っているのは、航空会社そのものではないか。あれこれ腑に落ちないが、面倒くさくなって諦めた。

 これらは、さまざまな作業を合理的に進めるために作成されている手引書、つまりマニュアルに忠実に従った結果なのであろう。しかし、マニュアル一辺倒は、人びとから考えるチャンスを奪い、ギスギスした社会に繋がって行きはしないかと、危惧を覚える。
                           (2005.3.21)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。

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