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地球のはなし 食べる量 

 私はあまり買い物をしない。品物を探して回るのが面倒くさいのである。ただし、スーパーの陳列を見るのは好きで、よく行く。食い意地が張っているには違いないが、さまざまな色や形をした野菜・魚・肉などが並んでいると、良い気分になるのだ。近頃は、酒類を置いているところが増えたので、それを見るのも楽しみになった。

 気が向けば、もちろん買う。自分自身で料理もする。と言うと、信じられないというような表情をされることがあるけれども、そんなに下手ではないと自分では思っている。

 ところが最近、作るには作ったが、なかなか無くならず、何日も同じものを食べる破目になって、そのあげく捨ててしまうことが増えた。もったいないことだが、ほんの数ヶ月前までは、そうではなかった。

 別府を離れていた長女一家が、5年前に帰ってきて近くに住み、2人の孫が生まれて、騒々しくもにぎやかな日々が過ぎていたのが、この4月に関東の方に引っ越していった。それで、家内と2人だけで食べる量なんか、高が知れていることに気づいた。たくさんの食べ物は、ほとんど毎日のように顔を見せていた若い者、とくに孫たちが食べてくれていたのであった。

 スーパーに行っても、残ることを思って、以前ほどには買わなくなった。加齢とは、食べる量が減り、そして買い物の量が減るという途につながっていくものらしい。高齢化社会の意味の一端を実感しはじめた気がする。
                           (2005.6.28)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。

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