見出し画像

地球のはなし たまには散歩を 

 寒さには強いつもりだったのに、2月に入ってからの寒さには閉口した。引きこもり状態に近くなったことも何回かあった。そんな日が続くと、さすがに外に出てみたくなる。

 中旬のある日、ちょっとした用事ができたので、別府駅まで歩いた。寒気はやや厳しかったものの、無風快晴。その陽光に誘われて、海岸まで出てみた。眼前には別府湾が開け、右手には大分から佐賀関、左手には国東、振り返ると鶴見の山々。素晴らしいパノラマである。

 折しも、鶴見連山には数日前からの雪が残っていた。そんな残雪の山肌に陽の光が当たると、凹凸やしわが誇張されて、斜面の険しさと複雑さが浮かび上がってくる。めったに見られない光景であった。

 私自身も、めったにないことに、鶴見岳一気登山のコース沿いに、境川をさかのぼって帰ることにした。もちろん、歩みはのろい。

 青山高校の近くでコースから離れ、橋を南に渡り、グランド脇の道を登って行ったら、なにやら文字が彫られた、古びた四角の低い石柱があった。文字は、南面が「別府町」北面が「石垣村」、東と西の面は「境界」である。石は角閃石安山岩、いわゆる別府石らしい。

 考証も何も無いが、100年以上も前のものかもしれない。ちなみに、石垣村の成立は明治22年、別府村から別府町になったのは明治26年である。

 しょっちゅう通る道なのに、これまで気づかなかったのは、車だったからだ。たまには散歩をと思ったのだが…。
                          (2008.3.17)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。--


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?