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地球のはなし いま読んでいる本

 11月11日の本紙書評欄に『非線形科学』(集英社新書)が紹介されていた。この本には強い関心をもった。タイトルに加えて、著者の蔵本由紀氏が大学1、2年の同級生だったからだ。名前の字から女性と思われる方があるかもしれないが、よしきと読んで男性である。ついでに、私自身もしばしば女性と間違われた。

 内容に少し触れたい。非線形は、科学技術分野のいたるところに現れる。ごく簡単には、他のものと「お互いに影響しあうこと」である。当然、線形というのもあって、「影響しないこと」である。

 私たちが出会う現象のすべては非線形である、と言っても過言ではない。ところが困ったことに、非線形の数式は一般的には解くことができない。しかし、人間はこれまで、細かい要素に分割して調べ、工夫して線形に書き直し(近似)、コンピューターなどでシミュレーションしたりして、さまざまな問題を解いてきた。

 そうしたやり方では解決できないものも、もちろん存在する。最たるものは、生き物が織りなすさまざまな現象であろう。蔵本さんたちが進めている科学は、多様な非線形現象を総合的視点から数理的に記述する方法を探り、それを通してものごとの本質に迫ろうとしているもののようである。

 全編にわたる高密度で魅力的な文章には、多くの示唆が含まれているような気がする。わくわくしながらも、どのあたりまでついて行けるだろうかと思いながら、読んでいるところである。
                                                                                                    (2007.12.4)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。--

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