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地球のはなし 役に立たない研究?

 またしても古い話だが、10年ほど前、この欄に「別府の温泉ができてから10万年」という内容の小文を、不備なところは修正してゆかねばならないが…という注釈を付けて、書いた。

 その後、不備が見つかったので、5万年と修正することになった。それでも、いろいろな観測データにはあいまいさが含まれているので、正確さには限界がある。ざっと、5万年程度と考えておいたほうがよい。

 そんな問題点が残されてはいるものの、温泉の継続年数、平たく言えば年齢が見積もられたのは、私が知るかぎり、世界でもこれが最初であって、こうしたことが可能になったのは、先輩や同僚たちの長年にわたる研究の積み重ねがあったからである。

 数万年というのは親しみやすい年数ということもあるのだろう、少なからぬ人々が興味を示してくださり、本紙をはじめいくつかの新聞にも取り上げていただいた。その一方で、それがどうしたというような感想を抱いた人もおられたようである。

 憶測は禁物だが、あえて推し量ると、そんなことが分ったからといってどんな役に立つのか、ということなのかもしれない。

 たしかに実生活の役には立ちそうもない。しかし、私の感覚では、自然の仕組みの一端をのぞくことができて、大いに面白い。

 そして、こういう研究にも関心を寄せてくださる人々がおられることに、口幅ったいながら、感動し力づけられている。
                        (2001.10.30)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。



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