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地球のはなし SARSの影響

 この欄に旅行の話しを書くことが多いので、しょっちゅう出かけているように思われるかもしれないが、実際は研究所の自室に閉じこもっていることの方が多く、この10日間ほどは、ほとんど家と研究所を往復するだけだった。と書くと、世間と没交渉のようにみえるけれども、そういうわけには行くはずもなく、いろんな情報が飛び込んでくる。

 自室に閉じこもっていたのは、この9月末に開催する温泉科学会大会のプログラムを作っていたのと、参加の意思を表明していた人たちに、再確認の連絡を取っていたからである。10年ほど前は航空便が主体で、返事が帰ってくるまでに2週間は要するのが普通であったが、電子メールは、地球の裏側の南米とだって、瞬時に接触できる。

 その反応。「参加します」や「参加できると思う」というのがある一方で、「資金調達中です」とか「どうしても旅費の都合がつきません」とか、さまざまである。そんな短い応答の中に、経済をはじめとする、それぞれの国の社会情勢が垣間見える。

 今回は重症肺炎SARSが加わり、参加・不参加の回答はそっちのけで、日本の状況を聞いてきたものもある。お隣の中国からは「SARSの影響が大きくて参加できそうもありません。授業もできない状況です」と、悲鳴さえ聞こえてきた。

 影響を受けているのは、私たちの学会だけではない。開催延期や中止に追い込まれそうな集会もあると聞く。沈静化を祈るしか方法がない。
                                                                                                   (2003.6.20)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。

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