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誘惑銀杏/毎週ショートショートnote


唐突ですが、今週も参加してみました。410字のショートショート。

タイトル見て思いついたのはオマージュでした。しかし、まあ、どぎつめの内容になってしまいましたので、閲覧注意です(笑)




誘惑銀杏


銀杏の樹の下には屍体が埋まっている!

昔、そんな小説を読んだような気がする。

市内の一番大きい公園には、幅10メートルの舗装道の両側に大きな銀杏並木が並んでいる。
秋には、一枚一枚数えている間に夜が更けてしまうほどの歪な形をした黄色の葉が、不規則に回転しながら舞い落ちる。もしかしたら、もともと空が金色だったのかもしれない。

屍体が埋まっていてもまるでおかしくはない。美しすぎる光景は私を不安にする。
あの銀杏の樹一つひとつに屍体が埋まっていると想像してみる。屍体はみな腐乱して蛆が湧き、堪らなく臭い。

台風が去った後にできた水溜めの中には、産みたての鶉の卵のような水晶が大量に溜り沈んでいる。見るなり胸を衝かれるような思いがした。墓場を発いて屍体を嗜む変質者のように。
誘惑は、憂鬱が完成するとき私を和ませる。

ああ、銀杏の樹の下には屍体が埋まっている!

「それは銀杏ではなく、桜の樹よ。黄色は檸檬。」

堪らなく臭いのは屍体とは限らない。

(410字)




参考


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