見出し画像

『つなわたりの倫理学 相対主義と普遍主義を超えて』(村松聡著、角川新書)普遍主義でも相対主義でもただ真ん中取るわけでもなく

世の中には、いわゆる究極の問題的なものがあります。

例えば、安楽死。妊娠中絶の是非。癌の人に真実を伝えるか。。。

この問題に、倫理学の観点から論じているのが本書。

本書の特徴は、倫理学の中でも徳倫理学のアプローチによって、諸問題を論じているとのことです。

倫理学には大きく分けて、義務論、功利主義そして徳倫理学があるらしい。

義務論、功利主義のわりに、徳倫理学(とくに現代の議論状況)はあまり紹介されてきていなかったので、その点が画期的とのことです。

※Amazon のアソシエイトとして、この記事は適格販売により収入を得ています。

しかし、難しかった!

後半の潜在力とかはちょっとついていけなかった笑

しかし、「読めていなくても堂々と語る」のが本noteですから(!)、こっから先は私が本書から押さえておこうと思ったことだけ、合ってるか間違ってるかわからなくても、私なりの言葉にしてしまおうと思います。

「しなければならない」倫理から「したい」倫理へ

倫理の原点は、「幸福」。
つまり、「どうやったら幸福になれるのか」である。

難しいこと考えずに、あるいは難しすぎてわからなくなったら、とりあえずここに帰ってこよう。

もちろんこれだけですべて解決しないけど。

「しなければならない」というべき論だけでは、「幸福」にはたどり着けない。
もっと、「倫理」は「しなければならない」から自由になるべきだ。
そこには、徳倫理のアプローチが有用である。

幸福を求める手がかりとしての徳(アレテー)

徳倫理を論じたのは、アリストテレス。
アリストテレスは、徳を人間の本来的な生活を十分に発揮するための資質、心の姿勢ととらえていた。

例えば、「節制」。
つまり、心構えの問題である。

これは生活全般に及ぶ。

幸福だけでは現代の倫理問題を解決できない

しかし、「どうやったら幸福になれるのか」を考えるだけでは現代の倫理問題を解決することはできない。

幸福は、人それぞれである。
何が幸福かは人それぞれで相対的だから、幸福を基準に一般的な倫理基準を作ることなんてできない。

でも、幸福には、共通するもの、一般的な部分など一切ないと言い切れるのだろうか。

例えば、幸福ではなく「人間本性」として一般に共通する部分はないだろうか。

いや、人間本性といったって、当時の社会状況や時代によって相対化されるから、そもそもそれも人それぞれなんじゃないか。

というか、倫理問題を解決するために、普遍的に妥当する倫理基準なんてものが必要なのだろうか。。。

あらゆるものが相対でしかないから、倫理的基準はない、人それぞれだ(相対主義)。

いや、絶対的普遍的な倫理基準があり、それに従うべきなのだ(普遍主義

どちらも極端だというのが、本書の立場です。

そして、「つなわたり」が始まります。

つなわたりの倫理学

相対主義も普遍主義もどっちも極端なら、例えば、真ん中であいだ取ってバランスとったらいいんじゃないか。

しかし、事はそんなに単純ではない。

真ん中を取って、うまくいくこともあるかもしれないけれど、つねにそうとは限らない。

そもそも、真ん中であいだ取ってバランスとるってどうやるの?人それぞれだったら相対主義だし、何か基準があるなら普遍主義ではないか?

やっぱり、「つなわたり」するしかない。

いやーでもこっから先はマジでむずいですね(笑)

でも、この「つなわたり」に徳倫理学の神髄あるいは葛藤があるような気がしてなりません。

それは本書を読んでください。

ひとつだけ補助線

ひとつだけ補助線を。
それは「思慮」という概念です。

「思慮」とは、行為への道筋をつけるための私たちの思い悩む知性を言います。

絶対的な基準があると普遍主義に拘泥するわけでも、人それぞれだからしょうがないと諦めて相対主義に陥るわけでも、適当にあいだ取って終わりにするわけでもなく、誠実に思い悩めということですね。

徳倫理は、「姿勢」の問題なのかもしれません。
あるいは、「至誠」の問題といえるかもしれません。

徳倫理には、あいまいだという批判があります。

たしかに、何か明確な基準がないと、統一的な答えが出せず、社会は混乱してしまう気がします。

しかし、あいまいさを許容しない社会もまたあまりにも息苦しく、ある意味で暴力的です(ヴァーチャル図書館)。

私的にはこの葛藤をどう落とし込むか。

義務論と功利主義と徳倫理、どれが最も優れているのかそれはわかりませんが、そんな究極の議論は学者さんに任せておいて、市井に暮らす我々は、もっと実践的にとらえてもいいかもしれません。

つまり、この3つの思考フレームをうまく使い分けてしまうくらいの柔軟性があってもいいのかもしれない。
むしろ、あらゆる思考方法を意識して、きちんと思慮する姿勢が重要なんじゃないか、そんな感じです。

というわけで、「今日一日を最高の一日に」

起床 6:15

この記事が参加している募集

#読書感想文

187,975件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?