明日死ぬかもしれない人生
◯題名
脳は楽観的に考える The Optimism Bias
◯著者
ターリ・シャーロット ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジのウェルカム・トラスト・センターの研究員。ニューヨーク大学で心理学と神経科学の博士号を修得。
訳 斉藤隆央 東京大学工学部工業科学科卒業。
◯書籍の概要
まず初めに楽観的になることは非常に良いとされており、楽観的な人は長生きし、健康で幸せに暮らし、資産の運用に優れ、成功を収めるというデータがたくさんあることを知っておいて欲しいです。
しかし、楽観的でいることは良いことばかりではありません。現実問題を直視できなくなるこの楽観性バイアスに陥ってしまうことがいかに危険であるかを全人類に伝えたいです。
著者が楽観性をテーマとする研究は、人間の本性の前向きな面に強い関心を持ったことから生まれた。と言いたかったのですが、「認知神経科学者、人が期待する心を持つことの生物学的根拠を探し求める」人は誰しも明日死ぬとは考えない。非現実的になるのを防ぐことが意味のある明日を作り出します。
バイアスとは傾向のことであり、人は他の人よりも優れていないにしても平均ぐらいだろうと思い込んでしまうんです。自分は絶対に離婚もしないし、仕事もなくならない、事故で死ぬこともないし、大病を患うことはない。と少しはよぎっても本当に意識していますか?
本書を読むと「今」この時から自分がいかに楽観的で将来について何も考えていなかったな。とつくづく思い知らされました。
◯学びになった箇所
・第二次世界大戦から信用危機まで リスクをみくびるのは赤ワインの飲みすぎと同じ
ソ連のスパイが当時ヒトラーがソ連に戦争を仕掛けることを知り、スターリンに伝えたそうです。
しかしスターリンはドイツとソ連は友好的で不可侵条約までしているのになぜ攻撃してくるのか。リスクがあることを無視してしまったのです。
他のスパイやアメリカからの情報も全てを遮断してしまい、結果的に死傷者を増やしてしまった可能性があり、スターリンはまさしく安全であるという楽観性バイアスに陥ったのです。
また、学生に課題をいつまでに終わるか最短を聞いたところ学生は29日で終わるといい最長は49日。しかし実際にかかった日数は平均56日でした。
実際に病気になった時は苦しいのに、病気が治ると病気だったことを忘れてしまう。どうして現実を目の前にしても楽観性を持ち続けるのでしょうか?
答えはやはり脳にあり、ある夜美味しいレストランでロブスターを食べて値段を4000円だろうと予想していたのに対して実際には5400円だった時に脳の中では前頭葉の一部で血中酸素濃度依存的シグナルの増大が観察されたんです。
予想との誤差を脳がチェックする時におこるものなのですが、新たに得られた値段が予想より下回っていた、つまり良い時に”だけ”、脳が誤差をチェックできるということだったんです。
ショックを受けた方のミスは脳が自動的にチェックをしないということが研究でわかってしまったんです。
◯他の人におすすめしたい箇所
・鬱になるとは思っていない人にポジティブ心理学者のマーティン・セリグマンの犬による実験を紹介します。
想像してみてください。
窓も、テーブルも、椅子も、テレビも何もない真っ白い箱のような部屋にいる自分を。
急にブザーがなり、身体中に電気が流れ悶え苦しむ自分。
しばらくすると電気は落ち着き、辺り一面を見渡しても何もない状態で再度ブザーがなり、電気が流れ蹲る自分。
「もう、嫌だ。ここからでたい」その一心で部屋中を探すもブザーがなり電気が流れる。
ようやく見つけたドア。扉を開けると全く同じような部屋があるだけでした。
そしてブザーがなる。
ホラーのような話ですが、犬を使った実験でこれを行ったそうです。
犬に鎖をつけて逃げられないようにし、ブザーがなった後に電気を流すと犬は苦しみ、うずくまります。これを繰り返した後、鎖を外し、簡単に逃げれるようにしました。
再度ブザーを鳴らしてもジャンプすれば逃げれる高さの柵を見向きもしません。それどころかうずくまって耐えるという結果になりました。
この結果は全ての犬に共通して起こったわけではありません。同じような実験をしても簡単に逃げる犬もいたそうです。
しかし抵抗をせずに最初から諦めてしまう犬は5%は確実にいると言われています。
これを人間に置き換えると仕事で鬱になる人が多いのは納得です。
◯どんな人におすすめか
・全人類
・偏見、バイアスに気がつけていないのでたまたま本書を取るしかない
・もし可能なら1度でもみたことがあった人
・気になっていた人
・なぜ鬱になってしまうのか知りたい人
・うつを克服することができる可能性がある
◯感想
知ることで自分の脳への理解ができ、行動を変えることができる1冊です。人は誰でも過大評価をしてしまい、本来あるべき事実を捻じ曲げ、リスクを恐れ目を閉じてしまいます。本書を通じて本当に見直さないといけないことがわかります。
ちなみに私はお金使いのだらしなさです。
人は誰しも明日死ぬとは考えない。非現実的になるのを防ぐことが意味のある明日を作り出します。
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