かつては「勤労感謝の日」ではなく「新嘗祭」という祭日だった
今月、11月23日は「新嘗祭(にいなめさい)」
宮中をはじめ、日本全国の神社で一年の実りに感謝するお祭りが行われます。
今月の御朱印モチーフは「新嘗祭」。稲作の一年と儀式の様子を描き、先月の神嘗祭から見開き4面が屏風のようにつながる特別なあしらいとなっています。
新嘗祭が行われる11月23日は、現在では国民の休日である「勤労感謝の日」にあたります。
勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う日が勤労感謝の日です。
「新嘗祭」として、その年の勤労で結んだ成果を国民一体となり神様に捧げていた祭日が、戦後に転用されて今日のような勤労感謝の日になりました。
◆宮中でも重要な、古い歴史を持つお祭り「新嘗祭」
新嘗祭(にいなめさい)は日本最古の歴史書である『古事記』にも記されている、古い歴史を持つ宮中の恒例祭の中でも最も重要な祭儀です。
新嘗祭の「新」とは新穀を、「嘗(なめ)」は奉ることを意味しており、新嘗祭では各地の神社でもその年の新穀をお供えし、一年の実りへの感謝とともに国家国民の安寧をお祈りします🌾
特に宮中では、皇居内の神田にてお育てになられた新穀を奉るとともに、天皇自ら神々を饗応し共に新穀をお召し上がりになる「神人共食の儀」を行い、神々との絆を深め、そのお力を更新されます。
また、新嘗祭の行われる11月後半は、旧暦でいう1年で最も日の光が弱まる「冬至」に近い日取り。
そして新嘗祭が行われる午後10時という時間は、“もっとも太陽の衰える時刻”です。
天皇の皇祖神である天照大神は太陽神です。
冬に向かって太陽神の力が弱まる時期に行われる新嘗祭で、神様に新穀を捧げ、自身も同じ食べ物を食することで神様のお力を戴き、天皇としての霊性を更新する儀式であるとも解釈されています。
◆昨年行われた、一代に一度の「大嘗祭」
天皇の即位後に初めて行われる「新嘗祭」は「大嘗祭(だいじょうさい)」といいます。「新嘗祭」から規模を大幅に拡大し、一代に一度の「皇位継承の重儀」として位置づけられるスペシャルなもの。
昨年の「令和の御代替わり」にかかる一連の儀礼のクライマックスとして、多くの報道がされたのは記憶に新しいところです。
この儀式だけの為に建てられた大嘗宮の中で、新たな天皇として神々をもてなし、食を共にして契りを深め、御力を戴く儀式を完遂することで、「御大礼」と呼ばれる天皇の即位にあたる一連の儀式は幕を閉じます。
◆同じものを食べることで絆を深める
この「大嘗祭」をはじめ、祭りや神事において必ず行われるのが、祭典終了後に御神酒などをいただく「直会(なおらい)」という神事です🍶
御神酒をいただくことは、神様と食を共にし、お力を戴くことに繋がります。
「直会」は、“神様にお供えしたものを祭典に関わる一同で食すことで神様との絆を深め、御力をいただく儀式”です。
「直会」の語源は「もとに戻る=直る」の関係を示して、「祭事(非日常)から平時に戻る」という意味と考えられ、直会そのものも祭典の一部であることを示しています。
ご祈祷の後などには、簡略して御神酒をいただくことが一般的になっていますが、新嘗祭や大嘗祭の中で行われる「共食の儀礼」によって神と人とが一体となることが、直会の根本的意義となります。
大嘗祭での直会は「大饗の儀」と呼ばれます。
◆「お神酒をいただく」ということ
初宮や七五三、厄祓などの人生儀礼もそうですが、私たちは日々の営みの中で節目を正し、ご奉告の神事を行うことでお護り・お導きをいただき、立ち止まり振り返り顧みながら、その御力をお分ちいただき暮らしてきました。
そのお力をいただきながら、「祭り」という目に見える行為として形にすることで、神と自然と人の連帯を尊び、その心を連綿と守り伝えてきたのです。
かつて人々は「新嘗祭」の祭礼の意義を踏まえ、この日に神様に供えるまでは新米を食べることを慎むという習慣がありました。
新嘗祭を終えて、初めて食べることができた新米の美味しさは、より格別に感じられたのではないでしょうか。
1年の勤労を労い、秋の恵みに感謝して、美味しいごはんを頂きましょう🎵
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