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毒にも薬にもならない話をしよう

ついつい意図がある話ばかりしてしまう。

何のためにその話をするのか。
どうなると思ってその話をしたのか。
相手の返答を先まわりして予想して、

「こう言うだろうな」
「こう思うだろうな」

と考えてから話を切り出す。予想通りなこともあれば、予想外な答えもある。それはそれで面白いのだけど、相手からすればコントロールされている気がして警戒するのでは?と思ったりする。

それは何のために聞いてるの?と思う質問がたまにあって、そんな時は「こう言ったらどんな反応するかな」と、また先まわりして答える。なんか変な感じになったのなら「なんてねー」と言っておけばいい。そうやっていつまでも本音を隠しているのなら、相手も本音で話してはくれないだろう。

生産性のない会話は好きではないから、どうでもいい話はしなくなった。なんの感情も生まれない、なんの空気もつくられない、なんの意味もない世間ばなしなんて、まったくもって時間のムダ。

未来の話をしたい。未来につながる意味のある話をしたい。心が救われるような優しい言葉をかけたい。勇気が持てるような励まし合う会話がしたい。イイ話、笑える話、泣ける話、シリアスな話。
その会話には意味があって、意義のある時間にしたい。

そう思っていた。


「この間ゆで太郎に行ったらさ、同じ店内にもつ次郎ができててさ、もつ煮定食かもつ炒め定食しかないんだけど、でもご飯が大盛無料だったよ。もつ次郎はゆで太郎の弟分なんだって」

「そうなんだ、松屋と松のやみたいな感じ?太郎と次郎で兄弟ってなんかアレだよね。そうだ、アディダスとプーマも兄弟なんだよ。知ってた?創業者が本当の兄弟なんだって」

「それは有名な話でしょ。そういえばアディダスじゃなくてアジデスってTシャツがあってさ、アジが3匹プリントされててajidesって書いてんの笑」

「あるある笑。ラコステじゃなくてオコシテもあるよね。ワニがひっくり返っててOCOSITEだって笑」

……とんでもなくどうでもいい話である。


なんの意図も目的もない、ただの連想ゲームのような会話。伊坂幸太郎なら終盤に伏線回収するだろうが、なんの伏線も作戦もないただのどうでもいい話だ。


だけど、想像してほしい

もしこれが、
憧れのあの人との会話だったとしたら


こんなにも尊い時間があるだろうか。


人とのコミュニケーションにムダなことなどないのかもしれない。いつどのタイミングで伏線回収されるかわからないのだから。


ある日、ゆで太郎でランチを食べて店を出たら、OCOSITEのTシャツを着た人が歩いているかもしれない。

それを見たふたりには、きっと大きな笑いが生まれるだろう。


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