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バラージの青い石【アントラー】

1966年8月28日に初放映されたウルトラマン第7話「バラージの青い石」。7話目にして科学特捜隊は他国の事件の捜査に向かう。中近東に巨大な隕石が落下し、世界各地の科学特捜隊支部が調査に赴いたが、誰も帰還しなかった。科学特捜隊パリ本部は日本支部に調査を依頼、フジ隊員以外は総出でビートル機に搭乗して出発。ビートル機は魔の地点間近で光の壁(強力な磁力光線)遭遇し、操縦不能に陥りそうになるが、機転を利かせて何とか難を逃れる。磁力光線で機体トラブルに見舞われ、砂漠に不時着して機体の修理をしていたところ、磁気嵐を起こしていた怪獣アントラーが登場。科学特捜隊の面々は這々の体でアントラーから逃れ、偶然にも伝説の街バラージを見つけることとなった。

この第7話はストーリーも映像も30分番組(本編は23′38″)とは思えないスケールの大きさで、何度観てもその充実度に舌を巻く。当時はCGなどモチロン存在せず、バラージの街も実際のセットだ。音楽の使い方も素晴らしい。作品への情熱の入れ方が常軌を逸している。ウルトラマンは本当に凄い番組だ。

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話は大きく逸れるが、1990年代にサッカーのJリーグが発足し、最初の10チームの中に鹿島アントラーズの名前を見た時に、僕はやはりウルトラマンのアントラーを思い出していた。アントラー(Antler)は英語で鹿の角のこと。チームのマークデザインを見て怪獣のアントラーかと空目した人は多くはないと思うけれど、僕がその少数派だったことは記しておく。怪獣の方は蟻のアント(Ant)から命名されたと思っていたが、アントラー自体はアリジゴクを模しているのでその英語がアントライオン(Antlion)でこちらかと後にポンと膝を打ったのも思い出した。ちなみにアリジゴクはウスバカゲロウの幼虫で、英語だと親子分け隔てなくアントライオンと呼ばれる。名前にバリエーションがないのは無関心な証拠だ。

科学特捜隊の面々が到着したバラージの街は、寂れてはいるが過去の栄華をまだ微かに漂わせている。城壁の規模や王宮の豪華さなどからそれが伺える。チャータムと呼ばれる女王が現れて、科学特捜隊の面々と日本語で喋り出すところは、科学特捜隊と同行していたジム隊員の「あー、エスパー」の一言で納得。ご都合主義と云うなかれ。この街の守護神、ノアの神がウルトラマンに酷似した石像であるところで、ウルトラマンは遙か昔(5000年前とされる)から地球を守る存在であったことが示唆される。何と云う世界観。ここまで用意してくれるなら据え膳食わぬは男の恥(用法違いますね)。僕はウルトラマンに一生付いて行く。

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科学特捜隊員が王宮に招き入れられる直前のシーン、チャータムが科学特捜隊員たちに「どうぞ」と発したのと同時にヤギが鳴く。メェーと鳴く。見事なタイミングでヤギ。その後で4度鳴く。合計で5度ヤギが鳴く。これが本当に素晴らしいんだ。番組の限られた時間の中、これだけの情報量が詰め込まれた中で、ヤギが5度鳴く余裕がある。ここが本当に好きなんだ。最高なんだ。

帰ってきたウルトラマン第32話「落日の決闘」にもヤギが出て来る。2度のヤギ登場シーンがある。このお話になくてはならないのがヤギなんだ。重要な役割。ヤギあっての第32話なんだ。僕はヤギが好きだ。ヤギ乳のチーズも大好きだ。これからもヤギを労ってゆくよ。お肉は何度か食べちゃったことがある、ごめんね。なるべくもう食べないようにするよ。

ハヤタが変身するウルトラマンがこの街を5000年前に守った個体ではないのかが謎だ。チャータムは人の頭の中が読めると云う。最初にコンタクトした時点でチャータムはハヤタの正体が判っていたのではないのか。それとも変身前はハヤタだけの意識なのか。いや、このずっと後にメフィラス星人とやり合うハヤタはウルトラマンとして認識されている。その辺りが謎なところだ。

アントラーは強敵で、ウルトラマンの決め技であるスペシウム光線も全く歯が立たない。最終的にアントラーと戦闘中のウルトラマンが、テレパシーでチャータムにノアの神の像が持っている青い石をアントラーに投げろと伝える。ムラマツ隊長が青い石をアントラーに命中させ、アントラーは絶命する。

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ウルトラマンは青い石の使い方を知っていたのだ。これはウルトラマンなら誰もが知っている常識なのか、5000年前の経験則に基づくものなのか。ラストシーンでハヤタが滅び行く街バラージを振り返り、暫し何かを思う。自分の先輩のノアの神のことなのか、チャータムとの語られなかった心と心のやり取りのことなのか。僕の心には深い満足感と永遠の謎が長い余韻として残っている。伝説の街バラージとチャータムとヤギに想いを馳せながら、明日はアントラーTシャツを着て出かけよう。

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