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焼きそばの果てしなき旅【その65】

このところ訃報が続いてちょっと参っている。心が沈むような、でもじっとしていられなくてむずむずするような、今までに体験したことのない喪失感に苛まれている。こんな時は何か料理を作って気持ちを鎮めるのが良かろうと考えた。ふと角屋のやきそばが食べたくなり、有楽町の交通会館内にある北海道どさんこプラザ(アンテナショップ)に行き、入手してきた。

角屋のやきそば

僕の焼きそばの世界を大きく広げてくれた角屋のやきそば。これに出会わなかったら僕の焼きそばの旅はもっと小規模だったかも知れない。そんな想いも込めて食べてみようと思う。さて、この角屋のやきそばの最大のポイントは<フライパンでいためてお召し上がりください>と書いてあるにもかかわらず、地元の方(北海道美唄市)は焼きも炒めもせずにパッケージを開けてそのまま食らうと云うポイント。ポイントと云うか慣例。その昔、手を洗わなくとも袋を開けてそのまま食べられると云うのがウケてポピュラーになったとのこと。僕も何度かやってみた。ウマイのである。そのままでイケるのである。ただ、今回はちゃんと炒めてみたいと思う。僕は実は炒めた方が好きだ。それはきっと角屋のやきそばを最初に食べた時に何も背景を知らずにちゃんと炒めて食べたからだ。その時にとてもウマイと思ったのでハマったのだ。ファーストコンタクトは非常に重要である。鴨やアヒルのひよこが最初に見た物を親と認識するのに近いものがあると思う。それは違うか。

フライパンで炒める

フライパンにごく少量の油を入れ、角屋のやきそばをゆっくりとほぐしながら炒める。この作業が僕にはとても落ち着くものだった。無心になれた。そこからまた湧き上がる気持ちを重ねれば良い。

炒めた角屋のやきそば

出来上がり。赤い紅生姜が細切りでなく薄切りであるところも特徴。一口で食べてしまっても良いし、ちょっとずつ囓りながら食べても良い。お気に召すまま。Any Way You Want It、ジャーニーの曲が脳内再生されております。

角屋のやきそばを食らう

ウマウマウー。ぽそっとした食感の素朴な麺。ソース味付け済み。ただ炒めるだけ。何も足さない。ちょっと薄味であるところがチョウドイイ。そして立ち上るソースの香りの中にニッキ(シナモン?)を感じつつ、するすると戴く。このシンプルな味わいの奥は深い。お腹が満たされれば心はさらに落ち着く。角屋のやきそばブラボー

角屋のやきそばを食らう

ウマウマウー。何だかこれで全く以て充分なのだけれど、余計なことをしてみてくなるのが僕の性分だ。自分の性分は騙せない。絶対に。

角屋のやきそば

角屋のやきそば、ふたたび。やはり炒める。そしてアレンジしてみようと思う。考慮すべきは簡単であること。包丁やハサミなどは使わないこと。余計な洗い物が出ないようにすること。創意工夫とずぼらさのハイブリッド。どちらかと云えばずぼらの割合が多い。

フライパンで炒める

袋から出すとこうしてぼろんと一塊になっている。これを地道に熱して少しずつ少しずつほぐすところに妙味がある。慌ててはいけない。必ずちゃんとほぐれるから丁寧に、ゆっくりと熱する。

フライパンで炒める

ほらね。ちゃんとほぐれる。ほぐしている間は無心と云うか、祈っていると云うか、そんな感覚にも近い。その時、突然閃いた。事前に考えていたアレンジとは違う閃きだ。また閃きか。良いんだよ閃くんだよ。閃いたならやってみるしかあるまい。

玉子を落とす

出来上がりに生玉子を落とすのではなく、フライパンの真ん中に落として少し白身に火を通したい。それが閃きだった。ここからお皿に移す時が大変かとは思うが、閃いたままにやってみる。

玉子入り角屋のやきそば

玉子入り角屋のやきそば、完成。何とか黄身を崩さずにお皿に盛ることが出来た。ちょっとでもウマくやってやろうなどと考えると失敗しそうだ。焦らずゆっくり、そうしたら何とかウマく出来た。

玉子入り角屋のやきそば

何か忘れてはいないだろうか。あ、忘れている。忘れてはいかん。

コショーをかける

コショーをかける。S&Bテーブルコショー一択。これがあるとないとでは大違い。唯一使う調味料。これだけでよろしい。さあ食べよう。

玉子入り角屋のやきそばを食らう

ウマウマウー。とても贅沢な気持ちになった。玉子のスムースさは角屋のやきそばの美味しさの邪魔をしない。コショーもナイスサポート。とてもとても美味しいと思う。一心不乱に食べてしまう。あ、そうだ、思い出した。

紅生姜を載せる

紅生姜を載せる。忘れちゃいかんと思っていてもついつい忘れる。人生ってそんなものか。今悲しくても、いつかピークアウトして忘れている時もあるだろう。でもそれは解決でなくて、悲しいことも辛いことも時々は思い出して、その時の気持ちを忘れないでいたい。簡単なことではないけどね。そんな風にちょっと思いましたとさ。忘れてしまわないといけないこともあるか。それもあるな。あるよねー。

玉子入り角屋のやきそばを食らう

ウマウマウー。もうちょっと何か工夫出来るかな。時間があったらまた考えてみよう。角屋のやきそばを食べてちょっと元気が出た。そう、何だか焼きそばって元気が出る食べ物だと思いませんか。焼きそばを通じて皆さんに何か元気が伝わってくれたらなと思っています。焼きそばの果てしなき旅はまだまだ続きます。


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