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焼きそばの果てしなき旅【その83・茨城県筑西市の中山屋】

先日ふと思い立って茨城県筑西市にある焼きそば店『中山屋』に行って参りました。ブログにも記事を書いたが、noteにもまとめてみようと思う。最初に伺ったのは2020年9月、しもだて美術館で開催されていた「安斎肇えとえの絵本展〜ハロルドコミックス危機一髪〜」に伺った時に、安斎さん直々に「焼きそばのお店があるよ」と教えてもらったのがきっかけであった。安斎さんはその個展の準備のためかなりの長期間しもだて美術館に来ていたために、この近隣の飲食店に大変に詳しくなっておられたのだ。ちょっとびっくりする位に古びたお店もあって、なかなか面白い経験をさせてもらったのをよく覚えている。そしてこの『中山屋』でこちらの焼きそばとの衝撃的な出逢いがあって、そこから僕は焼きそばの果てしなき旅へ本格的に出向くことになった。それから3年半程、再訪がなかなか叶わなかったが、ようやく果たすことが出来た。ちょっとホッとしたような気持ちでいる。

JR水戸線下館駅にて

東京都内、恵比寿駅でJR湘南新宿ライン宇都宮線に乗って、1時間半ほどで小山駅(栃木県小山市)に到着。10分程待ってJR水戸線に乗り換えて20分で下館駅(茨城県筑西市)に到着する。なかなかの旅である。東海道新幹線であれば東京から2時間ちょいあれば京都に着くご時世である。旅はもう距離よりも時間がキーポイントになっていると思う。

中山屋外観

JR下館駅から歩いて10分程で『中山屋』に到着。赤い暖簾に白いやきそばの文字が否応なく目を惹く。3年半ぶりにここにやって来た。感慨深いものがある。

中山屋外観

正面から見ると判らないが、手前の角が鋭角であることが何かとても心をくすぐる。そして建物をよく見ると道路と正対せずに角度を付けて建てられている。これには何か秘密があるのだろうか。今回はそのこと訊きそびれたので次回解明したいと思う。きっと大した理由はないのだろうとは思うがどうしても気になる。

焼きそば400円

早速ではあるが、焼きそば400円の登場である。3年半ぶりの再会。更に感慨深い。ブログにも書いたが、改めて説明しよう。メニューは焼きそばと、ソフトドリンクが数種類あるのみ。焼きそばはモチロン1種類のみ。具はキャベツのみ。メニューにあるのは値段。一番少ない300円から100円毎に量が増えるシステムである。400円が軽く一人前。3年前と同じオーダーにした。

焼きそば400円

500円でしっかり一人前、600円で中盛りくらいになるであろうか。1000円までしかメニュー記載はないが、2000円でも5000円でも載せられるお皿さえあれば可能であろう。でもいつか1000円と云うのを見てみたいものだと思う。

焼きそば400円を食らう

ウマウマウー焼きそば400円。これを食べたかった。3年半ずっと食べたかったのである。麺が普通のように見えて特殊である。乾麺を自家二度蒸しにして使用しておられるとのこと。なのでこの麺の茶色は麺そのものの色である。かん水を使った麺を蒸したことで生ずる「かんすい焼け」と云うものらしい。モチロンソースの色合いも加わっているであろうが、それにしても見事な茶色である。多分保存目的で蒸していた(蒸すことで麺の水分が抜ける)のが、副産物的に独特な食感を生んだということであろう。「ゴム焼きそば」などと云う有り難くないであろう呼び名もあるそうだ。固いのとはまた違う、強いコシを感じる麺である。この麺に初めて出会った時の衝撃は忘れない。どこにでもありそうで、どこにもない独自路線。3年半ぶりに食べて改めてその独自性に感じ入った。フィールズライクファーストタイム。あなたに会えてよかった。追憶。パリのめぐり逢い。下館だよ。

焼きそば400円を食らう

ウマウマウー。味付けはソースのみ。そう思われる。ヒジョーにシンプルである。でもソースと云うのは複雑な味の調味料であるから、調理がシンプルなだけであって、味が単調と云うわけではない。充分に奥行きがあり、広がりがあり、まとまりがある。それにこの麺自体の味わいも加わるのであるから、味わいには大きな世界がある。余計なことを考えずともウマイのであるが、どうしても考えてしまう。とにかくウマイ。チョーウマイ。サイコーでサイキョー。ブログの方で使う表現であるが、出さざるを得ないウマさなのである。スキスキスー。ダイスキデス。

焼きそば400円を食らう

ウマウマウー。卓上にある七味唐辛子をかけて食べるとまた格別である。焼きそばの世界観を変えずに、より一層重奏的な味わいとなる。3年半前に焼きそばを焼いてくださったお母様は数年前に他界され、現在は息子さんがお店を継いでこの焼きそばの味を守り続けておられる。これからもずっと守り続けて戴きたい焼きそばの味である。美味しかったです。御馳走様でした。

焼きそば蒸し麺セット

そして持ち帰りの焼きそば蒸し麺セットもモチロンゲットした。蒸し麺が約400g、ソースは約80ml。お値段は500円。前回訪問時もやはり持ち帰ったが、まだ焼きそば初心者の頃で(今が上級者というのではなく)熱に浮かされたように自宅で作って食べたと思う。この3年半の間に様々な土地に行き、様々なお店で焼きそばを食らい、焼きそば経験値をアップさせてきた。今のステイタスでこのセットを作ってみたら新しい世界を窺い知ることが出来るであろうか。大袈裟な云い回しだな。謙虚に作ります。

自宅で中山屋焼きそば

作ってみた。自宅で中山屋焼きそばである。具はお店と同じでキャベツのみにした。キャベツを先に油で炒め、そこに麺を入れてほぐしながら炒める。麺がほぐれたところでソース投入。お店での味を思い出しつつ、程好く味付けした。この麺の量にソース全量ではかなり多い気がする。約半分くらいで良かろうかと思う。麺をほぐすときに水を入れるとの指示(説明書付)だったが極力ほぐし水は少なくした。麺の特徴を存分に感じたかったからである。

自宅で中山屋焼きそば

ちょっとキャベツが少なかったが、カラーリング、色艶共になかなかの再現度であると自負する。これが3年半の焼きそばの旅の成果であろうか。イタダキマス。

自宅で中山屋焼きそばを食らう

ウマウマウー。3年半前に教えてもらった通りに、炒め油に少し胡麻油を忍ばせてある。工夫と云えばそれだけ。ソースの量の具合もこの少なめ路線でバッチリだったと思う。これはウマイ。チョーウマイ。そうとしか云いようがない。再現成功。自画自賛。

自宅で中山屋焼きそばを食らう

ウマウマウー。この焼きそばのこの味に自分が関東の人間であることを思った。甘味や旨味が少なく、素っ気ない印象もあるであろうこの焼きそばの味わいこそが、自分の根底にある何かと見事に共鳴した気がしたのだ。シンプルと云うよりもソリッド。イメージとしての強固さ。じゃあ関西がソリッドでないのかと申せば、そこまで考えが深く至っていない。同じく具がキャベツだけの神戸新長田『いりちゃん』のそば焼(ブログ記事その1その2)のソフトさと比べると、何となくソリッドと云う語感がフィットするような気がしたのだ。どうにもまとまらないのでこの辺りまでにしておく。

自宅で中山屋焼きそばを食らう

ウマウマウー。七味唐辛子もかけてみた。スバラシイデス。いやーウマイ。僕の焼きそばの旅のキーポイントが突然にやって来た感じがする。初心に返ると云うのはなかなか出来ないことだけど、これがそうなのかと思った。シンプルに、ソリッドに、僕はそうして来たじゃないか。これからもそうしよう。ここ最近はゴージャスでデラックスなあんかけ焼きそばの世界を巡っていたけれど、これでちょっと軌道修正出来た。よしよし。焼きそばの果てしなき旅はまだまだ続きます。

中山屋焼そばソース

ソースも買ってみた。これから色々と活用しようと思っているが、製造者表示を見たら、栃木県佐野市の会社だった。佐野か。佐野。ここのところ僕が気になっていた佐野だ。偶然の一致なのか。何かのお導きなのか。まだ判らないが、そのうち佐野に行ってみないといけないと思う。これも焼きそばの旅なのか。色々なことが繋がって繋がって、どう云う結末を迎えるのだろう。楽しみなような、不安なような、不思議な気持ちがしている。

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