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小野瀬雅生の2023年ベストミュージック10選+α【前編】

2023年も色々な音楽に出逢った。ここ数年にはなかったくらい深く音楽とコンタクトした。音楽と一緒に旅をして彷徨って、思いもよらなかった場所に出た。音楽と夜通し語らって、朝を何度も迎えた。新しいものの中には懐かしい要素がたっぷり入っていて、懐かしいものには新しい発見が常にある。あまりのんびりしていると2024年もすぐ春とかになってしまいそうなので、急いで2023年に僕が深くコンタクトした音楽をご紹介する。2023年に発表されたものも、もっと昔のものも、いつ発表されたか判らないものもある。相変わらずの雑多で変てこなセレクションであるがよろしくどうぞ。

Khem / Chon Chering Khnhom Hery Bong

僕の2023年ベストオブベストミュージックはこれ。カンボジアのアーティスト、Khemの曲『Chon Chering Khnhom Hery Bong』である。いつ発表されたかどころかアーティストや曲の詳細も全然不明。これを知ったきっかけは、CKBの剣さんがカンボジアに旅行に行ったところから。カンボジアか、いいないいなーカンボジアカンボジアと気にしていたら、カンボジアの日本在住のカンボジアのバンド、クマイルズ(Les Khmaers)がTwiiter(現在X)にて茨城県結城市にて行われたカンボジア正月のお祭り動画をアップしてあったのを偶然に見つけた。凄い盛り上がりの日本在住カンボジアの人々の動画。ヒジョーに楽しそうに皆さん踊っていらっしゃる。絶叫に近いヴォーカルとグルーヴィーなエレキギターとワンノートトランペットが延々と鳴り響くオリエンタルでエキゾチックなダンスミュージック。何だこの曲。ヒジョーにカッコイイ。そしてこの曲のオリジナルのYouTube動画にリンクが貼ってあったので、それを見たらもう一発で魂を掴まれた。もう百聞は一見に如かず。聴いてちょうだい。

バックトラック(演奏ね)はシンプルなテクノっぽいサウンドなれど得体の知れない高揚感がある。スネアの音が、よくあるヤツなのだけど、この曲のこのテンポとヴォーカルに最大限にマッチしている。変てこなエレクトリックパーカッションも効いている。そしてベースだ。このベースこそがサイコーでサイキョーだ。妙ちくりんなノートにも行くのだけどグルーヴが神レベルである。最高級。大好物。そしてKhemの歌。何を歌っているのか全く見当も付かないけれど、ハスキーなトーンが魂に直接響いてくる。やられた。カッコイイ。チョーカッコイイ。高揚感と脱力感が同時に押し寄せてくる。よく聴いてみるとコード進行ナシ。衝撃のワンコード。Abm一発。スゴーイ。カンボジアに行きたくなった。これ以上書くともうキリがないので、とにかくこれが断トツのナンバーワンだったことを強調しておきます。

藤井風 / 花

2023年の最後の最後にドッパマッタ曲。これもやられた。強烈にやられた。一ヶ月で200回以上聴いたのではないか。今でもまだ聴いている。曲はモチロン良い。親しみやすいメロディーとコンパクトな歌詞。曲に見事にマッチしたヴォーカル。そしてそれらを更に極上のものにしてあるのがアレンジだと思う。基本的にピアノとベースとドラム。そこにシンセサイザーとギターがちょっとずつ。シンプルではあるけれど効果は最大限。ピアノとベースとドラムと云うのが、無限に色々なことが出来る取り合わせではあるけれど、この曲の場合はクイーンやエルトン・ジョンの音楽の華やかさに通じるトリオトラックに思えて仕方がない。ポップスの王道。それをズドンと潔く使った2023年。シンプルイズザベストと簡単に云うけれど、大概のシンプルなもの(楽器構成的にね)は退屈で味が足りない。これくらい華やかで丁度良いと思う。でももっと何か別のものが僕にいっぱい刺さった。何が刺さったのか少しずつ紐解いてみた。脱線するかも知れないがご容赦を。「花」の0:47辺り、1番のサビに行く直前のドラムフィル、タコタ(タがスネアでコがベードラ)に無上の高揚感を得たのだが、このシンプルなドラムフィルがどこにあったか、この同じ高揚感のあるタコタを数週間探しに探した。クイーンでもツェッペリンでもない。バッド・カンパニーの「Can't Get Enough」のイントロはタコタだけどリズムがシャッフルなのでタッコタと跳ねている。そうじゃない。まだ探した。あった。ボストンだ。BostonのファーストアルバムのA面3曲目、2曲メドレーの「Foreplay / Long Time」のLong Timeに移り変わる瞬間、2:29のところのタコタ!である。これだよこれ。同じ高揚感でしょ。そうでもないですか。更に云えば「花」の2:45辺りの間奏で聴かれる4小節のコーラスの積み方(2オクターブくらいの厚みがある)が、僕にはAphex Twin「Windowlicker」を想起させたのだ。もうこれ以上書くと本当にキリがないのでやめます。好きになったら骨までしゃぶってお皿も嘗める。僕はこう云う人間です。枯れて行く。枯れるよね。でもまだ枯れない。そのつもり。

Depeche Mode / Memento Mori

1980年結成のベテラン、ディペッシュ・モード(Depeche Mode)の15作目のアルバム『Memento Mori』にもハマった。僕はデビューアルバム『Speak and Spell』をレコードで買って持っている(1981年)。なのでデビュー当時以来のお付き合いである。2022年にメンバーのフレッチが亡くなって活動休止かと思いきやニューアルバムが出た2023年。これがたまらなく素晴らしい作品なのだ。1曲ずつ詳細にレビューしたいがあまりにも長くなるので掻い摘まんで。3曲目がリードトラックの「Ghosts Again」。シンプルなエレクトリックビートに、D - E - C#m - F#m - F#m/E のこれまたシンプルなコード進行の曲。しかし何だろうこの味の深み。香りと苦み。80年代を想起させるシンセサイザーの音色がこれでもかと幽霊のように現れては消える。でも本当に幽霊っぽいのはマーティン・ゴアのギターか。確固たる堂々とした幽霊。何だこのギターのトーン。憑依されそうだ。8分音符の坦々としたシンセベースが曲が進むにつれて高揚感を増していく。ヤバイ。この曲だけでまだまだ語れそうだがこの辺で。4曲目「Don't Say You Love Me」の印象的な4つのコード(正確には5つ、Dm - C/D - G7add9/D - C/Bb - Bb)がモジュレーションが深くかかったギターで鳴らされるととても懐かしく感じる。5曲目「My Favorite Stranger」もブンブンのシンセベースがたまらないところにヒステリックなギタートーンが重なってとてもヤバイ。8曲目「Before We Drown」のヴォーカルのこの世の涯にまで響こうかと云う圧倒的空間処理。10曲目「Always You」のサビの4つめのコードのルートがAbに下がる美しさ。そして11曲目「Never Let Me Go」の完璧さ。リズム構成が最高。コードがD - Bb - Gm - Ebになるのに対照してのギターシングルノートがA - Bb - E - Gとなっているのが、まあありがちと云えばあるのかも知れないが絶妙に薄暗くてたまらない。コードは1番目以外は全部シンコペで食っているのも絶妙。ラスト12曲目「Speak To Me」もサビの最後のB - Db - Ebのコード進行なんてよくあるのだけれど、これ程までに美しく2023年に響くとは思ってもみなかった。取り上げなかった曲も全て佳曲。捨て曲ナシ。1曲目に一番陰鬱なナンバー「My Cosmos Is Mine」を持ってくるところもたまらない。ディペッシュ・モード全開バリバリ。ヴォーカルのデイブ・ガーンは1962年生まれ、僕と同い年。60過ぎてもここまでやれる。僕もがんばろう。

Rolling Stones / Hackney Diamonds

ディペッシュ・モードどころかローリング・ストーンズの新譜まで出た。2023年だぜ。どう云うことよ。そしてこの『Hackney Diamonds』はこれまでのキャリアの中でも最高の部類に入る凄い出来栄えのアルバムじゃないか。サウンドはクリーンでパワフル。プロデューサーやレコーディングエンジニアなど様々な人達の仕事の集積とは云え、そのコアとなるストーンズ自体が枯れていない。枯れるどころかミック・ジャガーの歌声なんて若返ったのかと思うくらいにイノセントでクリアで滋養に溢れている。色々なゲスト参加の話題もあるけれど、それらがなくとも音楽として、ロックとして、特級であると思う。ギターの音も素晴らしく良いなー。1曲目「Angry」なんていきなりストーンズだと判る音。スゲー。3曲目「Depending On You」なんてもう至福のギターサウンド。リズムの緩さも全てグルーヴに昇華しているじゃないか。5曲目「Whole Wide World」なんて名曲じゃないか。ミックもキースも80歳。まだまだ凄い。100歳でニューアルバムとか出来るんじゃないかストーンズ。そしてアルバムのLive Editionにはライブバージョンの「Angry」「Whole Wide World」が収録されていてこれがまたカッコイイったらありゃしない。本気でヤバイわこの人達。ロングリブロックンロール。

Blue Öyster Cult / 50th Anniversary Live - First Night

続いてはブルー・オイスター・カルトだよ。ニューアルバムだよ。それもライブアルバム。今何年よ。じじいばっかりがんばっとるじゃないか。そんな僕もすっかり立派なじじいの仲間入りだけどね。ついこの間60歳になったと思ったら今年はもう62歳になるのか。いいよいいよ。じじいがんばろうよじじい。そんなわけでタイトル通りBlue Öyster Cultデビュー50周年記念ライブアルバム、『50th Anniversary Live - First Night』であるぞよ。50周年おめでとうございます。アルバムジャケットがファーストアルバムに酷似していると思ったら、こちらそのファーストアルバムを丸々ライブでやったのが丸々収録されている次第。さすがにメンバーもヴィンテージになっているからどうかと思いきや、新メンバーも加えて(オリジナルメンバーは2名のみ)なかなか素晴らしい再現度を披露している。ニューヨークのアンダーグラウンドな雰囲気にオカルト風味をふんだんに使ったファーストアルバムの名曲の数々が、今もこうして生存してパワフルにプレイされるのを聴ける歓びは何事にも代え難い。ヴォーカルとギターのエリック・ブルームも今年80歳だよ。同じくヴォーカルとギターのドナルド・ローザー(バック・ダーマ)も77歳だ。相変わらず個性的で素晴らしいギターを弾いているのがスゴイ。ファーストアルバムの曲意外にもちゃんとヒット曲もやってます。「The Reaper」にはちゃんとカウベルも入っています。エンディングでカウベルのタイミングがズレて遅いのだけが気になります。「Godzilla」もやっています。臨時ニュースを申し上げます臨時ニュースを申し上げますゴジラが銀座方面に向かっています大至急避難してください大至急避難してください、と日本語ナレーションもちゃんと入っています。元気を戴きました。サイコーでサイキョーです。

お正月に逗子の臺さん宅で焼いた富士宮焼きそば

長くなったのでここまでで【前編】とします。休憩。続きはまた後ほど。文章が長い上に内容も小野瀬雅生ダダ漏れでわけわかんなくてすみません。

小野瀬雅生の2023年ベストミュージック10選+α【後編】はこちら


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