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おでんとヨコハマのこと

以前アニメ「おでんくん」に声優として初参加させて戴きましたが、僕の役どころは怪盗カニコウモリでおでんの具でなかったのが今でもちょっと気にかかっています。キャラの口がいつも泡を吹いているのでリップシンクとかは楽でありがたかったですが。すみません余談から入りました。

僕は子供の頃からおでんが好きで、強度の偏食児童だった僕が心を許せる数少ないメニューの一つでありました。学校給食でもおでんは出たけれど、家で食べるおでんとの内容の乖離に心は千々に乱れ一天俄にかき曇り雷神不動北山桜。何だかわけがわからなくなったけれど、僕が子供の頃から慣れ親しんだおでんの内容を紹介したい。

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先日取材で訪れた横浜市西区の藤棚商店街の今井かまぼこ店。横浜で生まれ育った僕が子供の頃から馴染んでいるおでんの具がこちらで多数揃う。揃うのなら揃えておでんを作ろうと云うことになった。

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おでんには色々とこだわりがあるけれど、まずはさつま揚系の練り物が必須だと思う。この練り物がおでんの汁に味の深みを与えてくれる。左上から時計回りにサンマー麺風よこはま揚げ、今井の野菜揚げ、今井のもやし揚げの3種類をゲットした。全て今井かまぼこ店の自家製。もやし揚げと云うのは歴史があるおでんの具とのことだが、実は初めて遭遇。ウチがその昔におでんの具を買っていたお店にはなかったなぁ。サンマー麺風と云うのはそのもやし揚げの進化形。サンマー麺がそもそもどう云う麺なのか解説すると長くなるので各自検索して調べてください。一応ヨコハマ名物です。

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さつま揚げ系練り物はカワイイパッケージに入れてくれる。このカワイイ感じが僕の心の琴線に触れまくる。ああカワイイ。

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ここからは自分ではおでんの必需品と思っていたのが全国区では全くなくてローカルネタだと知ってビックリした三種の神器をご紹介する。まずは今では全国にその名が知れ渡ったであろう(そうでもないのか)ちくわぶ。お店のご主人にお話を聞いたところ、以前ちくわぶを仕入れていた製造所がやめてしまったので、今はこちらで作っておられるとのこと。自家製なのか。そうなのか。自家製ちくわぶ。スゴイじゃないか。何だか妙に興奮してテンションが高くなってしまった。

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ちくわぶは真空パックに詰められていたり、水を張ったバットに並べられていたり、そう云う形で売られている場合が多いが、こちらのはドライタイプ。後で判ったことだが、このドライタイプは汁に入れて煮るとすぐに汁を吸ってぷりっとした状態になる。あまり煮込まなくても短時間でイイ具合にぐだぐだになってくれる。もっと硬い状態、博多ラーメンで云うところのハリガネとか粉落としとかの段階で楽しみたいなら現代は時間との戦いですクイズタイムショック(ああ古い)短期決戦を覚悟したい。今回はぐだぐだ方面を愛でたいと思うので、タイムショックは別の機会に。

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ああこの切り口もたまらなく好きだ。煮る前から好きなんだよ。ちょっと待ってておくれ。すぐに煮るよ。ちなみにちくわぶは東京を中心とした地域のおでんの具。端的に申せば東京ローカル。自分の知る限りでは神奈川県では横浜市内などの東部でしか用いられない。小田原のおでんにはちくわぶは入っていないと記憶している。静岡では皆無。今では変わったかも知れないのでいつか検証に行く。

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続いてはすじ。牛すじではなくすじ。練り物のすじ。これは横浜高島屋食料品コーナーでゲット。東京都中央区日本橋室町の有限会社神茂(かんも)製。すじにも色々あるけれど、これは少し高級品。使われている魚はアオザメとヨシキリザメ。サメのすり身を整形してある。これは東京と千葉のローカルおでんの具。横浜の我が家のおでんにも入っていたので神奈川も入れてやってください。

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すぐに煮ますからね。もうちょっとお待ちを。

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本日のメインイベント、ではないけれど、完全横浜ローカルのおでんの具を紹介する。かまぼここんにゃく。横浜市南区の有限会社小林蒟蒻製造所製。ご存じでない方も多数おられると思う。横浜市民でも知らない人はいらっしゃるだろう。名称もこの商品はかまぼここんにゃくとなっているが、同じ製法で同じ形状でも、横浜こんにゃく、花こんにゃく、朝日こんにゃくと名前が色々とある。

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普通のこんにゃくと違うのは澱粉を使っている点で、味わいも食感もこんにゃくとはかなり異なる。手間がかかるので横浜市内でも製造している会社は非常に少なくなっていると聞いた。絶滅危惧種。藤棚の今井かまぼこ店で入手可能。

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ああ何と懐かしい。さあ煮よう。大根も予め煮ておいて、結び昆布も用意して、結局色々入れることになるのだけれど、具を色々入れれば入れるほどおでんは豊かになるので、その豊かさをありがたく戴こう。

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出来上がり。どうぞ召し上がれ。

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三種の神器を中心に盛り合わせ。サイコーじゃないですか。イタダキマス。

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ウマウマウー。昔僕が食べ馴染んでいたのはもっと食感がもそもそとして味も沁みにくいヤツだったと記憶している。このかまぼここんにゃくはかなりこんにゃくに近いポジションにいる。普通にウマイじゃないか。興味のある方は是非あなたの家のおでんに入れてみてください。

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ウマウマウー。ちょっと値が張っただけあってこのすじはヒジョーにウマイ。すり身が口の中でふわっと溶けていくような独特の食感。ちゃんと昔のすじの味がする。これも是非試してみて戴きたい。ウマイんですよ。

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ちくわぶです。たまらんヤツです。ちくわぶが楽しみでおでんを食べていると云っても過言ではありません。小学校の給食のおでんちくわぶが入っていなくて心底ガッカリしたのを今でも覚えています。ちくわぶが入っていないなんておでんじゃないじゃないか。心の中で厳重抗議した小学校1年生の僕でありました。

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ウマウマウー。こう来なくっちゃ。ちくわぶの正体は小麦粉。うどんと同類。富士吉田うどんを代表とする硬いうどん信奉者の僕にとって、ちくわぶをぐだぐだに煮てしまうのは冒涜行為なのではないかと悩んだ時期もあった。モチロン煮込みの浅いアルデンテちくわぶも好きではあるけれど、鍋底で忘れ去られたように長時間煮込まれたちくわぶのフォルムが崩れているようでギリギリ崩れていないのを賞賛するものであるし、汁が沁み込んだちくわぶのミルフィーユ構造の有り難さを実感し甘受する背徳感を慈しむものである。何か伝わりますか。伝わりませんか。そうですか。

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ウマウマウー。僕がいつまでもずっと愛してあげる。アイラブちくわぶちくわぶの本にも載った僕なのでこの愛は筋金入り。いつかそのうち【偏愛】のカテゴリーでもちくわぶについて語るつもり。それにしてもこの断面の美しさ。たまりませんわ。

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余談ではないけれど、茹で玉子。昔は僕の偏食の最大級の敵だった。おでん茹で玉子なんて入っていようものなら、おでん全体を拒否するくらいに徹底していた。それがどうした。ここ数年で国交樹立講和条約締結の運びとなり友好国の仲間入りを果たした。昨日の敵は今日の友ではないが、僕の人生で起きた摩訶不思議な出来事ベスト10にこの茹で玉子受け入れが上位ランキングされている。1位は何だ。やはり物凄いヘビースモーカーだった僕が煙草をやめてもう10数年経つと云うヤツか。人生は摩訶不思議だなぁ。

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ウマウマウー。茹で玉子ウマし。関東ローカル、そして横浜ローカル、それもかなり狭い範囲での横浜ローカルおでん、お楽しみ戴けましたでしょうか。自分が当たり前だと思っていたことがそうでなかった時のあの拍子抜けした感じ。他にも色々あるんだろうなと想像する。日本は狭いようで広い。焼きそばの果てしなき旅でも実感したけれど、おでんも果てしない。ああまた沖縄の濃厚なおでんも食べたいし、金沢のおでんも、静岡のおでんも食べたい。最近ようやく日本のあちこちに行けるようになったのでまたあちこち伺います。でもあっちに行ったらあれも食べたいしこっちに行ったらこれも食べたい。食欲ボケか。まあいいか。この冬も元気に色々食べて楽しみましょう。ヨロロイヒー(←ヨーデル)。

ちなみに鍋底に鶏肉(水炊き用でも手羽先でも)を入れると何となくヨコハマっぽいと云うか昔の自分ちっぽい感じになります。鶏皮だけでもイイです。色々御意見はありましょうが、本日はこの辺で失礼します。

末永くがんばりますのでご支援よろしくお願い致します♫