マカロニほうれん荘【第2巻】

『マカロニほうれん荘 第2巻』昭和53年（1978年）2月28日初版。僕の手元にあるのは平成22年（2010年）1月5日52版。世界に誇る日本の文化的極致13話（通算では15話から28話まで）を収録。圧倒的な鴨川つばめ先生の領域展開。カワイイもカッコイイもイヤラシイも愛も希望も恐怖も絶望もパワーアップのセカンドアルバム。レッド・ツェッペリン"Ⅱ"の"Whole Lotta Love"から"Bring It on Home"までの希代なる充実感に匹敵する。奇しくもトシちゃんがジミー・ペイジに扮する場面が多くある第2巻。ツェッペリンも古いブルースからの引用や改作が多いが、『マカロニほうれん荘』も引用の量は膨大。そしてその無指向性に更なる磨きがかかった第2巻である。

※登場人物や設定等は皆さんご存じのこととして話を進めます。

まず表紙からしてピーター・パンである。ネットでピーター・パンのことを色々調べたら大変にややこしい感じなのでスルーします。

そして第2巻2話目（第16話）で徹底的な分裂と引用の嵐が吹き荒れる。1970年の万博ネタから始まり、王（貞治）・長嶋（茂雄）・高田（繁）・星新一・小野耕世・イナズマン・アンギラスが（テキストだけではあるが）続々とやって来る。そして34頁で遂にトシちゃんの実体化。ギャオス・ガメラ・キングギドラ。極めつけは最終36頁を丸々使ってのヒーロー怪獣総進撃。ゴジラ・ラドン・モスラ（親子とも）・ウルトラマン・セブン・エース・仮面ライダー・ガッパ・モゲラ・ジャイアントロボ、エトセトラ、果ては電人ザボーガーまで大暴れ。海底軍艦「轟天号」も出撃。これを初めて読んだ時の僕の喜びようは推して知るべし。完全無欠に『マカロニほうれん荘』のトリコになった瞬間だった。

第2巻の最後、211頁は再び登場のキングギドラで大団円。高校の文化祭が一転して大惨事に巻き込まれてしまうことの理不尽さと爽快さ。この展開のスピードの速さ。未だに世界記録ではなかろうか。『マカロニほうれん荘』の凄みはこの予期し得ない展開だ。第1巻でも思ったがどうせやるなら徹底的にやるべきであると思い知らされた。やろう。やり続けよう。そして今日までやってきた。まだまだこれからだ。もっと徹底的にやろう。でも隣の37頁の扉絵がお色気丸出し♥️。その36頁と37頁の狭間に僕はいる。実は今でもずっとそこにいる。

その37頁も含めてお色気方面は扉絵に過激な描写が増えていて、当時の僕はかなりドキドキした。この第2巻にうふん♥️な濃厚なシーンはないけれど、79頁の「えいっ」「キャン！」だけで充分。当時の僕はそれだけでもう（以下略）。

第2次世界大戦や太平洋戦争中の出来事や軍事兵器、武器などの引用も頻繁になってくるのがこの第2巻。何度も繰り返すけれど僕は戦争やそれにまつわることに本当に興味がないのでその辺りの描写には触れないでおく。でも今ならかなり問題になりそうだと思われるようなデザインもこの時代はまだ許容されていたのだなと思うところもある。わざわざ突いたり穿ったりは縞線（しません）。

トシちゃんがレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジに扮する場面も2度（扉絵を含めれば3度）出て来る。あのGIBSON SGダブルネック（その名の通りネックが2本ある特殊なギター）もしっかり描かれている。僕がまだ中学生や高校生の頃はダブルネックなんて高嶺の花どころか未知の世界の楽器で、憧れるまで想いが至らなかった。今では僕もGISON SGダブルネックを所有しているが、諸事情あって色はホワイト。ツェッペリンと云うよりホテルカリフォルニアと云われる。それはどうでもいい話。この第2巻ではミュージシャンがそのまま出て来ることはないが、Tシャツ（そう子ちゃん着用、210頁）にZZ TOPと書いてあったり、衣装がベイシティ・ローラーズだったりとロックネタは相変わらずあちこちに鏤めてある。先生は本当にロックが好きなんだなぁと昔も、そして今も思うのです。

僕にとっての第2巻のベストシーンはどれか。トシちゃんが八面六臂の大活躍をする第2巻ではあるが、キメに関してはきんどーちゃんが勝るとも劣らない。69頁の「世の中ってこんなもんよっ」、106頁の「キャーッ!!」、153頁のお見合いからの乙女連合結成、そして何より120頁の口を開かず顔アップの「ふっふっふ」と目白押し。もちろん36頁の総進撃も121頁のキングギドラも素晴らしい。しかし、究極の一言は、115頁でテディー・ボーイ・ギャング団のリーダーが口にした「開きなおってんだよ！」に尽きる。人間開きなおる時も徹底して開かなければならないと肝に銘じた。『マカロニほうれん荘 第2巻』の中には人生に於いて大切な言葉や信条が多くある。そして更なる高みを目指して、この後も快進撃が続くのであった。