不整脈より父性愛
10月某日
ここのところ、体調をくずしたり落ち込むことが多くて、気分を変えようと山梨の増穂にある陶芸工房へ。
数年前から年に2、3回通っている。縄文時代からある原生林のど真ん中、神社の参道の中腹にあるこの工房は、なんて言うか特別な雰囲気に包まれていて、そこにいるだけで細胞から元気になってゆく感じがあるのだ(詳しくはこの記事参照)。実際、ここの窯じゃないと焼けない焼き物が多くて、(なんせ、薪炊きの上に4m四方の巨大な窯は全国でも有数なのだ)全国から人が集まってくる、特別な場所である。
東京からのバスで増穂に着くと、窯の主催者の太田さんが出迎えてくれた。
太田さんは余計なことばかり言う美術バカのおやじである。
「小説出た?見してみ…フン!売れなそうな表紙だな!!」
と言いつつ、2冊も購入してくれた。
私が親と抜籍したという話をすると、とたんにしおらしくなって、私の身の回りのことを世話し始めた。
「おれは……あれだ不整脈、じゃなかったあれあれ」
「なんすか」
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