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録音について 初級編

収録環境を整えよう

音声配信は手軽に始められるからこそ悩みやすい収録環境についてまとめました。
ほとんどの場合、デフォルトで収録環境が整ってるなんてことはありませんが工夫次第では収録環境は整えられます。
今回はなるべくお金がかけずに良い収録環境を整える方法を考えます。

良い収録環境とは

結論から言うと、ノイズが少なく、口元から出た音(音像)を可能な限りそのまま収録できる環境です。

日々暮らしていればノイズはどこにでも存在しています。
トラックが外を走り去っていく、鳥の囀り、冷蔵庫のモーター音、服の擦れ、唇を開く時のリップノイズ。
数え始めたらキリがありませんが、意図しないノイズを限りなくゼロに近い状態にコントロールできる環境がベストです。

例えば、お風呂場で鼻歌を歌った経験は誰しもあると思います。
一般家庭のお風呂場の多くは壁、床、天井に音の吸収性が低い材質(タイルなど)が使われていることが多いです。
音の吸収性が低いと言うことは、それだけ音が反響しやすいと言うこと。
反響すると言うことは元の音(音像)がぼやけた状態になると言うことです。

会議室で一人で喋っている時には声が十分に出ているのに、人が入ると声が通らなくなるのも、人が入ると音を吸収するから普段より声を張らないと声が届かなくなります。
元の音(音像)をくっきりさせたいならこの状態を利用しましょう。

オススメの収録環境

ずばり押入れです。
これは結構多くの配信者さんが実際にやられています。
押入れは狭い空間に洋服などが敷き詰められている為、家の中でも反響音の吸収性がかなり高いです。
また個室空間を作り出せることで環境ノイズも防げます。

家の中で収録に向く順番
お風呂場<トイレ<寝室<押入れ

機材、環境はなるべく揃える

機材、環境はなるべく揃えるのが定石と言われています。
同じ機材に揃えれば音質が良くなるわけではありませんが、機材にもそれぞれ特性があります。
例えば、Aは密室でワイヤレスイヤホンのマイク機能で話している。
Bは広い部屋でSHUREのSM58で話している。
これを編集するのはかなり骨が折れます。
この音声を同時に聴いた時に聴取側がどちらの音質モードで聞いたら良いのかわからないので心地悪い音源が出来上がります。
これを編集で擬似的に近い環境に修正していきます。

上記例の音声編集例
①A音源 : マイク機能で再現しきれてない音域を調整(イコライジング)
②B音源 : リバーブの除去でA音源の反響に近づける
③B音源 : イコライジングでA音源が再現できなかった音域を削る
④A音源 : B音源のリバーブ除去で除去しきれなかった反響音に近づけるようにリバーブをかける
⑤A音源 : リバーブ除去で不自然になった場合、更にイコライジング
⑥B音源 : A音源が再現できなかった音域を更に削る
⑦A,B音源 : 音を圧縮(コンプレッサー)
⑧A,B音源 : ボリューム調整
※編集の細かい方法は別途記事を書きます。

これがA,B共にSHUREのSM58、押入れで収録していると

①A,B音源 : マイク機能で再現しきれていない音域を調整
②A,B音源 : リバーブを追加
③A,B音源 : 音を圧縮
④A,B音源 : ボリューム調整

手数がかなり減りました。
以上のような理由から機材、環境はなるべく統一したほうが良いです。
しかし、ポッドキャストのためにマイクを買うのは。。。と思われる方も多いと思いますが、ほとんどの人が質の良いマイクを持っています。
それがスマホです。
スマートホンはそもそも電話をするために設計されているため、本体のマイク機能もそこそこ良いです。
ここで注意してほしいのは本体のマイクと言うことです。
有線イヤフォンについているマイクはサイズに制限がありすぎてあまり音質(周波数特性)が良くありません。

またスピーカーにして話していると、少なからずスピーカーから出る相手の音をこちらのマイクで拾ってしまうため、相手の声は他の機材でモニタリングしながら、こちらはスマホに向かって喋るのが理想的です。

書き出しデータは必ず揃える

編集初級編でも簡単に説明しましたがMP3はWAV,AIFFのデータからいらない部分を削った音です。
よってMP3→WAV,AIFF変換はできません。
厳密には出来ますが、音質が変わらずデータ量が増えるだけなので意味がありません。

詳細は編集の中級編で触れますが、複数人で収録する場合、必ず書き出し方法を揃えましょう。

サンプリングレートとビット深度

録音時に設定したことがあるかもしれません。
これもかなりいろんな意見がありますが、私見的な正解は以下です。

サンプリングレート : 44.1 kHz (44100 Hz)
ビット深度 : 16bit

特に注意が必要なのがサンプリングレートです。
サンプリングレートは簡単に言うと1秒間にどれだけの音を取得するか。
44100Hzは1秒間に44100回音を取得して、48000Hzは48000回取得していると言うことになります。
これがずれていると編集者は全てのやる気を失います。

楽器の演奏であればより繊細な再現度や表現が必要になりますが、人間の音声だけであればそこまで多くしたところで特に表現できる幅に開きがありません。
また、人間の可聴音域は20kHzに対して、40kHz以上のサンプリングレートがあれば再現できるため44.1kHzで問題ありません。

詳細は後日アップ予定の編集の上級編で触れようと思います。

マイキング

マイキングとは話者とマイクの位置関係や角度の調整です。
マイクの特性(単一指向、全指向)、周波数特性、話者の話し方特性(ボイスが多い、声がこもっている)など様々な条件がありますので収録の中級編で触れようと思います。

マイクチェック方法

基本的に自分のマイクで常に同じ環境で録音している人はマイクとの距離を見る程度のマイクチェックだけでも大丈夫だと思いますが、普段使い慣れないマイクや、機材や環境が変わった場合には念の為必ず行ったほうが良いです。
マイクチェックで特に注意したいのは以下の項目です。

  • 破裂音(BやPなど)

  • 歯檫音(SやTなど)

  • 音量(ゲイン)

破裂音はマイクに息がかかりやすい音です。
マイクに息がかかると純粋に効き心地が悪くなるのと、音割れの原因になります。
息がマイクに当たっている場合は口とマイクの距離を離しましょう。
息がかかっていないけど音割れする場合はゲイン(入力感度)のあげすぎですので、ゲインを下げましょう。

次に歯檫音ですがツやシなどの息が歯に当たる音です。
歯檫音は人が不快に感じる音域が出やすい為、ヘッドホン等で自分の声を聞きながら気になるようであればイコライザー等で特定の周波数を削りましょう。
個人的には録音はイコライザーやエフェクトは使わずに生音で収録し、編集時に加工するほうが良いと思います。
収録時にイコライザーやエフェクトを使ってしまうと「やっぱりこのエフェクト消したい!」と思っても手がつけられないからです。
厳密には時間をかければ不可能ではありませんが、音は加工すれば加工するだけ音質が劣化しますので、編集する前提であればエフェクト類はかけないほうが無難です。

ゲインはマイクを差し込んでいる機械(オーディオインターフェース)やスマホのアプリで調整できます。
これはオーディオインターフェースやアプリの仕様等で変わりますので、使用している機材やアプリの使用方法を確かめましょう。
基本的にはメーターやインジケーターが赤くなると音割れの原因になりますので、ゲインを下げましょう。
音割れした音は編集では治すことができません。

以上が録音に関する初級編です。
サンプリングレートやマイキングなど専門的な言葉も出てきましたが、一番は良い環境で音割れなく収録することです。
良い録音環境を手に入れる為に色々試してみてください。

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