[映画] 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』[感想][多少ネタバレあり]

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

 先週の月曜日に初めて見たあと、興奮のあまり、Filmarksにこんなことを書いたんですが、
Filmarks ゴジラ キング・オブ・モンスターズのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

I-MAX 3Dにて鑑賞。
大変面白かった。いろんな怪獣映画からアイディアやモチーフを頂いている感じで、あまりオリジナリティは感じないけど、怪獣映画で何より大事な、怪獣がかっこよく、美しく、恐ろしく、強そうに描かれていて満足。伊福部昭などオリジナル音楽の使い方もいいし、芹沢博士の描き方もいい。前のやつはいかにもアメリカ人が描いたモンスター映画だったけど、今回はかなり日本側の意見を取り入れていると思う。怪獣映画好きなら涙腺が緩くなるようなところがいくつもあった。推薦。(5点満点で4.8点)

 この映画、結局現在までのところ3回見てます。いわゆる「ハマった」ってやつ。見たのは

◎IMAX・3D・字幕版
◎MX4D・3D・吹替版
◎ScreenX・字幕版

IMAX・3Dは、一番オーソドックスな立体映像で、3Dメガネをかけて見るやつ

MX4Dは座席がガタガタ揺れたり水を吹きかけられたり耳元に風が吹いたりするやつ。3Dなんで、3Dメガネもかける。規格の関係か、吹き替え版しかない。

ScreenXは、さわりになると画面が3面スクリーンになって視界が広くなるやつ。3D版はない模様。都内ではお台場だけで上映してます。

 MX4Dはアトラクションとして面白かったけど、落ち着いて見る感じにはならないので、少なくとも初めて見る人にはお勧めしません。吹き替え、特に主人公役(カイル・チャンドラー)の声が若すぎて、全然合ってないのも気になりました。3Dが苦手でないならIMAX・3Dでいいと思うけど、私はメガネの上から3Dメガネをかけなければならず、そのため画面もぼやけ気味の3Dはどちらかといえば苦手なので、上の3つの中ではScreenXが一番良かったですね。細かいところもちゃんと見えるし。

 で、中身ですが、1週間で3回も通うとさすがにいろいろアラは見えてくるけど、そのぶん、最初見た時には気づかなかったいろんなところに気づきます。チャン・ツィーの役が双子だった(つまりザ・ピーナッツのやった小美人へのオマージュ)なんて、最初は全然気づかなかったし。でも最初に見た時の「怪獣映画で何より大事な、怪獣がかっこよく、美しく、恐ろしく、強そうに描かれていて満足」という感想は一片たりとも変える必要を感じない。見るたびにワクワクドキドキハラハラしてますよ。

 ところがこの映画は賛否両論で、特に批評家筋からの評判がめちゃくちゃ悪い。

ハリウッド版ゴジラ最新作 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』海外メディアの評価まとめ(海外の反応)

 リンク先は海外での評価ですが、日本でも一部批評家が酷評してるようですね。その一方で一般観客の満足度は非常に高くて、両者のギャップが激しい。

外国人「ゴジラ キング・オブ・モンスターズの評価がおかしい」(海外の反応)

トマトメーター: 41% (批評家の好意的意見の割合) 
観客のスコア: 89% (一般ユーザーの好意的意見の割合) 

 批判の主な論調としては「怪獣パート以外のストーリー、人間ドラマが弱い」「怪獣賛美に偏りすぎていて、一般市民目線を欠きバランスが悪い」といったところでしょうか。確かに脚本はご都合主義が目立つし(例:環境テロリストのアジトと怪獣バトルの舞台フェンウエイ・パークと主人公親子の自宅がすべて徒歩圏内)、主人公親子の親子愛ドラマはめちゃ薄っぺらく陳腐で、しかも誰も感情移入できるキャラクターがいないのは致命的だと思います。特にヴェラ・ファーミガがやったエマ・ラッセル役は、みんなが言うようにかなり酷い。あれ、彼女の動機が「人類を救うため」みたいな空疎なお題目じゃなく、息子を殺したゴジラ憎しのあまり半狂乱になってキングギドラを復活させてゴジラを倒そうとするところを環境テロリストに利用されて……という情念の展開にした方がすっきりすると思うけど、それだと「ガメラ3 邪神覚醒」の設定と全く同じになってしまうので、それは避けたかったんだと思います。監督は平成ゴジラへのオマージュを強調するけど、むしろ大きな影響を受けてるのは平成ガメラ・シリーズじゃないでしょうか。そもそも監督がインタビューで言っている今作のテーマ

ゴジラは、人類ではなく自然に対する守護者だ。人類が自然のルールに沿って生きている限りは、人類の味方になるだろう。一方で自然に敵対すれば、彼(ゴジラ)は自然の守護者であるため、人類とも敵対する。「ゴジラの役割が作品によって変化する」のではなく、人類の行動によって彼の行動が変わるのだと僕は考えている。そしてキングギドラが自然を脅かすのであれば、当然戦うことになるんだ。

は、「ガメラ2 レギオン襲来」のテーマと同じですよね。フェンウエイ・パークが出てくるのも、「ガメラ 大怪獣空中決戦」の福岡ドームと同じだし。

 しかしそうした瑕疵はあれど、怪獣たちがかっこよく登場して大暴れしてくれれば、そんな些末なことはどうでもいいと思えてしまうのが『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の素晴らしさだと思うわけですよ。確かにもともと怪獣好きの観客以外からしたらドラマ・パートの弱さやテーマのバランスの悪さは気になるかもしれないし、批評家はそういうところもちゃんと指摘しなきゃいけないのは当然なんですが、観客はもっと正直に、自分の欲望に忠実でいいと思うんですね。

 怪獣パート以外のストーリードラマ部分、人間パートを充実させようとしたひとつの成功例が「シン・ゴジラ」ですね。あれは予算のない日本の怪獣映画の生きる道だと思うし、あれが怪獣映画史上の大傑作となったのは素晴らしい。でも今回の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』だって、全然違うベクトルではあるけど傑作だと思います。少なくとも怪獣映画を見る一般大衆の欲望はちゃんと満たしている。あの親子がもうちょっとマトモに描かれていれば、アメリカの批評家からの評判は変わったろうけども、そもそも監督はあんな親子ドラマ、入れたくなかったんじゃないかな(終盤の、アイス・キューブの息子(オシュア・ジャクソン・Jr)の吐くあるセリフがそれを示す)。でも入れないとハリウッド超大作としては企画が通らなかったんでしょう。

 だいたい「ストーリーがちゃんとしてないと、いくらエフェクトや映像や音響に凝ったところでダメ」という論調って、ちょっと古臭いと思うんですよね。もちろんそういう映画もあるけど、ストーリーなんて二の次でいい、という楽しみ方も評価もあっていい。「音楽はいいメロディと歌詞がないとダメ」という考え方もあっていいけど、(旧来の尺度で言うところの)楽曲の善し悪しなんてどうでもよくて、サウンドの気持ち良さがすべて」って音楽もあっていいのと同じ。

 かなり昔、70年代前半〜半ばだったと思うんですが、日本のテレビでバンド合戦的な番組がありました。(イカ天よりずっと前)そこに、それなりにかっこいいロングヘアのハード・ロック・バンドみたいなのが出てきて、演奏はかなり頑張っていたんですが、そうしたらラジオDJだかパーソナリティだかの女性審査員が「ポピュラリティとか考えてるのかしら」とか言ってしたり顔で酷評してて、なにもわかってないなこの審査員、と思ったわけですよ。そもそもその審査員が彼らのやっているようなハード・ロックを理解しているとは到底思えないし(それはこの審査員が褒めているバンドを見れば明らかだった)、彼らは審査員が言うような一般大衆向けのポップな音楽じゃなく、彼らの信じるかっこいいハード・ロックをそれなりにストイックにやろうとしてるわけで、そこにポピュラリティ云々なんて全く的外れの批判でしかない。スレイヤーに対して「なんでお前はクイーンみたいな曲をやらないんだ」って言ってるのと同じ。今回の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に対する批判も、同じような印象を受けました。

 というわけで、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』、劇場公開してる間に、あと1〜2回は見ておきたいと思ってます。4DX版はお勧めしない、と書きましたが、4DX版をさらにパワーアップした「マキシマムバトルエディション」なるものも登場するらしいので要チェックです。当然ブルーレイが出たら買いますが、あの迫力を家庭で再現するのは絶対不可能だと思うので。

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