[日本ハムファイターズ観戦記] 育成・樋口龍之介選手について

(9/22追記)
なんと、この記事を書いた翌日の今日になって樋口選手が支配下登録!
おめでとう!!! 当然、即一軍昇格スタメンを期待! もしすぐに結果が出なくても、辛抱強く使い続けてほしい!

(9/22追記・以下は支配下登録が発表される前に書いたものです)


 育成の樋口龍之介選手がファームで打ちまくっています。

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 9月20日現在で、イースタンリーグの打率2位、本塁打1位、打点2位、出塁率1位、長打率1位。素晴らしい数字です。OPSは1,098で当然1位。これは一軍で言えばソフトバンクの柳田級の数字です。7月のファーム月間MVPにも選出されています。樋口が凄いのは、開幕から今まで大きな波もなく、コンスタントにずーっと打ちまくっていること。率も残せるし大きいのも打てる。守備はイマイチという話ですし、足も早くない。打つだけの選手ではありますが、ここまで打てば問題ないでしょう。暑い鎌ケ谷の夏を無事過ごして成績を残してきたわけですから、体力面もバッチリでしょう。

 しかし一向に支配下登録されません。今年の早い段階で高濱がやはり育成から支配下に復帰しましたけど、その高濱と同じぐらいの成績で、同じ横浜高校の先輩でもある樋口は、いくら打ってもそんな気配がありません。上記の記事では「樋口の支配下登録が目前に迫っている」なんて、もう既定事項であるかのように書いてますが、別に根拠となる事実や球団関係者の話があるわけでもなく、今季は育成契約のまま終わってしまう可能性だってもちろんある。というかこれまで上げるチャンスは何度もあったはずなのに、なぜ今まで実現してないのか。

 前述の通り守備や走塁が一軍レベルにないから、ということかもしれませんが、今の一軍にもそういう選手いますよね。守れない、走れない、その割に頻繁にスタメンで使われ、守備のまずさを補うぐらい打っているかといえば全然そんなことないっていう選手が。誰とは言いませんが。守備が足りないならDHで使うという手もあるし、代打の切り札として使うのもいい。

 もちろん一軍と二軍のレベル差はあると思います。一軍ではサッパリだった王がファームに落ちた途端に打率7割超えと打ちまくったのはなんとも複雑でした。でもレベル差を言い出したら、いつまでたってもファームから若手を抜擢できません。もちろん数字だけではわからない、プロの目から見て、一軍レベルに達しているかどうかという判断もあります。逆にファームではパッとしない数字だった上原が、一軍にあがった途端、先発として素晴らしいピッチングを披露している例もあります。田中幸雄は樋口に関して以下の記事でこんなことを言っています。

「解説などでファームの試合を見ていますが、横幅はガッチリしていて、遠目に見ていても大きく見える選手です。小柄ですけどスイングもしっかり振り切れていて、強くて速い。まず一番素晴らしいと思うのが、ボールにコンタクトする能力が非常に高いところですね」
「コンタクト力は一番大事ですよね。形がきれいでもバットに当たらなければ意味がないですしね。その中で結果をしっかり出している、数字を出しているというのは素晴らしいと思います」
「左打者ですが、小笠原道大はあれだけ打って、打点も挙げられるというバッターでしたね。近藤はどちらかというと率が高いバッターですから、(樋口選手には)長打力もあってホームランも打てる、パワー系の打者になってもらえたら」

 つまり元ハムのファーム監督で、プロ入り以来数多くの名選手を見てきたミスター・ファイターズ田中幸雄の目から見ても、小笠原道大の名を引き合いに出すぐらい、樋口の実力はホンモノということです(もちろんリップサービスもあるででしょうけど)。

 年齢的なハンデはあるかもしれません。94年7月生まれの26歳。ハムで言うと近藤の1学年下、渡邊の1学年上。そろそろ若手から中堅と言われるようになる年齢。しかし20代の後半になって開花するプロ野球選手などザラにいます。また体格も168センチとプロ野球選手にしては小柄。しかしカラダが小さくても一流の打撃成績を残している選手は現役でも近藤や、西武の森など、いくらでも挙げられます。古くは門田博光という大打者もいます。第一、年齢的なことも体格面でも、育成選手として契約する前からわかっていたこと。いまさら支配下登録しない理由にはなりません。

 もうひとつ考えられるのが、選手枠の問題。確かハムの現在の支配下登録選手は68人。枠が70人ですから、2つ余裕があります。シーズン中の緊急トレードや緊急外国人補強に備えて空き枠を残すのは普通ですが、ハムはここまでトレードは一切ない。また外国人補強もコロナの影響で現実的ではない。もしかしたら9月末の期限ギリギリまでトレードの可能性を模索し、そのあとに支配下登録を……と考えているのかもしれません。ロッテや楽天はかなり積極的にトレード補強をしていますが、いつもはトレードに積極的なハムが全然動かないのは不思議と言えば不思議。交換要員で折り合いがつかず、結果的に不成立になっているのかもしれませんが、いずれにしろ2つも枠を残したままなのはもったいないので、登録期限の9月末までに支配下登録の動きがあるかもしれません。というかそれを期待したいところです。

 もうひとつ支配下登録されない理由を考えると、既存の若手選手との兼ね合いです。樋口の守備位置は1塁と2塁、そして3塁です。つまり清宮、渡邊、野村といったところと守備位置がダブる。特に選手としてのタイプを考えると、左右の違いはあれど打撃特化型という意味で清宮とモロにかち合いますね。

 そもそもハム球団の育成は選手同士を競わせるのではなく、これと見込んだ選手にはポジションを空けて無条件でチャンスを与えるというやり方です。清宮の育成もそのやり方ですね。もし同じポジションに力の衰えかけたベテランがいれば追い出してでもポジションを空ける。つまり公正な競争原理が働いていない(それがイヤで小谷野も森本も大引もFAで出ていった)。もちろんそのやり方で成功することもあるでしょうが、清宮の場合、現状では成功しているとは到底言いがたい。しかし7球団競合ドラフト1位という超大物の育成を失敗に終わらせるわけにはいかない。 

 つまり清宮をなんとしても一人前にしたいハム球団は、清宮の競争相手、あるいは目の上のタンコブになりそうな樋口を支配下登録したくない、という思いがあるんじゃないか。そもそも球団は樋口(あるいは同じ育成の海老原や宮田も)を、いつでもクビを切れる使い捨ての鎌ケ谷の試合成立要員程度にしか考えていなかったのかもしれません。それがフタを開けてみれば、球団の期待、というか思惑をはるかに超える打撃技術で、二軍では格が違うような素晴らしい成績を残している。これだけの数字を残している選手を支配下登録しなければ、何のために育成選手をとったのかと批判される。またこれだけ打ちまくっている選手が一軍に引き上げられないようなら、ファームで一軍での活躍を目指して毎日汗を流して努力している選手の士気、モチベーションに関わる。そこで扱いに困ったまま現在まで来てしまった……と。

 もちろん、以上は何の根拠もない私の妄想です。ただ気になるのが、今年のハムは1,2軍の選手の入れ替えが極端に少ない、ということ。ほぼ一軍で十分に実績のある選手の再調整やケガのリハビリにともなう入れ替えだけで、ファームで実績を積んできた若手の抜擢がほとんどない。特に打者では、パッと思いつくのが、7月に育成から支配下登録され即一軍昇格した高濱と、2年目の野村ぐらい。しかも高濱は一軍ではほとんどチャンスを与えられぬままファームに落ちてしまったし、野村も早々に故障離脱してしまった。つまり今年に関しては、栗山監督は、特に打者に関しては力量がよくわかっている既存の選手しか使おうとしてないのです。高濱を上げたのもどちらかと言えば、育成制度が機能してますよ、とアピールしたい球団フロントの意向で、栗山監督は戦力として見ていなかったのでしょう。それは今年結果を出さないとまずいという監督の焦りかもしれません。まして今チームは自力優勝が消滅し、自力CS進出も、Aクラス入りも風前の灯火という状態です。そんな中、悠長に未知数の若手を使う余裕はない、ということです。

 そんな状態で樋口を支配下登録し、たとえフロントの意向で一軍にあげても、栗山監督がマトモに使うとは思えない。だったら今年いっぱいはファームでじっくりと力をつけた方がいい、という考え方も、当然あるでしょう。栗山監督が今年で退任するようなら、新監督のもとで、一斉に一軍レギュラーの座をかけての新たな競争が始まる。そこで樋口も、1年間ファームで力を蓄えてきた成果を出せればいい。もちろんそこで「公正な競争原理」が働くかどうかはわかりませんが、少なくとも新監督は、前任とは違う自分の独自色を出したいはず。使う選手にしても同様です。中田や近藤、大田、渡邊など絶対に外せない主力は別として、長年の先入観や固定観念で使われる選手が決まっている状態より、すべての選手に等しくチャンスのある状態の方が、若手にとってはいいに決まっている。樋口がその中で躍動し一軍で活躍してくれれば最高です。ではもし栗山監督が留任したら? ウーン……

 とはいえ、そんな将来チーム像のことなど関係なく、ファームで鬼神のごとく打ちまくっている若き安打製造機を一軍で見たいという思いは非常に強いです。なんとか近々の支配下登録と一軍抜擢を期待したいですね。その時はどうか、代打と言わず一塁もしくは三塁スタメンで、一試合だけでなく何試合かチャンスをあげてほしい。



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