[日本ハムファイターズ観戦記] 栗山監督続投を受けての、各メディアの論評について

 栗山監督続投の報を受けて、各メディアの論評や解説が出てきました。

2004年の札幌移転以降、日本ハム球団がその理念としてきた「スカウティングと育成」が停滞、いや機能不全を起こし今や全く特徴のない球団へと没落している
 栗山監督が就任した2012年以降の9年間を見てもチーム作りの根幹を成すドラフトで獲得した戦力でレギュラー、主力に定着したといえるのはわずか数えるほど。
 必然的に西川、中田、近藤を中心としたレギュラー陣の中堅化、ベテラン化が進行し世代交代のメドが見えてこないのが実情だ。
 長期政権による組織の硬直化という弊害の前に、勝てる組織の前提となる補強、育成部門低迷の問題の洗い出し、改善がなければ日本ハムのV奪回は難しいだろう。

 現状のハムの問題点を的確に指摘・分析した記事だと思います。

 かつて首脳陣経験のある日本ハムOBは次のように打ち明ける。
 「近年のファイターズは基本的にスター候補の選手たちの育成に関し、その方向性をフロントの中で決定付ける流れがますます強まっている。その上から与えられた方向性を監督はどうやって“料理”して押し進めていくか。自分のカラーを出し過ぎず、うまくバランスを取りながらフロントからの注文通りに選手を育成していく手腕が問われる。
 一方で当然結果も出していかなければいけないから、ファイターズの監督業は特殊であり、12球団の中でもかなり難儀な部類と言えるのではないか。まさにそういう資質を備えた人物が栗山監督だった。
 もともと栗山監督は監督よりもGM業に興味を強めていた背景もあり、球団の編成トップを務める吉村浩GMにも理解を示して常にリスペクトしている。そうした意味でも球団側にとって栗山体制の持続は歯車が噛み合わせやすく、トップダウン方式のヒエラルキー維持を図る上では申し分ない選択肢と言えるだろう。だが、いかんせん、これだけ特殊な監督業になると次のなり手がなかなか出て来づらい」
球団内には「チームを再建させ、再び強くすれば客足も戻って人気復活に結びつく。それができるのは百戦錬磨の栗山監督しかいない。新球場(北海道ボールパーク)が開業する2023年まで頑張ってほしい」と栗山体制のさらなる延命に期待する声も飛び交う。

 要するにフロントの権限が強すぎて、監督の裁量が極端に少ないハム球団のあり方は非常に特殊で、外部の監督を招聘しづらい。栗山監督はその条件に当てはまる稀な人材。そして数少ない栗山監督の後釜候補である稲葉も小笠原も球団内の評価はイマイチ。なので2023年の新球場開業まで栗山監督でいこうという声が高まっている、と。チームの低迷の責任を誰もとらず、ファンの声も無視して、自分たちの傀儡として都合のいい栗山監督にずっと監督でいてほしい、と。ハムはそういう球団なのだと、この記事は言っています。真偽のほどはわかりません。「かつて首脳陣経験のある日本ハムOB」って白井さんでしょうか。つかそれ以外いないですよね。

 栗山監督は昨オフに続投が決まった際も「来年は鬼になる。絶対に優勝する」と大見えを切ったが、結果はご覧の通り。鬼になるどころか、情実起用を繰り返し、淡々と黒星を重ねた。チーム内にすら、「言行不一致もいいところ。言葉だけが上滑りして、選手にも響かなくなっている」との声が出ている。言葉も地位も「軽い」の典型だ。

 「栗山監督の言葉が軽すぎる」とは、まったくその通り。

 監督就任には意欲的な球界OBたちもこうこぼす。「財布のひもの堅い楽天と日本ハムだけは勘弁してほしい。」
 栗山監督の続投も訳アリの“1年間の執行猶予”に過ぎない。日本代表の稲葉篤紀監督がポスト栗山最有力だが、まさかの東京五輪が来年への1年間延期のためだ。
 来年オフにならないと日本ハムは稲葉新監督を誕生させられない。仕方なく栗山監督の1年間の続投を決めたのだ。 

 これはいつもの夕刊フジクオリティですが、注目は次の記事。

 斎藤が生き残り、清宮にチャンスが与え続けられたのは、栗山監督による贔屓が要因と思われがちだが、実はチーム方針を決めているのは取締役球団統括本部長も兼ねる吉村浩ゼネラルマネジャー(GM・56)だ。吉村GMは2015年の就任前から、監督やコーチの人事、選手のトレードを断行。絶対的権力者として隠然たる影響力を行使してきた。
 若手育成にもGMの定めた方針が絶対的な指針として打ち出され、コーチら指導陣が逆らうことは許されない。栗山監督に必要なのは“情を捨てる”以前に、GMの“呪縛”を断ち切り、本来課せられた監督としての指導力を発揮することなのである。
「監督やコーチが熱い言葉を掛けてくれることもあるんですが、『結局、この人もGMに言わされているんだろうな……』って色目で見てしまう。そのせいもあって、指導者の言葉が入ってこないんです。“育成の日本ハム”なんて言ってますけど、ここ数年でファームから上がって1軍の戦力になった選手は数えるくらいでしょう」(前出・OB)
「栗山さんは素晴らしい人物だし、吉村さんもとても優秀な人です。でも、いくらなんでも長く続けすぎ。みんな飽き飽きしてしまっている」(球団関係者)

 現在のハムの惨状の本当の原因と責任は栗山監督だけでなく吉村GMにも大いにある、という意見はネットを中心に根強く囁かれています。とはいえ吉村GMは滅多にメディアの取材を受けることがなく、ファンの前にも姿を現したことがないので、実態がわからず、彼が球団内でどういう権限を持っていて何をやっているのか、球団運営に関してどんなヴィジョンや理想や目標や哲学を持っているのか、栗山監督との関係はどうなのか、よくわからないのです。誰がみても一軍レベルに達していない清宮を無理やり一軍で使い続けるのは栗山監督の意思ではなく吉村GMの指示ではないか、とは囁かれていましたが、一介のファンにはそのへんの事情はわからない。ところがこの記事は、いわばタブーとも言える吉村GMの独裁体制の実態と問題点、責任をはっきりと指摘しています。上記のJBプレスの記事が指摘する「フロントの権限が強すぎて、監督の裁量が極端に少ない」とは、つまり吉村GMが絶対権力者として専制政治を行っていて、誰も逆らえない状況になっていることを指している、と解釈すべきでしょう。もちろん、その真偽は我々にはわかりません。

 一般に政財界の黒幕とか影の権力者はなるべく一般大衆の前に姿を現さず、裏でコソコソと権力を行使して、その地位を維持するもの。権力者が権力を維持するコツは、民衆に情報を与えないこと、と相場は決まっています。今の政府のやり方を見ればよくわかりますね。吉村GMがやっているのはそういうことでしょう。絶対権力者というなら楽天の三木谷さんもそうですが、それでも三木谷さんはオーナーですから多少表に出て批判されても揺るぎのない地位がありますが、球団重役とはいえ一介のサラリーマンに過ぎない吉村GMの権力の座は、それほど盤石なものではないのでしょう。だから自分は裏に回って栗山監督を傀儡として矢面に立たせているのだ……とはさすがに私の妄想が過ぎますが、いずれにしろ、「デイリー新潮」のような曲がりなりにも一流の週刊誌メディアがこうした問題を取り上げたことで、さらに吉村GMの実像や栗山監督との不透明な関係や球団の実態について関心が深まるのは間違いない。

 この記事でも書きましたが、プロ野球はファンに夢を与えることで成り立っているビジネスです。しかしあまりにも不透明で不可解な人事が横行し、球団への不信感がここまで高まってしまうと、プロ野球は夢の世界どころか我々が生きる現実社会のカリカチュアそのものでしかなくなってしまう。そんなプロ野球に何の魅力があるのか。そうなってしまう前に、ハム球団はせめてファンの声に耳を傾け、透明な球団運営と「説明責任」というやつを果たしてほしいと思います。

 それにしてもこういう突っ込んだ記事を書くのは東スポだのゲンダイだの新潮だのばかりで、日刊スポーツとかサンスポとかスポニチとか報知とか、そういう既存の大手スポーツ新聞は、ただ球団発表の公式情報を垂れ流し、球団フロントの言い分を無批判に記事にするばかりですね。「記者クラブ制度」に守られた新聞テレビなど大手マスコミが、政府に対してまったく腰のひけた記事しか書けないのと、とてもよく似ています。

 

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