[北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2021]8/20 中田、巨人へトレード。

 千葉真一追悼で朝まで映画を見ていて、起きたらこのニュース。さすがに驚きました。

 いや正直言うとね、もし万が一他球団へのトレードがあるなら、巨人しかないと内心では思ってたんですよ。なぜかと言えば中田をコントロールできるのは、現役の監督では原監督ぐらいしかいないだろうから。キャリアから言っても、実績から言っても、威厳から言っても、厳しさから言っても、球団内の地位や力から言っても、采配面だけでなく編成・人事面でも球団に対して自分の意思を押し通せる原辰徳全権監督しかいない。球団としてそんなことができる余裕があるのは巨人しかいない。でも条件的には整っていても、まさかそんなことはあるまいと自分で可能性を否定しちゃってたんですね。

 言うまでもなく巨人は茶髪もヒゲも禁止の(建前としては)紳士の球団です。北海道のローカル球団とは比較にならないぐらいマスコミや世間の注目度も高い。中田が頭の上がらない怖い先輩やコーチも一杯いるだろうから、中田はこれまでのように王様として好き勝手に振る舞うことはできなくなる。自分の行動を厳しく律することができなければやっていけない。と同時に、邪念を捨て野球に集中できる環境でもある。そしてもっと言えば、東京ドームは狭いから札幌ドームよりはるかにホームランが出やすい。中田も得意にしていたはず(引退間際の上原から東京ドームで打ったのをナマで見たことがあります)。つまり中田にとっては、プロ野球選手を続けられる最後のチャンスであると同時に、念願のホームラン王になれる最大のチャンスが訪れたというわけ。石川慎吾とか陽とか鍵谷とかトヨキンとか、かつてのチームメイトもいる。二岡コーチもいるしね。馴染みやすいと言えば非常に馴染みやすい。チームリーダーの坂本が中田より一学年上というのもいい感じ。同じ右の強打者で、巨人では外様で、なんとなく外見も性格も似てそうな村田修一コーチも、良き相談相手になれるのでは。

 巨人のチーム状況はよく知らないけど、ファーストが固定できていないらしいので、もし中田が去年までの力を発揮できれば、かなり大きな戦力になるでしょう。守備もうまいしね。巨人の四番は荷が重いかもしれないが、六番や七番に置いておけば、これは怖いですよ。優勝へのピースとしてがっちりハマる可能性がある。ああ見えて根は真面目なので、力になれると思います。プレッシャーに強い方ではないが、日本シリーズとか優勝争いの土壇場とか、本当に追い詰められたギリギリの修羅場になると、異常に勝負強くなる選手でもある。巨人は他球団から大物選手を受け入れることに慣れているから、中田のこともうまく扱えるはず。

 まあその反面、使えないとなればあっさり切られる球団でもある。選手層が厚いから、使えなければ二軍三軍行き。また問題行動を起こせば、もちろん即アウトです。だから厳しい環境ではあるが、野球選手としても人間としても大きく成長できる環境でもあると思います。

 寂しくはあるけど、このまま中田の野球人人生が終わってしまうかもしれないと考えていたから、正直言ってありがたい。よく火中の栗を拾ってくれたと思う。巨人さんありがとう、原監督ありがとう、という感じ。いやマジに。

 交換要員はいないらしい。おそらく金銭も発生しない無償トレードでしょう。それも、ホークス小久保やロッテサブローという前例があるんだから巨人という球団は凄いですな。シーズンオフではなくシーズン中の緊急トレードになったのは、巨人が優勝に向け、即使いたいからでしょう。

 ことの発端は16日の夜に、日本ハム・栗山監督から電話が入ったことだった。 
 「彼と僕とは野球人としてだけでなく、人間として信頼関係があると思っていて、その栗山監督から相談を受けました。そのいきさつ等々はここで語る必要はないでしょう」
 詳細は伏せたが、中田の再起を願う栗山監督の親心を強く受け止めたという。
 それを受け、原監督は球団首脳に相談。中田本人の落胆と謝意は推して知るべしであり、セカンドチャンスを与えるべきだと進言した。
 事前に、チームのキャプテンである坂本だけには、同様に「彼の過去、現在、未来を共有したいと思っている」と伝えた。主将はこれまで通りチームをまとめる役を買って出てくれたという。
「道を閉ざすことはしてはいけない。過ちを反省して、その後の行動で信頼を勝ち取ってもらうしかない。そこでもし仮に繰り返すようなことがあるならば、そこは私が断を下します」
 巨人の大塚副代表・編成本部長は「無償トレードです」と明言。その上で中田は日本ハム・吉村GMの前で涙を流して謝罪し、反省し「野球をやめる覚悟はある」と話したと明かした。
 「ジャイアンツがもう一度中田選手にチャンスを与えたいと。痛みを共有したほうがいいんじゃないかと。原監督の下であれば、人としてプレーヤーとして輝きを戻せるんじゃないかと。原監督は勝負に対して非情というか厳しい。特別扱いは絶対しない。その中で中田選手がプレーするということで復活するんじゃないかと思ったというのが大きいですね」と話した。

 この長文をいったん完成させてFacebookにあげたら、もう入団会見をやっていると知り、今あわてて書き直してるわけですが、巨人の手際が良すぎますね。日本ハム球団としても、暴行事件が起きてわずか2週間ちょっと、発覚してから10日弱で事態を収束させた手際の良さは、ちょっと驚きです。おそらく日本ハム本社からも、一刻も速く事態を収束させるよう、強いプレッシャーがあったはずです。

 上記記事には16日の夜に栗山監督から原監督に直電があったのがきっかけとありますが、もしかしたらこの問題が起こる前から両球団の間でトレードの話があったのかもしれない、と見ます。それが事件発覚を受け、無償トレードということで急遽話がまとまった、という可能性もある。いずれにしろ巨人も原監督も、こうして中田及び日本ハムを救う度量の大きさを示すことができた。これで中田を再生できれば、原監督の巨人内でのプレゼンスがさらに大きくなり、球界全体としても巨人や原監督の存在感は圧倒的に高まるでしょう。優勝への戦力になれば、巨人にとってはいいことづくめです。

 要は中田は、いい意味でも悪い意味でも、ハムには収まらない、コントロールできないスケールを持った選手だった。でも巨人なら、原監督ならそれができるかもしれない。アンチ巨人の私ですが、今度ばかりは「球界の盟主」の太っ腹に感謝したいと思います。

 そして、これが一番肝心ですが、今回の「美談」とも言えるトレードに隠れて、中田という「怪物」を育て放置してしまった日本ハム球団の体質とチーム運営上の大きな問題点、中田を甘やかし増長させた栗山監督の責任が曖昧にされることは決して許されません。今回の問題は単に中田を美談めかして厄介払いしただけで終わりではない。球団社長以下球団フロント、そしてもちろん栗山監督が責任をとって辞職するまでがセットです。もし万が一栗山監督がこのまま監督として留任したり、監督を辞めても球団内に要職として残ったり、あるいは球団フロントが何事もなくこのまま居座るようなら、従来の「誰も責任をとらない」球団体質が温存されるようなら、また第二第三の中田事件が起こるでしょうし、現在のハム球団のどん底の惨状は、あと何年、何十年も続くことになるでしょう。

 ◆巨人の背番号「10」(70年以降)
張本勲(76~79年)

 デーブ大久保のYouTubeによれば、栗山だけでなく稲葉、梨田からも原監督に「中田をなんとか頼む」と連絡があったらしいです。つまりハムの前・現・次期監督が中田のために原監督に頭を下げた。梨田さんなんか、今やハムとは何の関係もないのに。中田は愛されてますねえ。なんとしてもこの恩に報いなきゃいけない。

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