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旅烏

映画というのは旅だよなぁと思う。
色々な地区で上映出来るという意味もあるけれどそれだけじゃなく。
映画館に行って座席に座って映画館を出るまでの旅。
何も起きない映画なんてあるのかな。
ものすごいハイスピードでジェットコースターな作品もあるし。
全編通して観た時にわずかに心境の変化が起きるぐらいのものもある。
夜をトンネルだと言う人がいたけれどどこか似ている。

どこからどこに旅をするのか。
それはたぶん、どの映画でも体感しないとわからない。
あらすじを読んでも実は物語しか理解できない。
それは土産話を聞くようなもので旅の本質ではない。
ああ、こんなとこまで行くのかと感じた時、僕は楽しかったなあと感じることが多いのかもしれない。
ゆったりと鈍行の電車に揺られている気分だったのに、気付けば思ってもいなかったような景色が拡がるような旅。

予定を決めて旅に出る人もいれば、いきあたりばったりの人もいる。
出会いを大事にしている人もいれば、自分自身を見つめ直す人もいる。
はっちゃける人もいれば、恋をする人もいるだろう。
それがどういう旅なのかはその人次第なのかもしれない。
映画館に行けば海外旅行も出来るし、内面の旅も出来る。
旅から旅の旅がらす。寅次郎だ。

例えば。

主人公は海を見ている。
寄せては返す波を見ている。
延々と続く、波の音のリフレイン。
いつかどこかで波の音が違って聴こえてくる。
主人公は海を見ている。
けれど明らかに同じ音であるはずの波の音から受けるイメージが変わる。
主人公は海を見ているようで海を見ていない。
波の音に包まれて自分の内面を見つめている。
だから波の音はBGMから、テーマソングに変わっている。
月が出て、星が出て、夜になって、暗闇の中の波の音が響く。
そして主人公が海を見ることをやめる。

それをもし体験出来たら。
きっとそれは旅なのだと僕は思う。
退屈な映画になるかもしれないけれど。
それを表現できるのであればもう映画なのだと思う。
どこから来て、どこに行くのか。
それだけのことだ。

過去から未来へでも良い。
現代から過去へでも良い。
正義から悪でも良いだろう。
個から社会でも良いのかもしれない。
どこから来て、どこに行くのか。

旅をするのは鑑賞する人だ。
主人公じゃない。
主人公はあくまでも代替えだ。

旅の本質は毒だ。
どんな旅でも危険を伴う冒険なのだから。
薬ではない。
それでも人は旅をするのだと僕は思う。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。