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映画『演者』公開まであと一カ月

明けて本日。映画「演者」公開まで一カ月になった。
実に一歩一歩な道だったけれど。
そうやってあっという間に公開日が来るのだろう。

様々な名作が今も公開されている。
新作ももちろん、海外の作品、ドキュメンタリー、リバイバル。
メジャーと呼ばれる作品、そうじゃない作品。話題作。
たくさんたくさん公開されている。
その中にこの特に名もなき映画が公開される。

誰が「演者」を選ぶんだよ?
そんな悪魔のような声が聞こえてくる。
そうだよなぁなんて納得する。
驚くことに僕は納得してしまうのだ。
事前情報の厚みや宣伝力を思えば納得せざるを得ない。
それなのに、でもさと思っている。

奇跡のようなものかもしれない。
オッズは低いだろう。
それでも不思議な予感がある。
この作品には磁力があるんじゃないかって感じている。

あのさ。
自分は誰にも期待されていないなんて感じることがあるでしょ。
自分はどこか浮いているのかもしれないなんて思うことあるでしょ。
何もなくても、なんだか情けなる日だってあるでしょ。
自分の存在なんかちっぽけだってなる日があるでしょ。
誰にでもあると思う。
そのまま沈む人もいれば、そこから浮上できる人もいる。
一瞬でもなんだか空虚に襲われることってあるよ、そりゃ。
それがない人なんか信じられないんだよ。

わたしってなんなんだろう?

ってさ。そりゃ思っちゃう日だってあるさ。
君は愛されているよとかさ。友達がいるよとかさ。
必ず仲間に会えるんだよとかさ。気楽に行こうとかさ。
そんな安っぽい言葉に癒されちゃったりもするよ。
そのまま神様を信じる人だっているだろうさ。

だから映画館に行って現実から離れるっていうのもいいさ。
それで元気になれるならそれが一番さ。
笑ったり泣いたりしてすっきりするのは最高だもん。
どうしょうもない自己矛盾に押しつぶされる前に映画館に行くべきだ。
でもさ。公開一カ月前の今、謝っちゃえばさ。
僕は誰かが元気になるためになんかこの映画を創っていないよ。
誰かが元気になってくれるかもしれないけれど、誰かに勇気を与えたいなんて上から目線のえらそうなこと、僕は出来ないんだ、きっと。

多分さ、忘れない人がいるんだ。
わたしってなんなんだろう?っていう曖昧な煙の中から。
僕はそんな誰かに、小さいけれど礫を投げようと思った。
それで何が起きるかなんかわからないけどさ。
はじめは小さかった波紋が少しずつ拡がればいいんだ。
だからこの作品の一部に観ている人の心象風景も含めたんだもの。

ポジティブでもネガティブでもない。
そんな風に切り分けられたら苦労しない。
ただ肚の中にある生暖かい沼のようなところ。
そこに礫を投げてみたいだけだ。
そのまま沈んでしまうだけだとしても。

助けてよ。そんな小さな声が街中に溢れていて。
でも助けるわけじゃなくて。
はっきりした答えを出すわけでもなくて。
ただただ。
矛盾した、どろりとした、その塊に触れる。
でも、僕がそうなんだから仕方ない。そうだったんだから。
助けてよと思っていても、誰かの手を借りたかったわけじゃなかった。
答えが欲しいわけでもなかった。
ただ簡単には触れられない、そこに触れて欲しかった。
そういう作品に出会いたかった。

あの頃の僕にとって魅力的なんだよ。
ものすごい磁力。
観なくちゃいけないんじゃないかって思ってしまう。
そういうあれ。
いるはずだろう。あの頃の僕のような誰かが。

一カ月後。
僕はそれを求めた人たちに出逢う。
そんな誰かの、何かに触れられたら。
それだけでいい。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。