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日帰りのチクチク

人生初の手術をした。

ここ数か月。なんか顎の下というか首と顎の接点みたいなところ。
なんだかゴリゴリしたのが出来ていてずっと気になっていた。
鏡で見てもちょうど角度的に確認できない場所で、髭剃りで血を出しちゃったりもして、どうしたもんかなと思っていた。
そしたらそんなのが得意そうな皮膚科を見つけてそのまま飛び込んでみた。

ああ。これは、ああ。院長確認です。
と診断した先生が院長を呼んで、即座に手術決定。
サインペンでぐるりと幹部の縁に線をひいて、ここをレモン型にきりますとのことで。
なるほど!とか言いながら鏡を向けられても見えない。
なんか顎とかで死角になってどうしても見えない。
だったらペンで書く意味があったのか?と思いつつ、なんと当日手術。
そう。日帰り手術が決定したのである。温泉みたいな言い方だ。

手術だから手順はしっかりとしている。
術式説明があって、承認書にサインも書かなくちゃいけない。
採血して感染症の有無もその場で調べていく。
流れ作業のようにベッドに横たわり部分麻酔。
痛みはいっさいないんだけどメスを入れてるのってなんかわかる。
なんか最後、ぐって引っ張って取っていた。
麻酔が効いてても肉が引っぱられるからわかるというね。
もちろんなんかシートをかけているから一切見えないんだけど。

皮膚繊維種という良性の腫瘍らしい。
正確なのは摘出したものの一部を病理検査して調べるんだって。
まぁ、いぼをとるような感じだった。
始まっちゃえば一瞬で終わった。
ただ根が深いから、内部も縫って、最後に皮膚も縫った。
だから来週は抜糸に行かなくちゃいけないらしい。
伝票には、しっかりと摘出手術との記載。

薬を塗ってガーゼをあててテープで止めるんだけど。
髭の生える場所だからテープがとれちゃう鴨とか言い出して。
なんか、すっげぇ長いテープで首に固定された。
トイレの鏡で見たら、まるで喉首を掻っ切ったみたいな感じになってた。

すぐにでもガーゼを外して触りたいけど我慢しておる。
テープが引き攣れて、なんかちょっと気持ち悪いし。
でも触っちゃダメよと自分に言い聞かせる。

帰り道。ふと下を見るとクワガタがいた。
おお!こいつはコクワだな。
ミヤマが良かったなーとか思いつつ手の平に乗せる。
右手から左手。左手から右手とコクワが歩き続ける。
手乗りクワガタをしながら、木が多い場所まで歩く。
樹液が出そうな木にそっとクワガタを移してやる。
んん?
いや、おい、5月だぞ!!5月なのに成虫になっちゃってんぞ!
間違えちゃったかぁ。そうだよなぁ。暑いもんなぁ。
生きていけるといいのだけれど。
最後に少し頭を撫でたら、なんかこっちを向いた。
礼ならいらんよ。

恐らく部分麻酔が切れてきている。
すこしチクチクする。
凄い痛いわけでもない。
なんか、思ったよりも血は出たらしいけれども。
消毒もしているし抗生物質も飲んでいるので問題なし。
どうなんてんのかなー。患部。
鏡でも見えないんだろうけれどなー。
縫ったところか見たいんだけどなー。

手の平に残るクワガタの足の爪が刺さったチクチク。
初の摘出手術の縫い後から鼓動と同じリズムのチクチク。
時計の針がチクタク。

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