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VS ねっとり

目薬を差すのが苦手な人っていますよね。僕は意外にもすごい得意で絶対にまばたきなんかせずに点眼できる人だと自信があったわけです。ところが今回、処方してもらったドライアイの点眼薬。こいつが中々の曲者でして、まぁ外してはいないんですけれども、目が乾かないようにする成分らしいのですけれども粘りがあるのですよ。そうするとね。容器を指で押してもポタッってすぐに落ちてこない。体感で3テンポぐらい遅れてニョロリと落ちてくるわけです。それをずっと目を開けて待つという。中々、スリリングな攻防を毎日続けています。いや、毎日3回続けております。

あのさ。うんとさ。
SNSなんかをみていて思うのですけれども。
色々なことがあるじゃないですか。色々な意見もある。立場もある。思想もあるし、対立もある。
それですごく闘っている人たちがいるわけです。
それは偉いなぁと思うし、すごいなぁって思うのだけれど、時々鼻につくやつが混ざってくるの。
俺たちはこんなに戦ってるんだぞ的なやつね。
それは、お前、違うぞっていつも思うんだよ。

だってさ。皆、なんにもなく平気な顔して生きているように見えるかもしれないけれどさ、それぞれが闘っているよ。ほんとうに。それを忘れて自分たちだけが闘っているような顔をしちゃうのって恥ずかしいじゃんって。
仕事で闘い、人間関係で闘い、おかしな不条理と闘い、自分の良心と闘い、病気と闘い、社会常識や倫理と闘い、皆がそれぞれに闘っている。
平気な顔をしているかもしれないけれど歯を食いしばっているよ。
うん、そんな対立のようなもの、喧騒のようなものから離れたいと、そこに人間的なものはないと距離を置く人だっているかもしれない。
でもどうかな。心の中では色々なことと闘っているんじゃないかな。
後悔や、愛情や、寂しさや、貧しさや、プライドや色々なこと。どこかで満たされるようにバランスはとっていたとしてもさ。

自分だけが闘っていると思ってしまう人ってなんなのよ。
被害者意識みたいなやつなのかな。
共感するまでは心を許さない的なことなのかな。
わからないけどさ。すごく苦手。いやだ。ごめんなさい。
真剣なだけなのかもなって思うこともあるんだけどね。

でもそのね。お前、どこで闘ってんだよ!みたいにさ。思うこともある。
どこで誰と闘ってんだよ、意味あるのかよってさ。
でもそこが人間の滑稽な面白い所というかさ。
自分ルールを徹底しちゃうみたいな人とかに共通してるんだけれども。
そういう闘いにどこか共感してしまう自分が存在している。実は。
これはなんなのだろう。

自由人の代表のような、フーテンの寅だってさ。
あれ、見方によってはすごい闘っているなぁって思うわけです。
ひとっところに留まらないなんてさ。旅から旅の旅がらすだもんね。
女性との接し方だってさ、自分の欲望と闘い続けるでしょ。相手が幸せかどうか、自分みたいなやつがマドンナの人生を変えてはいけないとかさ。
自由なんだよ、人からみたら。
でもずっとずっと自分と闘っている。
だから、男はつらいよなわけでさ。
そんな事に拘らなくていいのに、どこで闘ってんだよ!ってツッコミを入れたくなるんだけど、やっぱそんなことが好きだったりするんだよ。

社会、文化、経済、思想、政治、宗教。
そういうことで闘うことは高尚なのかもしれない。うん。
尊敬している人もたくさんいる。
でも、尊敬している人たちは皆、自分の生活から声を出していると感じる。
自分自身の生き方としての闘いの延長線上にあるんだって感じる。
そうじゃないとうわべになっちゃうってことなのかな。
わからないけれど、でもやっぱだからこそ、誰もが闘っているんだっていう原則からは離れていない人たちを僕は尊敬しているようだ。

そして、ほんとうに強い人ってさ。
そういう闘いに勝ち続ける人だよ。
強い言葉を出したり、腕力が強い人じゃない。
日々の闘いに負けない人たちだ。

僕はだからとっても弱いよ。
精々、点眼薬と闘っているぐらいなんだもの。
ねっとりと闘っているぐらいなんだもの。

うそ。もうちっとだけ闘ってる。ちっとだけね。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)16日(日)
シアターセブン(大阪・十三)

2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。