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連載「record album」⑧

 届いた遺品の段ボール箱には立派なアルバムが何冊も入っていた。遺品整理をしていても写真だけは捨てる事が出来なかったのかもしれない。今は写真はデータで半永久的にネット上に保存されているけれどそんな時代がやってくるなんてわからなかった頃は、アルバムのポケットにネガを保存して、紙焼きした写真を一枚一枚台紙と透明フィルムの間に並べていった。おじいちゃんはちゃんと写真一枚一枚にメモを書いて、何年と書かれていたり、どこそこにてと書かれていたりしていた。写真だけじゃなくてチケットや観光地のパンフレットなども一緒に挟んであった。写真は大事なものだったからアルバムも豪勢で百科事典のような分厚い表紙に更に厚めのビニールのカヴァーがついていて、それぞれのページもしっかりとした台紙で出来ていた。一番古そうなアルバムは麻を編んだしっかりとした表紙で時代感があった。豪勢なものだからデザインで古い新しいがなんとなくわかった。

 仕舞う前に目を通そうと古そうなアルバムから開いていった。一番古そうなアルバムを開くとパラパラとカードのようなものが落ちてきた。おじいちゃんが軍時代に描いて実際に配布されていたイラストカードだった。戦闘機や兵隊さんが描かれている。台紙に挟んでいたはずだけれど糊が弱くなっていたのかもしれない。美術的な絵というよりも今でいう漫画タッチのイラストだった。子供たちが手にしたと聞いたことがあるからあえてそんなタッチで描いているのかもしれないけれど、おじいちゃんはそんなタッチの絵が得意だったんだろうなぁと思う。子供の頃に自分の絵を描いてもらった時もかわいらしい絵だったから。

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