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ちゃんと寂しがっているだけ

満月の日。
終映していくつかやり残したことに手を付け始めている。
なんとなくここからのイメージが浮かんでくる。

映画の上映をして、舞台挨拶でステージに立つと。
ああ、舞台をやりたいなぁと思ったりする。
皆はどうなのかな。そんなこと考えたりするのかな。
次のことを考えようとするとリスクも考えなくちゃいけない。
自分が納得いく舞台をするのは難しいかもなぁとか。
映像企画のほうがきっとやりやすいけれど、まったく違った形だろうなぁとか。
けれど、その辺はまだまだじっくり検討しないとだ。
まずはやるべきことを一つずつやっていく。
その向こうにしか景色は拡がらないだろう。

ユーロスペースでもたくさんの方に出会った。
日々の集計を見るとやっぱり当日券が後半に向けてどんどん伸びてた。
間違いなく口コミが拡がっていたんだなと数字でもわかった。
またどこかで!なんて言いながら。
さあ、どこでどうやって会えるだろうか?なんて考える。

昔から僕を知っているお客様にはこの先の予定は?
止まったら死にますよ?
なんて言われる。
あいつ回遊魚だから止まったら死ぬからって一時期言われていてさ。
舞台の千秋楽の次の日からなんかやりはじめていたりしたからさ。
わはははははは。
でもさ、きっとそんなの僕だけじゃないよねぇ。
皆さ、同じような部分はあると思うのだ。

生き甲斐っていうのかな。
そりゃなんでもいいと思う。
それこそ子供の成長を見守るとかさ。
趣味の釣りとか、料理にこだわるとか、キャンプとかさ。
中には貯金だとかさ、証券取引とかさ。仕事の人もいるしさ。
誰だってガキの頃に一度ぐらい考えるやつ。
なんのために生きているんだ?ってやつをさ。
大人になって皆、なんとなく見つけていくんだと思うの。
それはきっとないと足元から崩れちゃうんだよ、きっと。
生きていることの喜びを実感しなくちゃさ、つまんねーもん。

僕はほんとう、何をやっても生きているような気がしなかった。
釣りなんか退屈だしさ、ゲームも飽きちゃうし、なんか上手だねって褒められるようなこともあったけど、本気になれなかった。
面白いんだけど、のめりこめない。
なんだろう、痛みみたいなものがなかった。
負けて悔しいとかさ、出来ない自分に腹立ったり、情けなくて傷ついたり。
そういう痛みがどこかにないと、僕はのめり込めない人だった。
時間は潰せたさ、本を読んだり、麻雀したりさ。でも本気じゃない。
だから芝居に出会ってさ、そこから役者だけじゃなくて演出とかバンドとか映画とかどんどん面白いことに進んでいけたことは幸せだったと思う。
出会えたんだよ、僕は。
僕がのめり込めるものに。
痛くて、表面でとりつくろってちゃ届かないものに。

そしてそれは大なり小なり。
僕の周りにいる皆にもあるんだろうなぁって。
それでも僕は編集したりさ、配給したりさ、動き続けているから。
皆は生活をしなくちゃいけないわけで。
その中で、あの日々よりも楽しい何かを見つけたり出来たのかな。
だとしたらちょっと羨ましいけれど。
もしかしたら生活の中に埋もれて探し続けているかもなとか。
わかんないんだけどさ。
でも舞台挨拶で誰に逢ってもやっぱり笑ってる僕がいて。
皆とステージで話をすることが楽しかった。

でもそれは僕たち側の話でさ。うん。
そういう何かを表現できることは目の前にいるお客様がいるからで。
昔から応援してくださる方も、今回知っていただいた方も全員。
今回もなんだかたくさん色々なものをいただいたなぁって思う程に。
何か面白いことを届けなくちゃいかんよなぁと思ったりもするしさ。
面白くならなかったらごめんなさいだけどさ。

なんかさ。
終映後にやるべきことをやっていると。
すべてが終わりに向かっているような気がして寂しくなるのよ。
いやいやいやって何度も自分に言い聞かせて。
まぢな話、上映が終わったら小野寺さんが消えてしまいそうだと思ってる人とかもいたんだ。
まぁ、率直にそのケがあるタイプに見えるのかもだけれども。
ある日ふと蒸発とかしそうなのかな。寅さんぽくていいけど。
いや、僕はもうちょっとアレな人ですぜと思いつつ。
でも寂しくなるっていうのが共感できるっていう意味なのかもな。
まぁ、上映がここから続くってのも模索しているんだけれども。
しっかり寂しがるからそういう部分は見えにくいのかもな。

面白そうなことをさ。
いち早く模索し始めたいじゃない。
だから、やるべきことを少しずつでも進めていくよ。
誰か新しい仲間とか、そういう展開がその間に起きたりするとインだけどなー。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【次回上映館】
未定

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映◆
・2023年11月18日(土)~24日(金)
ユーロスペース(東京・渋谷)

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。