一歩

明けて7月28日。
名古屋シネマテークの最終営業日だ。
閉館を発表してから連日行列ができると耳にした。
たくさんの人が想いをつづっている。
SNSなんてほんの一部だよなぁと改めて思う。
きっともっとたくさんの人が足を運んでいるんだろう。

映画「演者」が最後に上映されたスクリーンだ。
(いまのところ)
初日舞台挨拶の前に支配人の永吉さんと話したこと。
それは未来のこと。
閉館だとか最後のだとかは似つかわしくない未来。
僕はあの時話した未来に進む日にしよう。
未来こそがメッセージだ。

高校生の頃、新宿で映画を観て友達とすぐに帰りたくなくて住友ビルの展望台にあがって夜景をみた。眼下に広がった未来都市。
晴海に出かけた帰りに歩いていてふと周りを見回したとき、整然としたビルと立体交差の道路をみた。ドラえもんの21世紀のようだった。
テレビを付ければ戦車が行進して、ミサイルが空を飛ぶ。
あの緊急事態宣言の頃、どうしても外せない用事で原宿まで行ったら、誰もいない竹下通りをみて信じられなかった。幽霊都市のようだった。
こんなはずじゃなかった。
僕はフィクションの中で生きているような感覚がある。
リアルって何だよ。
思い出の方がリアルなことがあるのはなんなのだよ。

フィクションのような嘘みたいな世界だけれど。
確かな感触がここに残っている。
この熾火を種火にして、ほんとうに向かって足を踏み出す。

足を踏み出せばいつだってそこは未来だからだ。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)16日(日)
シアターセブン(大阪・十三)

2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。