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オンラインフリースクールは、どこまで居場所になれるのか?

フリースクール「福井スコーレ」は、この1年オンラインはどこまで居場所になれるのかを探究してきました。その結果、非常に可能性を感じる部分と、課題だと感じる部分が両方ありました。そのことを、皆さんと共有したいと思います。少しでも参考になれば幸いです。

では、イメージしやすいように、オンラインで具体的にどんな活動をしてきたのかを振り返ります。

●地球は本当に丸いのか?

地球は本当に丸いのでしょうか?そのことを知らない人がいたら、どうやって説明するでしょうか?

地球が丸いことへの懐疑を紹介し、どうしたら丸いと証明できるかを子どもたちと考えました。

そして「実際に地球の半径を測ってみよう!」ということで、子ども一人ひとりが太陽の下で棒を立てて影の長さを測り、オンラインで持ち寄って計算しました。

その結果・・・誤差3%!みんな想像以上に精度が高くて驚きました。三角比を習っていない子どももいましたが、シンプルに説明すると計算できました。

これは、紀元前にアレクサンドリアの図書館長だったエラトステネスが考案した方法です。

当たり前とされている知識の根拠を考え直し、発見を追体験をする。そこには、科学の興奮と面白さが満ちています。

地球は本当に丸いのか

●弱さを持ったまま生きていこう

子どもから見て大人って、「すごい」存在に見えます。実際はそうではなく、数々の欠点を抱えています。

なので、大人が弱さを抱えたままどう生きてきたのか(生きているのか)を共有し、弱さについて考えていく。そういう企画をしています。

「しくじり先生」と銘打って、私やスタッフが過去の失敗談を赤裸々に語りました。今になってみると笑える失敗談が満載で、発表しながら私も子どももよく笑っていました。

私達はみんな弱いけれど、世界は面白い。そんな手触りを共有したいのです。

幼少期

●答えのない問いを追求しよう

哲学的な、答えのない問いを本気で考えてみること。子どもたちに最も人気の企画です。

あなたの心はあなたのもの?多数決ってどう思う?公園は誰のもの?

できるだけ概念を吟味しながら、一歩一歩話し合いを進めていきます。

例えば、「心」という言葉が出てきたら、「それってどういうイメージ?」と聞きます。すると、一人ひとりイメージが違うのです!「感情」に近いイメージの子もいれば、「理性」に近いイメージの子もいます。

毎回盛り上がって時間が足りなくなります。最短経路で答えを目指すのではなく、立ち止まって自分の内側に問いかける。そういう時間です。

●お金はなぜあるのか?

お金って不思議です。とても身近なはずなのに、改めて考えてみることはあまりありません。

お金はなぜあるのでしょうか?なかったらどうなるのでしょうか?なかった時はどうしていたのでしょうか?

哲学的な問いのようですが、ものすごく具体的な問いでもありますよね。子どもたちも興味津々で話し合っていました。

さらに、より深くお金の動きを理解するために、会計(損益計算書、貸借対照表)を学びました。

任天堂やソニー、その他のゲーム会社を題材にすると、数字の羅列に一気に色が付きます。「こんなに現金持ってるの!?」「この時に株価が下がったのは、あのゲームが売れなかったからじゃない?」。

そして、ある子どもが実際に株を買いました。少額ですが、株主です。そうすると市場や会社のニュースが急に自分事になり、話題にも出るようになります。経済について考え、親しむ機会を作る取り組みです。

会計

●場所を超えて遊ぼう

子どもたちは遊びで仲良くなり、活発にコミュニケーションを取ります。そしてオンラインでも遊べることはたくさんあります。

現代のデジタルゲームはオンラインが活発です。マイクラ、フォートナイト、スマブラ、ポケモン、どうぶつの森など。ボードゲームをデジタル化しているサイトもあります。

そしてコミュニケーション系の遊びは、昔も今も盛り上がります。人狼、ワードウルフ、フラッシュ、インサイダー。

そして遊んだ後に振り返りをして、議論の題材にもしています。オンラインボードゲームをして振り返りをする企画では、毎回夢中になって議論をしていました。論理的に分析し、誰かに伝える。その題材は遊びでもいいのです。

また、遊びをプロジェクト化することもあります。他県のフリースクールとの交流に向けて、マイクラで迷路作りのプロジェクトをしました。文化祭みたいな雰囲気で、話し合い、協力して世界を作っていました。

オンラインの遊びには、まだまだ可能性があります。

オンラインボードゲーム

●その他にした活動の抜粋
・元素借り物競争
・海の色はなぜ様々なのか?
・ゼロの発明
・感染症の歴史
・ジェンダーについて
・インターネットの仕組み
・フェイクニュースを見抜くには?
・どうして和食の食材は豊富なのか?
・こども六法
・英語のニュース
・好きな本を紹介し合う

●オンラインの可能性と課題は何か?

以上のように、オンラインでも豊かな活動ができると実感しています。地域に関係なく参加でき、フリースクール側としても負担が少ないです。ここには非常に大きな可能性を感じます。

一方、オンラインに感じる課題もあります。

1つは、ものづくりや体を動かす活動がしにくいので、どうしても知識系の企画が多くなるということです。誰もが参加しやすい場作りには限界を感じます。さらに、居場所として機能させるには、高い専門性が求められる印象です。

もう1つは、自分の姿や部屋が画面に映ることへの抵抗です。自分の姿を自分から見えないようにしたり、自分の部屋を背景で見えないようにすることもできるのですが、それでも苦手意識を感じるようです。安心できる関係性を作って、少しでも抵抗を緩和する必要性を感じます。

●オンラインの魅力

1年と少しオンラインで子どもたちと活動してきて、私はその面白さに魅了されています。ここまで豊かな活動ができるとは想像していませんでした。課題もありますが、それ以上に可能性を感じます。

これからさらに地域を超えて、子どもたちと共に学び、共に社会を作っていきたいと思います。

オンライン

●補足「スコーレ」とは何か?

スコーレとは、古代ギリシア語で余暇という意味から始まり、遊びや学びという意味になりました。余剰の時間が、学びをもたらしたのです。今日のschool(学校)の語源です。そして、学びと参加を通じて、古代アテネは史上稀に見る民主政を生み出しました。

福井スコーレは、余剰の時間を使って共に学び、共に社会を作っていくというイメージで活動しています。

活動は小さくてささやかですが、こだわりを持って居場所作りをしています。

●小野寺玲

中学で不登校を経験。フリースクール福井スコーレ代表。多様な子どもたちが共に育てる社会を作りたい。講演や研修、居場所作りのサポートもしています。

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