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20年連続成長のスノーピーク 成長の裏には自らもユーザーになる目線にあり?

みなさん、キャンプに最後に行ったのはいつですか?

僕自身は毎年キャンプに行くようにしているのですが、キャンプに行った時の開放感や日常から離れた非日常体験はとても気持ちがよいものですよね。

そんなキャンプの力を信じ、こだわりのキャンプ道具を製造し、販売しているのがアウトドア総合メーカーの「スノーピーク」です。

スノーピークは、高単価な商品にも関わらず、熱狂的なファンからキャンプ初心者の心を掴み、売上を順調に伸ばしてきております。

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コロナ渦中にも関わらず、売上を伸ばしているスノーピークの成長の背景を分析していきたいとおもいます。

スノーピークとは?

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スノーピークの基本概要を整理すると、

・会社名: スノーピーク
・会長:山井 太
・代表取締役社長:山井 梨沙
・設立:1958年
・全体売上:167億6400万円(2020年期)
・ビジョン:人生に野遊びを。
・ミッション:人と自然、そして人と人をつなげることで人間性を回復する
・バリュー:The Snow Peak Way
・事業内容:キャンプ、アパレル、レストランなどの「衣食住働遊」事業
・インスタグラムフォロワー:31.2万人

と、長年会社を率いていてた山井太さんが代表から退いて、長女の山井 梨沙さんが現在の代表取締役となっております。

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製品自体は高価格なものの、ユーザーにニーズにマッチしたかつ市場にない独自性や唯一性のある商品のため、購入につながっています。

スノーピークがメインとしているキャンプ事業の事業状況としては、年々成長傾向にあります。

あマーケティングトレースワークシート_snowpeak

最近では、一人でキャンプを楽しむ「ソロキャンプ」も流行しており、Youtubeを始めとするSNSでソロキャンプのライフスタイルが投稿されています。

スノーピークはもはやキャンプ用品だけじゃない

スノーピークときくと、キャンプ用品を製造して販売しているイメージが強い人もいると思います。

じつは現在スノーピークはアウトドアだけではなく幅広い事業を取り扱っています。

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キャンプから事業を拡大した背景には、理念に掲げている「人生に野遊びを。」をより多くの人により多様な体験をしてもらいたい想いがあるためです。

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国内だけではなく、海外でも事業を展開しており、より多くの人に野遊びを届ける仕掛けをしています。台湾や韓国にスノーピーク流のキャンプを輸出しており、これからは米国市場を攻めていく計画です。

組織の基本軸は徹底的な顧客目線にたったプロダクト開発

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スノーピークの開発の基本姿勢は、徹底的な顧客目線に立つことです。特徴的なポイントは以下になります。

①社員や社長も含めアウトドア好きが多く、元代表(現会長)の 山井太さんは年間30~60回キャンプに行くほど、キャンプが好き。そのため、製品開発は、「自らもユーザーであるという立場で考える」姿勢で開発する。
②製造の大部分を外部(燕三条)にアウトソースし、自社では開発にリソースを集中
開発後は実際に自分で利用してみて、製品試験を繰り返し行う
企画からデザイン製造連携までを一人のデザイナーで担当
⑤保証書の概念がなく、永久保証で何度も修理して使える
⑥「Snow Peak Way」という顧客と実際にキャンプをしに行くイベントを毎年実施。毎回5千人ほど参加し、代表含め顧客と対話し製品のフィードバックをもらう
⑦1.3万人が参加しているSNSコミュニティがあり、ユーザー間の質問や商品エピソード紹介などが飛び交う

①に関しては、新製品評価会議で重視されているのが、「あなたはその商品自腹でも買いますか?」ということ。これにイエスと答えられない商品では、売れないという判断がされます。

また、元代表の 山井太さんはインタビューの中で、キャンプ好きの自分たちが本当に必要だと思う製品しか作らないという話をしています。

「他社の製品が いくらで売っているかはチェックしているが、安い製品には それだけの価値しかないと確信している。だいたい私はそんな製品をほしくないしダメな製品を作ったらスノーピークではなくなる。
—  スノーピークCEO 山井 太

そのため、市場的にはキャンプファンのニッチな製品過ぎて、販売した当初は売れないという性質があるそうです。通常、こういった製品は在庫が余るため、販売をやめてしまいます。しかし、スノーピーク商品は、販売から3~4年後に市場が追いついてくると、売れ始めるため、特に在庫処分などはしていません
これができるのは、焚き火台といったロングセラー商品が多数あるため、無理に新製品を売る必要がないからです。

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また、スノーピークは既存の顧客を重視しています。⑤のような永久補償制度により購入後のサポートを行ったり、⑥のSnow Peak Wayというイベントでユーザーから意見を聞く場を通して「B with C」型のビジネスを目指しています。

そんな顧客を重視するスノーピークには会員制度というものがあり、スノーピークでの購入金額によって、ランクが上がる仕組みになっています。会員数は、右肩上がりで順調に伸びています。

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会員の中でも上位ランクの会員は売上の大きい部分を締めており、ファンマーケティングがうまく機能している様子が読み取れます。

マーケティングトレースワークシート_snowpeak

この会員制度の土台にある考え方は、

ユーザーのキャンプ歴が上がればあがるほど、キャンプの楽しみ方が変わるので、キャンプレベルに伴って会員ランクが上がるように設計

です。

ランクによって、リアルイベントのアクティビティがグレードアップもしていくので、顧客目線で考えられた会員制度ですね。

広告を出さないマーケティング論

ではスノーピークでは、顧客をどのように獲得していったのでしょうか。特徴を洗い出すと、

①問屋を介さない流通戦略により顧客の不満を満足へ転換
②広告を出さない代わりにユーザーにコミットをし、イベント運営を注力
③UGC創出の仕組み

です。

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①に関しては、元々スノーピーク製品を問屋を通して小売店に卸していたところ、顧客から「品質はいいが、価格が高過ぎる」「店頭の品ぞろえが悪い」。という不満がありました。また、製品コンセプト自体はハイエンドなイメージを打ち出したい一方で、ブランドイメージとはかけ離れている店舗に製品が置かれてしまっているという問題がありました。

そこで、スノーピークが取った方針が「問屋を通さず品数を多くおける店舗のみとの特約店舗のみに集中する」というものでした。これにより、製品を扱う小売店は2000から400までの1/4に減少。小売店を減らした代わりに店頭販売を強化して、専門的な説明ができるスタッフを配置するように変更しました。また、問屋を介さず直接小売店と取引をすることによって店頭価格を約30%引き下げることに成功しました。

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②では、スノーピークは、基本的に広告を出さずに集客をしています。(海外事業では広告を実施)

広告を出稿しない背景には、商品そのものや発信する情報などがユーザーにとって魅力的で感情を動かすような強いコンテンツであることはもちろんですが、広告で新規顧客を獲得するよりも既存顧客に集中投資するという戦略がありました。

2000年代より専門誌にかけているコストをコミュニティイベントの運営に回しました。これは、既存ユーザーのLTVを向上させる狙いもありましたが、Snow Peak Wayイベント自体が世間的に有名になり、”キャンプ好き”という広いコミュニティの獲得も背景にありました。

その結果、最初は数十人だった参加者が現在では、全国で年間5000人を超える規模となっているそうです。

また、リアルな場でのイベントでユーザー同士がつながるからこそ、オンラインのコミュニティが盛り上がります。ユーザー同士がコミュニケーションしていくことで更に熱狂的なファンを生み出すという仕組みになってます。(しかも、当日会場での製品の販売は行わず、あくまでユーザーとの接点の場として活用

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③そして、UGCの創出に関しても力を入れています。データによると、売上の2割がUGC経由であり、UGCコンテンツに接触したユーザーのコンバージョン率は270%高いという結果です。施策としては、

①購入から10時間後に商品レビュー依頼メールくを送り、熱が冷めないうちに回答を促す(回答率は3%強)
②レビュでは、属性情報も確認する(キャンプ歴や利用シーンなどのユーザー属性を明確にし、新規ユーザーの購入材料にする)
③Instgramにユーザーが投稿した写真をECに盛り込みコンテンツ化
④サイト上のユーザーレビューは、評価やキャンプ歴、利用シーンなどでフィルタリング可能

これらの施策の結果、レビュー投稿数は競合他社と比較し10倍以上にもあるとか。担当者の方いわく、UGCは製品の利用イメージをうまく伝えられとのことです。

一方的な販促施策とは違い、当社の商品を使うことでどのような体験ができて、生活がどのように変わるのかを自然にユーザーに伝えられるのがUGCの良いところ「熱烈ファンが集まるスノーピークに学ぶ、EC売上拡大の秘訣とUGC活用法」)。


衣食住働遊すべてのライフスタイルに関わるブランドへ

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最初にも説明した通り、スノーピークはもはやキャンプ用品だけを扱う企業ではなく、キャンプの価値をベースに衣食住働遊すべてのライフ体験の提供を目指すブランドです。製品を提供するだけではなく、その製品を通した体験価値の提供を目指しています。

そのため、グランピングやキャンプ施設などの事業を進めています。

実際にこれらの体験価値の提供は売上にも貢献しているようです。

・スノーピークの商品を買った人の購入単価と、実際にスノーピークが運営するキャンプ場に来た人の購入単価は4~5倍は異なる
・スノーピークが運営するキャンプイベントやツアーに参加してくれた人の購入単価は、さらに8~9倍になる
「スノーピークが新潟に巨大テーマパーク構想 モノづくりの先へ」

体験価値の提供を目指すスノーピークの背景には、代表の山井梨沙さんがもつ「売上=ライフバリューを提供できた対価」という考え方があります。

ブランドの意義としても、ライフバリューを提供できた対価こそが真の売り上げだと思います。売り上げだけを追い求めるシステムではなく、売り上げができた先にあるライフバリューもしっかりと向上できているか、この2軸を測れる仕組みは必要です

これまでキャンプの価値に向き合い続けてきたスノーピークが提供するライフバリューに共感したユーザーが更にスノーピークのファンになり、エンゲージメントしていく流れができていますね。

また、新規顧客獲得の観点では、キャンプ愛好家は日本国民の6 %程度といわれており、スノーピークが成長するには、残りの94 %にスノーピークブランドの認知度を高め、購入へと導くことが欠かせません。

アパレルやグランピング、レストランなどの事業は、残りの96%にキャンプの価値を伝える入り口としても機能しそうです。


もしもCMO仮説

もしもCMOだった場合、スノーピークをより成長させる仮説を考えてみました。

■オンライン販売を直営ECサイトと特約店のみに絞る

Amazonや楽天などのECサイトでの販売をやめ、自社ECサイトまたは特約店のみのでの製品販売に絞ることで、ユーザー体験の向上や利益率向上を目指すという施策です。

直営に絞ることで、

①購入を検討するユーザーがスノーピークサイトのレビューを確認する確率が上がる
②消費者の購入データを集めやすくなり、製品の開発にも活かしやすく成る
③オペレーションや物流経路がよりシンプルになり、利益率の向上を狙える
④Snow Peak会員への転換漏れも避けられる

といったメリットがあるかと。スノーピークほどの強いブランドだと、ユーザーの投稿でスノーピークを知って、指名検索でECサイトに流入する流れがあると思うので、最終的に自社サイトに流入した際にスノーピーク商品を正しく知ってもらうことを狙えるかと。

まとめ

今回のスノーピーク分析で学んだことは、

①世の中にないプロダクト開発やアプローチをするために競合は見ずに、自分たちのユーザー目線を信じて製品を開発する
②プロダクトの質にこだわり、自分たちが本当に買いたいものを作ることにこだわる
③製品の差別化ができている場合、広告よりも顧客に投資する(目標とする成長スピードにもよるが)

などです。


製品作り、イベント、販売などにスノーピークとしてのユーザーに対して真摯的であろうとする姿勢が見て取れました。
(スノーピークの考えるキャンプが気になったので今年は、スノーピークでキャンプに挑戦したいなと思いました笑)

今年もSnow Peak Wayはやるみたいなので気になった方はぜひ御覧ください~w







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