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背中の話

 大学生頃からずっと背中の違和感を抱えている。痛いとか痒いとかでなく、何かこう、背骨が詰まっているような感覚だ。指とか首なら曲げたり伸ばしたりしてポキポキパキパキ鳴らすとスッキリする(このポキパキ、実は体に良くないらしい。特に首のポキパキは危険らしい)ことも多いが、背中はそうもいかない。
 身長8メートルくらいの鬼に頼んで私の肩辺りと腰辺りを持ってもらい、一息に背中をパキッと(背骨が折れない程度に)曲げてもらえたり、ぐいっと引っ張って伸ばしてもらえたりすれば治る気がしてならないのだが、残念ながらこの世に「リアル鬼」はいない。だから治らない。比喩的な鬼ならそこそこいるのだが。
 いつまでもいない鬼を頼ってもいられないので、先日整体に行った。鬼と違って、整体師は「いる」。何と頼り甲斐のある存在だ。それに比べて何だ鬼は。いないって何だ。頼る頼れない以前の問題だ。勘弁してほしい。頑張れ、鬼。
 施術が始まった。初めて行くところだったので勝手が分からずただただ流れに身を任せていると、電流が流された。強い。身体が勝手にビクビクする。いやビックビックする。「痛くないですか?」と整体師が聞いてくる。痛くはないので「痛くないです」と答える。痛くはないが身体がビックゥビックゥする。「こんなんあと5分続いたら俺、帯電してでんきタイプになるな、じめんタイプと相性悪くなっちゃうな」と思っていると電流が止まった。
 そのあとは普通にマッサージを受け、普通に治療をしてもらったが、特に違和感は取れなかった。一回や二回で治るとは思っていなかったが、思っていたよりも治らなかった。完全に治すなら十回以上は行かなくてはなるまい。行くたびにあの電流を浴びたらいつか本当にでんきタイプになってしまう。そんなことも危惧していたが、結局三回くらい通ったところで、仕事が忙しくなってしまい、通う時間もなくなってしまったのでそれっきり行かなくなってしまった。
 お陰で今も私はじめんタイプに怯えることなく、毎日を(背中以外は)健やかに過ごせている。先程「いない」と述べてしまったがやはり私を助けられるのは身長8メートル以上の鬼しかいないだろう。鬼さん、もしくは身長8メートル以上の整体師さん。これ読んでたら連絡ください。そして私の背中、治してください。

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