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DMM TV オリジナル『大脱出2』感想

配信作品のシーズン2は、前作を超えることができずに微妙な感じで終わるのが通例だと思っていたら、驚いた。

何故なら、前作に比べて遥かにパワーアップしており、めちゃくちゃ面白くなっていたから。
まだ上半期なのに、今年の配信作品の中でNo.1の面白さと言っても過言じゃないかもしれない。それくらい面白かった。

個人的に良かった点は、シーズン1に微妙だと思った点が、全部解消されていたこと。

シーズン1で微妙だなと思った点が、各部屋の難易度のバランスと、謎解きやシナリオがスッキリ終わらないモヤモヤ感と、ラストの演出の3点だった。以下、それぞれについて触れていきたい。

①難易度のバランス

まず、難易度のバランスに関して、今回は完璧だったように思う。

前作を視聴した感想としては、それぞれを部屋に閉じ込め、出た後に全員合流させるというシナリオ上、難易度がある程度揃っていないといけないため、その調整が作品の肝だと感じた。

前作では、第1回目と言うこともあり、難易度にかなりばらつきがある印象だった。

特にトムブラウンの閉じ込められた部屋が、調整に苦労している感じが出ていた気がする。

理由としては、お菓子の部屋に閉じ込められるという絵面の華やかさに比べ、脱出方法が「お菓子の部屋を食い破るのみ」という絵変わりのなさが、演者も演出もしんどそうに見えたから。

そして、食い破った後、ログハウスからも出なければならない仕掛けに関しても、難易度を合わせるための苦肉の策のような感じがして、うまく機能していなかったように感じた。

今回も最初、みちおは「サイコロを全て1に揃えるだけ」という、精神実験のような鬼畜脱出に閉じ込められており、また絵変わりのないしんどい部屋に閉じ込められてるな〜と思った。

しかし、その部屋から脱出する方法が1番劇的であり、謎解き展開のピークのような仕掛けだったので、良い意味で裏切られて、めちゃくちゃワクワクさせられた。

更に、最後の最後に全員で力を合わせて脱出するためには、この部屋に閉じ込められていたみちおと酒井の力が必要不可欠であり、部屋の中で脱出に向けて工夫のしようが無かった2人が活躍できるポイントがちゃんと用意されてたのが、シナリオとしてめちゃくちゃ美しくて、感動すら覚えた。

そして反対に、前作で1番バラエティ的に美味しくて難易度も低かったのが、みなみかわとしんいちが閉じ込められていた「クイズに答えないと出られない部屋」だったと思う。

なぜなら、電話で外部に助けを求められるという仕掛けの特性上、必然的に展開が多くなってバラエティ的に絵が持つ上に、肝心のクイズは人間1人が通れる分だけ穴を開ければ良く、全部解く必要がないという仕様だったから。

今作ではその部屋にさらばが閉じ込められており、「絶対面白いに違いない」という確信があった。そしてその確信と同時に、コンビでこういう過酷なロケに出るなんて、今となっては珍しいなと思っていた。

しかし、視聴し終わった感想としては、今回この部屋に閉じ込める役は、さらばの2人以外ありえないと感じた。

何故なら、さらばの2人が今回の「大脱出2」の主人公を担ってくれていたから。

今回の大脱出2は、さらば2人の視点が軸となっており、彼らが閉じ込められている全員を救い出しながら皆を引き連れて脱出するというシナリオになっていた。この彼らを主人公にする工夫が、めちゃくちゃ見やすくなっていた理由だと思った。

さらば2人に起こる展開としては、難易度調整のためにテレフォンカードの値段が倍々で上がっていくという要素はあったものの、細身の2人は割と早めに部屋からの脱出をしてしまう。
しかし、そこから更に広大なセットの中に閉じ込められていることを知った2人は、脱出のため、他の部屋に閉じ込められている人間を救い出すことになっていく。

その展開の中で、設置されているタバコの自販機に目が眩んだり、吊るされたしんいち・井口をヤクザの師弟のように恐喝したり、その代償として彼らにラーメンを投げつけたり、みなみかわとゲスい交渉をしたり、兎にも角にも物語の軸であるさらば2人が関わる展開の全てが面白かったため、全く飽きずに見続けることができた。

そして、肝心の謎解きの面でも、大鶴肥満の体重を使うことを閃いたり、クロちゃんと交渉をしたり、みちお酒井の部屋を救い出す方法に気づいたり、さらばの2人が物語の根幹を悉く担ってくれていたため、非常に見やすくしてくれていた。

「面白さの担保」と「物語の展開」を2つとも背負わせるという大役は、確かに今のバラエティ界で考えたら、さらばにしか務まらないなと思った。

更に言えば、さらば・大鶴肥満など、キャスティングがその人でなければならない理由がちゃんとあったことに、細部までのこだわりを感じた。製作陣が天才すぎる。

②謎解きやシナリオのモヤモヤの解消

そして2点目に、前作で感じた謎解きやシナリオへのモヤモヤ感も解消されていた。

前作では、
「トムブラウンの部屋は本当に食い破るしか脱出方法がなかったのか?」
「岡野と高野が閉じ込められていた部屋は、本当にあの脱出方法で正解だったのか?」
「最後3つの鍵を集めるシーンで、黄は電気、青は水に仕掛けがあったのに、なぜ赤はGoogle Homeの下にあったのか?」
「結局イスラエル人はなんだったのか?」
「クライマックスの脱出方法は意図通りだったのか?もし違っていたとしたら、想定していた脱出方法はなんだったのか?」
パッと思いつくだけでもこれくらいの疑問が残ったため、最高に面白くはあったが、モヤモヤが残る終わり方だったように感じた。

しかし今回は謎解きで不明な点が一つもなかった。全部の伏線展開に全て意味があって、見終わった後、めちゃくちゃスッキリした。

みちお達の脱出、その仕掛けを使って井口達も脱出、さらばとみなみかわ達の部屋を繋ぐ道を開けるために必要な大鶴肥満の活用、クロちゃんとクロスオーバーすることで別々の場所にいる2チームがラストの脱出を成功させる…と言う風に、全てが繋がっており、見終わった後めちゃくちゃ「良い作品見たな…」感があった。

そして、軸となる謎解きのシナリオの中で、しんいち・井口が金を隠匿使用したり、みなみかわがゲスい交渉を突き通そうとしたり、その報復としてみちおが彼らを懲らしめたり、全員の人間性が垣間見れたことで、展開が一味も二味も面白くなっており、終始笑わせてもらった。

中でも、やっぱりクロちゃんは飛び抜けて面白かった。全員で束になって展開を作るグループでの脱出に比べ、展開の全てを1人で担っているにも関わらず、グループの方に一歩も引けを取らない面白さを出せるのが天才すぎる。

普通に考えて、ずっとひとりぼっちのまま無人島に閉じ込められ、なんなら土に埋められるところからスタートなんて、彼は誰よりも可哀想で同情されるべき人間のはずである。
なのに、彼が黒電話の応対にモタモタしたり、見当違いな言動をしていたりすると、舌打ちしたくなるくらいムカついてしまう。
公衆電話のメモリが少ないなんて、クロちゃん側から分かるわけのない事情だから、モタつくのは当然のことなのに、なんか無性に神経を逆撫でするんだよな、彼。

ここまでの仕打ちをされているのに、可哀想という感情を1ミリも抱かせないの凄すぎる。水ダウのニューヨークじゃないけど、「そりゃ億稼ぐわ」って思わされた。

特に最後、アイテムを手に入れ、「脱出できる!」と意気込みながら砂場で足を滑らせ、ノー受け身で体を強打したシーンは窒息しそうになるくらい笑ってしまった。

結局、最後のバカリズムさんと小峠さんの話の中心も、クロちゃんだったもんな。こんだけめちゃくちゃ緻密に計算された面白い作品の、最後の面白さを全部持ってく彼の破壊力は本当にエグい。藤井さんが全幅の信頼を寄せている理由が詰まっている気がした。

また、筋書きで言えば、ラストの脱出方法がめちゃくちゃ賛否分かれるだろうなと思った。
だが、私個人的には筋が通っていたし、みちおと酒井に出しろが作られたので、めちゃくちゃ「賛」だった。

何なら、ここまで謎解きの緻密さで期待値を上げに上げながら惹きつけてきたお笑いライト層を、最後の一話で篩にかけ、急に突き放すのが痛快ですらあった。

クロちゃんが最後雑に切り離される展開があったことも含め、謎解きがメインなんじゃなくてお笑いが根幹なんだぞっていう魂を感じた気がして、めちゃくちゃ好きな終わり方だった。

③ラストの演出

最後にラストの演出について。

前作はモニター役の2人も閉じ込められており、脱出すると実は同じ村にいました、というだけだった。正直に言うと、これまでの壮大な展開の後だと余りにも陳腐で、物足りなさを感じた。

今回も基本的な構造は、2人が閉じ込められているという点で同じだったのだが、その後の展開が格段に面白くなっていた。

別の演者がまた同じように閉じ込められているエンドレスエイトみたいな演出、本作で使わなかった鍵が彼らの脱出に必要という仕掛け、タバコ自販機の売り上げを持ち帰れるという小ネタなど、最後の最後までめちゃくちゃこだわり抜かれてて、ある種感動すら覚えた。


最後に全部通しての感想としては、全く隙がなく、細部の細部までこだわり抜かれていて、最高に面白い完璧な作品だった。これに尽きる。

面白すぎて終わって欲しくなくて、最終話見るのを1日寝かせてしまうくらい良かった。

是非シーズン3もお願いします。

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