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あの桜の木

この桜に木の蕾が春には顔を見せてくれることを。

この桜の木で春には小鳥たちがその声を聴かせてくれることを。

この桜の木の花を春には愛でることができることを。

こんなにも強く願ったことがあっただろうか。


善と悪で埋め尽くされているこの世界で、私は何になりえようか。


地面に咲く花や、道路に立ちそびえる木々、人目を掻い潜ってひっそりと生きる虫たち。

なぜ、そんなにも簡単に彼らの存在を消し去ってしまうことができようか。


善も悪も誰もその桜の木の蕾が春には顔を見せてくれることを望まない者がいようか?



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