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びこ。

大きな山に向かって「おーい」と叫ぶと「おーい」と返ってくる。

やまびこ と言うらしい。

「ボケナスー!」と言うと「ボケナスー!」と返ってくるのだろう。
そうするとボケナスと言いたかった僕がボケナスということになってしまう。それは避けたい。なんとかこのボケナスと言いたい気持ちを発散させたまま終わらせたい。ボケナスをボケナスで返して欲しくない。

というわけで大きな大きな壺を買いました。
この壺の中にこのボケナスという気持ちを吐き出していこうと思います。

「ボケナスー!」

いい感じでした。非常に良かった。非常に良いボケナスでした。ただこれを繰り返していくと分かるのですが満たされなくなります。この壺という閉鎖空間の中に僕のボケナスを吐き出すのは閉塞感があります。やはり開けた場所でこの言葉を吐き出しだい。この気持ちを広い場所で伝えたいという思いが僕の中にはあるようです。

また山にやってきました。聳え立つ山々が僕を馬鹿にしています。それでも僕は叫びました。

「ボケナスー!」

と叫ぶと

「それでいいんだよー!」

返ってきました。認知されたこの言葉がどうやら私を救ったようです。スッキリしました。

「それで先輩のTシャツにボケナスって書いてあるんですね」
「え、これ英語でしょ」
「英語でボケナスって意味に近いんですよ」
「うそ。おしゃれで古着屋で買ったのに」
二人が喫茶店でこんな風に話している。ショックを受けたボケナスの僕を見て、後輩は頼んだメロンソーダをストローでブクブクとしていた。

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