「ポラリスが降り注ぐ夜」を読んで

はじめに「あまり重要ではない事実」として私はヘテロセクシャルです。
周りにセクマイの友達が(そもそも友達が)いないので
これからセクマイについて書くことは私の想像です。
なので誤っていたり、時代遅れだったり見当違いなことも
あるかと思いますがご容赦ください。
特定の誰かを嘲たり、傷つけることを目的としていません。

さて「ポラリスが降り注ぐ夜(以下、「ポラリス」と表記)」ですが
新宿二丁目にあるレズビアンバーポラリスを中心とした
群像劇が複数のストーリーで綴られています。
建物を中心に話が展開する小説としては、桜木紫乃「ホテルローヤル」や
朝井リョウ「星やどりの声」などがありますが「ポラリス」では
より人間同士の恋模様を中心に描かれています。

私は後にポラリスの店長となる夏子の話に出てくる

お互いの関係性に、二人は名前をつけようとはしなかった。たまに会って、話して、笑い合って、どこかへ行って、身体を交わして、それが全てで、それだけで良かったのだ。

の部分が一番のお気に入りです。ああ、ステキだなあと思う一方、
セクマイならではの問題が山のように表れ、壁のように立ちはだかるので
読んでいて、外から言うは簡単ですが、大変だなあと感じます。

「ポラリス」を朝の通勤電車で読み終え、
乗換駅で「きのう何食べた」18巻を買って読みました。
その中で、同性カップルが養子縁組してしまうと、
将来同性婚が認められた時に婚姻できなくなるという話が出てきて
ああ……。という気持ちになりました。

閑話休題、香凛の話に登場する新宿で人生相談しているおじさんも
新宿っぽくてお気に入りです。本編と全然関係ないですが、
10年以上前、新宿西口で立っていた「私の志集」を売っている
お姉さんから志集を買わなかったことを、今となっては後悔しています。

終わりに少しだけ私の話をします。「ポラリス」では登場人物の多くが
恋愛についてうまく行ってないように見えます。
これはセクマイ特有の(制度など)の事情もあるかと思いますが、
恋愛がうまく行かない苦悩は、セクマイに限った話ではないと考えます。

私自身、ずっと直面している問題があって、それは
「私が望む人は、私を選ばない」ということです。
振り向いてくれない人を好きになってしまった時、
あの手この手で気を引こうとしますが、大抵効果はありません。
二人っきりで会うことがあっても、向こうからしたら
私はたくさんの知り合いの一人に過ぎません。
全然相手にされなくても、それでも、それでも私にとっては
たった一人のかけがえのない存在なのです。

一人の人を好きになることと、相手がこちらを好いてくれない
というベクトル(矢印の向き)のずれがもたらす喪失感、
無力感、漠然とした寂しさ虚しさ、それらを抱えて一人で過ごす
先の見えない夜の闇の、止まったような時間の感覚は
きっとみんな共通なのではないでしょうか。

私は「ポラリス」の登場人物にポラリスや
キャビンのようなコミュニティがあることを羨ましく思います。

はてさて、感想文ということでしたら大体語ってしまいました。
面白いので、性的指向によらず是非読んでくれ!というのが感想です。
李先生はきっとセクマイの先を書きたいんだと思います。
「ポラリス」が○○作品と安易にラベル付けされることを好みません。
「彼岸花が咲く島」は先の話が書かれているのでそちらもおすすめです。

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