見出し画像

人の成長を後押しする「ヨコの関係」


岡村 衡一郎


ワンオンワンミーティング(上司と部下の直接対話)を取り入れる企業も多いと聞く。 ミーティングの趣旨は部下のための時間、週に 1 回の上司が個別に時間を取って一人一人の目標と行動の明確化を支援する。

上司が身近なトレーナーであるのは、今も昔も変わりない。しかし、縦の関係だけに育成を頼れば、上司にめぐまれた人は確実に成長し、そうでなければ伸びないなどの配置によって差が開いていくだろう。人が、どの部署に配属されても確実に育つ会社には、縦の関係だけでなくヨコの関係が効いている。

単に仲がよいといった表面的な関係ではなく、お互いの成長に責任を持ったかかわり合いができている。例えば、相手の行動に違和感を持ったら、その瞬間に理由を伝える。受け手は、なぜそう思うのか、どうするのが最適だと思うのか、と問いを立てる。最適解を見つけていくための対話がはじまる生産的な関係があるのだ。


残念ながら、多くの会社では、違和感は飲み会で止まっている。

「山田は間違っている」、「あのときの鈴木はこうするべきだったよ」などのグチになる。 ひどい場合は、必要なこと以外は話さない冷めた関係になっている。 本人に言わないことでためていくストレスを、あきらめ感や相手へのレッテルを張ることで消化させていく。

「あの人に言ってもしょうがない」、「あの人は保守的だから」と互いに突っ込み合わない関係ができあがっていくのだ。

「人の成長に効くのはヨコの関係だ」。

沖縄教育出版グループの創業者の川畑会長は語る。社長に注意されるより、仲間からのフィードバックの方が考えるし、指摘した人は自分を見直す機会になると言う。

「横にいる人が先生になるのが一番」。

川畑会長は、この成長に最良な環境を築いていくためのルールを徹底してきた、 指摘された瞬間に言われた人は、フィードバックをされた内容が合っているとか、間違っているとか言う前に「ありがとう」で返すというものだ。


指摘を受けての「ありがとう」という返しは、上司が部下を育成するという常識の上をいく。分かりました、気をつけますなどの一方的な関係では終わらないからだ。

「ありがとう」を媒介に指摘を自分たちの振り返りの情報として活用できる、沖縄教育出版グループの社員は確実に成長している。去年とは違う、より発展的な課題に向き合っていく土壌の指摘をありがとうで返すルールで耕してきたからだ。


上司が部下の育成指導をする。

この考え方は一般的だが、上司からの指摘は、分かりました気をつけます、などの一方通行のその場しのぎの対応になりやすい。

沖縄教育出版グループでは、日常的に「ありがとう、そう見える」、「ありがとう、なんでそう思うか教えて」などのやり取りが行なわれる。 伝えた側も伝えられた側も一緒に考える機会がたくさんある。


ヒトの成長の原動力は、考える力である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?