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初めてのシェアサイクルで75km漕いだ話

成り行き

ここ最近、あちこちで見かけるようになったシェアサイクルというサービス。便利そうだとは思いつつも、中々手を出せずにいた自分。大学が決まり少し余裕のある今、1回シェアサイクルとはどのようなものなのか確かめてみることした。


赤枠内を見よ

今回利用するハロサイことHello Cyclingは、エリアによって微妙に料金が異なる。上の表をご覧いただきたい。……お分かりいただけただろうか。筑西市が異常な値段設定になっている。

仮に都内から利用を開始したとすると12時間で1800円掛かってしまうが、筑西市からスタートすれば僅か500円だ(そもそもシェアサイクルは12時間も使うものではないとか言わない)。これは利用する他ないだろう。


関東北東の方のポート

開始地点は決まった。では返却はどこにするか。筑西市は他のエリアから独立しており、ある程度の距離を転がして別のエリアまで持ち出す必要がある。いや、筑西市内のポートに返すのが想定された正しい使い方なのだが。

まず茨城県内。常総線沿線にはいくつかポートがあり、常総線自体もサイクルトレインを実施している。しかしせっかく12時間まで500円であるため、もう少し長距離をライドしたい。却下。

次に選択肢として挙げられるのは土浦市。かつての筑波鉄道は現在はりんりんロードというサイクリングロードになっており、サイクリングには持ってこいだ。沿線には筑波山や真壁といった観光スポットもある。このルートにしておけば良かったなと思わなくもない。

他にも水戸市や栃木市にもポートが存在するが、同行者E氏はこのような発言をされた。

日光まで漕いだら楽しそうじゃね?


実は日光エリアにもポートが生えている

待て待て待て。いやまぁ確かに達成感は凄まじいだろう。しかし下館〜日光ではかなりの距離がある。最後まで一貫して上り坂。途中で返せるポートも無い。

冷静に考えよう。このルートを選択することはあり得ない。あり得ないはずなんだ……。


下館→宇都宮

おはようございます。研究学園都市として知られるつくば。この近未来的な都市をサイクリングするのも楽しそう。ポート生えてないから無理なんだけども。


つくバス北部シャトルと筑西市広域連携バスを乗り継ぎ、僅か500円で下館へ。ハロサイに関してもバスに関しても言えることだが、筑西市は公共交通に対する金銭感覚がおかしいと思う。


下館駅南口のポートの車を予約。アプリ上でバッテリーが満タン表示になっているものを選択した。まずここが痛恨のミス。てっきりこの表示はバッテリー残量100%を表すものだと思い込んでしまっていた。アプリ上のこの表示は60%以上を示すものらしい。えぇ……。


バッテリー満タン表示なのに……

そして自分の自転車はなんと残量60%だった(借りてしばらくしてから気付いた)。航続距離は37kmと表示されている。この時点では何とかなるだろうとエラい楽観的に捉えていたが、日光までは最短でも70km以上の距離だ。マジで馬鹿。過去の自分を小一時間問い詰めたい。

筆者が後に地獄を味わうことになるのは想像に容易いが、当の本人はそのようなことはつゆ知らず、呑気に下館の市街地を漕いでいる。なかなか立派な街並みだ。


利用開始は10時過ぎだったが、この先宇都宮までまともな街がないため軽く食料を補給しておくことにする。道の駅グランテラス筑西はオタク大好きセイコーマートが進出しており、北海道気分を味わうことができる。


チキンは当然として、おにぎりも美味い

HOT CHEFのうま塩チキンでキマったところで出発。宇都宮線と真岡線に挟まれた、何があるのかよく分からないエリアをひたすら北上。背後には筑波山、遥か彼方に美しい日光連山。これからあの麓まで行くのか……。正気?


彼方に見える日光連山
開けていて気分爽快

鬼怒川沿いはサクリングロードとして整備されており、なかなか爽快な走り心地。しかしここである事に気がつく。このままではバッテリーが持たない。持つはずがない。泣く泣くアシストを切り、重たい自転車を転がし始めた。


通せんぼ

河川敷を20kmほど進んだ後、市街地へ進む。いつの間にか辺りには住宅が立ち並ぶようになり交通量も増えている。いよいよ宇都宮が目前に迫っている。


陽東エリアの象徴? ベルモールでトイレ休憩。アルパカに癒された。この後は東武宇都宮方面まで移動し、「来らっせ」にて餃子を食す予定。


もふ


しばらくライトラインと並走する。いつの間にこんな立派なモノが出来てしまって、ただただ驚くばかりだ。


近未来的すぎる宇都宮駅東口。たまたま試運転の列車が入線していた。そして横をEast-iが通過。鉄オタへのサービス精神が旺盛ですなあ。

JRの線路を跨ぎもう少し西へ。二荒山神社を横目にドンキの前で駐輪。このドンキの地下が目的地「来らっせ」だ。


来らっせでは宇都宮餃子の名店が数多く出店しており、様々な店の餃子を同時に味わうことができる。今回は王道の「みんみん」と、羽付餃子が美味しい「めんめん」を注文した。ちょっとややこしい。

自転車を漕ぎ続け既に15時を回っており、2人前でもペロリと完食。同行者は3人前を食べていた。それにしても餃子の美味いこと。これ以上ないほど幸せだ。


游教科書体(横用)

しかし、宇都宮は今回のルートの半分弱に過ぎない。そしてこの先はより一層厳しい上り坂が待ち受けている。そんな恐怖が頭の隅に浮かびつつも、とりあえず餃子を頬張る。現実逃避ってやつ。


宇都宮→日光

さて腹も満たされたことだし移動を再開しよう……と席を立った矢先、とてつもない不安に駆られる。

足が……!足が痛い!!!

当たり前な話ではあるが。果たして本当に日光まで辿り着けるのか、そんなことを考えながら再びサドルに跨る。

ケツが……!ケツが痛い!!!

足の痛みは正直気合で何とかなる節はある。しかしケツの痛みとなると話が違う。サドルに座っているだけでしんどい。

この先の峠道に備えバッテリーは温存している。重い自転車を動かす為、またケツに負荷を掛けない為に立ち漕ぎ中心で進んで行く。

ぼちぼち夕方の帰宅ラッシュということもあってか、郊外にしてはバスの本数が多い。関東自動車のキュービックも見かけたが、いちいちスマホで撮影している暇が無いのが残念だ。

北に進むにつれバスは減っていき、日が落ちていき、勾配は厳しくなる。徳次郎の辺りまで来ただろうか。徳次郎と書いて「とくじら」と読む。読めるか!ちなみに全然徳次郎じゃなかった。どこだよここ。

いかにも「この先峠道です」といった雰囲気。流石に足が疲れて来たのでアシストを入れる。ペダルに力を入れた途端にスイ〜っと進むこの感触。そうそう、これが電動自転車だよ!

残り13km(迫真)

しかし電動の喜びに浸っているのも束の間。みるみるバッテリーが減っていく。ここまでかなり節約して来たつもりだが、これでは日光まで持たないかもしれない。さてどうする。とりあえず進もう。


栗谷沢ダム。一応ダム湖らしい。湖を眺めて一息つく。この先は日も暮れて、しばらく何もない区間が続くだろう。ダムの脇にトイレがあったので用も足しておく。都合の良いトイレ。


ここどこ

休憩を終えて再び漕ぎ始める……はずが、どうも自転車が進まない。普段全く運動をしない虚弱な体は限界を迎えていた。ちょうどトンネルに差し掛かったこともあり、仕方ないので自転車を手で押して歩きながら体を休ませる。

トンネルを抜けるとそこは雪国だった……と言うには大袈裟だが、雪がちらほら残っている。日もすっかり沈み、あたりは真っ暗だ。路面凍結でスリップ!なんてことがないよう慎重に漕いで行く。


今市までまだ10km以上あるという事実に絶望しつつも漕いで行くと、何やら見慣れたモノが。あぁ、こんな所にセブンイレブンが!コンビニは便利だな〜。

軽く食料を補給し、完全復活!というわけには行かず、疲れ切った体に鞭を入れて進む。ここからしばらく虚無の時間。考えたら負け。とにかく漕ぐだけ。


今市の手前で東武線と交差。今すぐに電車に乗りたい。切実に。東武線は東武日光〜下今市〜鬼怒川温泉でサイクルトレインを実施しているが、それは日中だけ。この時間は流石に対応してくれない。


(この間ガチで疲労困憊。文章に起こしたくないレベル)

ようやく、ようやく、ようやく今市に着いた。久しぶりの街にどこか安心しつつ、ファミマに寄って休憩。そろそろ帰りの電車の時間を調べないとまずい。

とりまチキンを食す

当初の予定では東武線で帰京する予定だった。宇都宮で予め株主優待券も購入していた。が、恐らく乗車予定だった南栗橋行きの電車にはもう間に合わない。間に合うはずがない。

その次の電車は新藤原行き。下今市で南栗橋行きに接続しているものかと思ったが、接続先は栃木行きだった。この瞬間、東武線では東京まで帰れないことが確定した。

となるとJRを使う他ない。最終の日光線で宇都宮に出ると……、乗り換えられる宇都宮線は大宮行きだ。まずい。JRでも東京に帰れないのか!?

ここで最終手段。新幹線の登場だ。日光線の列車からでも東京行きがまだ2本残っていた。神様仏様東北新幹線様。日本の技術の勝利です。崇めましょう。

オタク御用達ダークモード

日光線の終電まではまだ1時間以上あるので、とりあえず何とか家には帰れそうという安心感に包まれる。少しずつ、でも確実に日光には近づいている。あと少し。ラストスパート!今ならどこまででも漕いで行けそうな気がするZE〜〜〜!!!


……はい。スパート終わりです。電池切れました。終わりです。まだ5km以上あります。永遠に上り坂です。終わりです。行けるとこまでとりあえず漕ごう。

しばらく無心で自転車を漕いだ後、我々は自転車を「漕ぐ」という動作を放棄した。スマホで歌を流しながら自転車を押して歩き始める。ここまで来ると逆に面白い。深夜テンション。誰もいない日光街道の杉並木、ライトだけを頼りに進んで行く。

……結局1時間弱は歩いただろうか。日光線の高架を潜り抜け、ようやく日光駅が見えてきた。本当に長かった。後は自転車を返すだけなんだ。そう自分を奮い立たせる。

返却は東武日光駅のポート。JRの駅よりほんの少しだけ奥にあるのが嫌らしい。観光客で賑わう日光駅前のロータリーも今は静まり返っている。えらい時間に来てしまった。

返却返却返却返却返却返却返却返却ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。

限界を迎えた太ももをなんとか動かして、早足でJR日光駅へ。終電に間に合った。助かった。よく分からないがとりあえず達成感はある。

下館駅から日光駅。距離にして実に75kmもあったらしい。普段そこまで自転車に乗るわけでもないのに、調子に乗り過ぎてしまった。


必死で上ってきた勾配を、日光線の列車はするすると下っていく。2時間近く掛かった今市〜日光が、電車なら僅か4分で着いてしまうらしい。実に馬鹿馬鹿しい。そして鉄道は偉大だ。


秒で宇都宮戻るやん


あとがき?

さて、実際に長距離ライドをした身から、読者の諸君にアドバイスをしよう。

バッテリーを確認しよう(正直これに尽きる)
・寒い時期は手袋を持参しよう(助かった)
・ハンドルが汚い場合もあるので何か拭けるものもあるといいかも
・いつでも地図を確認できるよう自転車に取り付けるスマホスタンドを用意しよう
・身の丈にあった距離をライドしよう

最後に、この記事を読んで「ハロサイ乗ってみるか!」となる方はあまりいないだろう。いるとしたらかなりの変態だと思う。

しかし、街中でのちょっとした移動にはシェアサイクルは非常に便利だ。賢い読者諸君は、このサービスをぜひ有効活用していただきたい。



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