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自分のやりたかったゲームを公開したら「これはゲームじゃない」とめちゃめちゃ言われた話

こんにちは!「同じ火を眺める時間」を共有するゲーム『オンライン線香花火』作者の宮村です。おかげさまで5万ダウンロードを突破しました!ありがとうございます。
「自分の遊びたかったゲームをこんなに多くの方に遊んでいただけて嬉しいなあ」とほくほくしながらAppStoreアプリレビューを見ると、こんなコメントが…

「面白い。ただこれはゲームではない」

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こういうコメント、たまに頂くのですが、「何がゲームで何がゲームではないかの枠をちゃんとわかっている人なんだ…!すごいなあ」と素直に思います。(アオリではありません!)
ただ、じゃあどうして「オンライン線香花火はゲームではない」という判断をされたのかは、多くの場合書かれていません。「面白い」と言っていただけているので、「こんなつまらないもの、ゲームじゃない!」という意図ではなさそうです。(もしそういうスタンスだったとしても、面白いか面白くないかでゲームかどうか決めようというスタンスにもちょっと思うところがありますが)

理由を教えてほしい…!!!いったいどうして…?????

ということで、どのような要素があるとゲームはゲームになるのかについて考えていきたいと思います。

オンライン線香花火って?

「ゲームに必要な要素」の前に、オンライン線香花火の説明を軽くさせてください。

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オンライン線香花火は、線香花火を通じてささやかなコミュニケーションを楽しむものとなっています。たしかに「敵を倒す」「アイテムを集める」などのわかりやすい目的のあるゲームではありません。線香花火のみでの純粋なコミュニケーションという面白さの軸をぶらさないために、チャットやレベルアップシステム、定量的な評価などもあえて入れていません。
しかし、わかりやすい目的がない、長時間遊ぶ人が少ないというだけで「ゲームではない」と決めるのはちょっと早いなと思います。

「ゲーム」を「ゲーム」にする要素を考える

「オンライン線香花火はゲームか否か」のお話をするのなら、どんな要素があったらゲームなのかを考えることが必要です。
一般的にゲームとして知られていて、でもゲームの要素が薄そうで、オンライン線香花火と似たような要素を持つゲームというと……
ねこあつめを思い出します。

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ねこあつめのゲームサイクルは主にこんな感じです。

①にぼし(ゲーム内通貨)でねこのゴハンやグッズを買って設置する
②ねこが来るのを数時間待つ
③眺めて癒される
④ねこがにぼしを置いていくので、そのにぼしでまたゴハンやグッズを買う…
⑤これを繰り返す

それでは、このねことのやりとりの中のどこにゲーム性があるのでしょうか。
ねこあつめはオンライン線香花火と同じく「眺めて癒される」「言葉を介したコミュニケーションをしない」「敵が出てこない」という要素を持っています。また、クリアやステージといったものがありません。しかし1900万以上ダウンロードされている大人気のゲームです(すごい!ねこがかわいい!!!)一見「ゲームっぽさ」はなさそうに思えるのですが、 どうして「ゲーム」として広まっているのでしょう。

それは、インタラクティブな面白さだとわたしは思います。
インタラクティブとは、映画などの一方的な情報送信とは違って、「双方向に情報をやり取りすること」です。

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ねこのグッズを選んで置いて、しばらく待つとねこが来てくれる。
プレイヤーが置いたおもちゃでねこが遊ぶ。それをプレイヤーが写真に撮る。
レアねこが来るちょっとお高めのゴハンを置く。レアねこが来る。それを見逃したくないので、プレイヤーもちょくちょく見にいく。

こんなふうに、プレイヤーは複数の選択肢から行動を選び、プレイヤーが行動するとねこからの反応があり、それを受け取ってプレイヤーはまた何か行動をする…といった図になります。そしてそこに面白さがあります。

双方向

ゲーム(ねこ)とプレイヤーの双方向のコミュニケーションが成立していて、わたしたちはそれを楽しんでいます。これがインタラクティブな面白さということです。

では、「オンライン線香花火はインタラクティブか?」と考えると、以下のようになります。

はなび

線香花火をろうそくに近づけると火がつく。しばらくすると火が消える。
早く動かすと火の玉が落ちる。
他の人の火のついていない花火に自分の花火を近づけると、相手の花火に火がつく。
火がついたら、お互いの花火がきれいに見えるように少し距離をとる。

1人でのプレイでも複数人でのプレイでも、何かを入力すると反応が返ってきて、それによってまた自分のふるまいを決める…これはゲームであるとわたしは思います。

まとめ

「インタラクティブな面白さ」がゲームの1要素なのではないかというお話をしてきました。敵を倒す、アイテムを集めるなどの目的がはっきりしている「ゲームらしいゲーム」が「ゲーム」と言われている中、こんなゲームのとらえ方があっても面白いんじゃないかなと思います。
言葉の定義は移り行くものです。これはゲーム以外のものでも言えることです。例えば美術の分野の例を挙げてみます。美術と言えば歴史などをテーマに筆の跡を残さず写実的に描くことが一般的だった当時、クロード・モネを代表とする印象派は風景を筆の跡をあえて残して描いていました。今までの美術の流れと逆を行く作風だったので、発表当時は「こんなのただの印象で描いたものじゃん。未完成だよ」と批評家に酷評され受け入れられませんでした。しかししだいに印象派の絵の良さを支持する人が増え、今では美術の歴史を語るうえで外せないほど有名となっています。

自分の中に「こういうゲームが好き!」というのを持つことはもちろん良いことです。ただ「今まで自分がプレイしてきたゲームと何か違うから」という理由や、言語化しないまま「これはゲームじゃない」と枠を制限するのはもったいないんじゃないかなと、わたしは考えています。もちろん色々考えたうえで「やっぱりこれはゲームじゃない」と思うならそれもOKだと思います。

ゲーム作家・ゲーム研究者の遠藤雅伸さんは「ゲームデザインの知見が溜まっていくと、その外側に答えを求めようとするのがゲームデザイナーである」と言っています。「こんなのもゲームなんだ!」と驚くような、色んなゲームがでてくると楽しいなあと思います。

追記(2021/9/5)

たくさんの方に読んでいただけて、この記事をきっかけにオンライン線香花火をインストールしていただいたり、Twitterで色々なご意見を頂いたりできてとっても嬉しいです!ありがとうございます!
頂いたご意見は、「同じ理由でオンライン線香花火はゲームだと思う」「~~という理由でゲームだと思う」「~~という理由でゲームだとは思わない」など……これがめちゃめちゃ嬉しいです!!!この記事は「オンライン線香花火はゲームです。こうとらえるのが正解です」と言いたいのではなく「わたしはこう思うけどあなたはどう思う?」という投げかけの記事で、「ゲームだと思う/思わない」のその人なりの理由を知りたかったので!

また、「ゲームじゃない」というお声をいただいた原因として、「オンライン線香花火は「ゲーム=マリオ」という考えの人(カジュアル層)に主に遊んでもらうゲーム。「ゲームじゃない」と言われるのなら、その人たちに届いた証拠なんじゃないか」といった分析もいただいてすごくしっくりきました!本当に本当に嬉しいです。オンライン線香花火を作って良かったし、この記事も公開してみて良かった…!ありがとうございます。

◆最後に
『オンライン線香花火』は以下のリンク先で配信中です!もしご興味がありましたらぜひ遊んでみてください!

Steam
https://store.steampowered.com/app/1965390/_/?l=japanese

App Store
https://apps.apple.com/jp/app/id1563671533
Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.MiyamuraAtsuki.Onlinesparkler


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■参考書籍
 角川アスキー総合研究所『ゲームってなんでおもしろい?』


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