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先生とフルートと私 2021.6

先生が言うには、トリルを吹く時に右手の薬指が大きく上がっていると。ならばと私は、フルートのキーに薬指をピタリとつけて、キーを押したり戻したりした。すると先生は、『指がくっついて しまったよ』と、それではダメだという感じで『時々 薬指が大きく上がっている』と言った。なるほど、時々 上がる薬指がダメなのかと、了解した。しかし、薬指が大きく上がっているなどとは全く気づいていなかった。自分の指だというのに不思議だ。それに 人は、同じ動きを続けることが 苦手だったり、苦痛だったりするんだと、あらためて感じた。たかだか 薬指を小刻みに 上げ下げするだけなのに、それが ある程度 続くと苦痛を感じてしまう。ところが、その苦痛を回避するために、人は ちゃんと薬指を大きく上げさせたりもする。しかも、気づかれないように 秘密裡に。ちゃんと回避する方法が用意されているのだ。すばらしい。このすばらしいシステムに、私は抗うのか? 私は私を守っているだけなのに、先生は まかりならんと、ひどい話だ。

しかしながら、時々 薬指が大きく上がる ということは、フルートの音が不規則に鳴るということだ。美しくないということだ。観念するしかないのだろう。あとは「気にするな、私は同じ動きを続けてなどいない」と言い聞かせ、脳を騙すか? 筋トレのように、いくらやっても苦痛を感じないぐらい脳を慣れさせるか? いずれにせよ練習が必要だ。

さて、先生に会うのは1年3ケ月ぶり、しかも初めてのオンラインである。フルートをはさんで 先生と私の時間が動き出した。

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