鬼剃り萬平

鬼剃り萬平

最近の記事

サッカー小僧の膝っ小僧は傷だらけ

 少年サッカーをしていた頃もFWで岬くんバリの引っ越しオタクでクラブに所属していたのは一年だけ。休み時間のサッカーは無双状態でボールを追いかけ授業中は勉強ができないから45分間緊張状態。リフティングが出来ないタイプのサッカー小僧だったけれどもドリブルは上手いし楽しい。  鬼剃り期は部活に入らないとサッカーが出来ないから離れるがサッカー部の奴らとたまに蹴ると誉められ部活に入れと持ち上げられる気持ちよさが剃り込みのエッジに反映された。思えば剃りが丸くなってきた時ほどボールを蹴る機

    • ㎜冒険

         七年と半分ほど日本国総理大臣を務めた安部さんが辞任すると発表した頃。 どこかのアホウが蒸し風呂のドアーを開いた夕暮れに僕は我慢ならずハードオフに駆け込んだ。目当てのアイホーン純正イヤホンを三百円で、ついでに純正の充電器も百円で購入して店を出てすぐ装着して流すはダーティプロジェクターズ。耳元に垂れたボタンで音量をあげた。もうそれで満足だ。この狂わしい空が変わる前にダンスフォーユーの間奏に浸る。どろっと溶けたなにかの中心に幸福感がプチプチを潰すように弾けた。 科学の

      • 八月二十五日に山へ散歩に沢が流れ

        灼熱高気圧が南海上に下がり空気が楽になった頃、宇宙センターからロケットが地球を抜けるのを見届けて私は山の麓に着いた。動きやすい黒のジャージズボンに水色のポロシャツを着てシュプリーム(偽物)のリュックを背負ってハイキングコースに入ろうとしたのだけれど入り口にトラロープがピンと張られ町役場名義の侵入禁止を案内する看板がかけれていた。熊の目撃情報があったらしい。私が目撃者にならずによかった。 フェアレディZ32の重すぎるのにショボいトランクにリュックを戻し靴をサンダルに履き替え

        • 今日は日中外に出る

           さっぱり冷めない夜に車でちょいと遠くのコンビニへ行ってもいいのだけれども歩いている。深夜にエンジン音が響くのが苦手だしドアの明け閉めもロックを解錠する音も苦手というもんで持っている靴のなかで最も足音のたたない紺色のアディダスを履き(本当はサンダルがよかったのだがわざわざ靴下まではいた)どこへ行こうかとかどこを歩いて行けば怪しくないかとかこんなことを考え玄関に行っては戻ってを繰り返して外に出るまで一時間以上かかった。 住宅街を汗を滴ながら行くのは日中まったく動かなかったか

        サッカー小僧の膝っ小僧は傷だらけ

          緑スカート 青い尻

          マルが転がって緑のスカートを履いた二十代後半程にみえる女に当たって消えた。マルは白だったが当たった直後にオレンジ色になったように思えた。緑を履いた女はスマホを取り出してなにかを見ていた。表情からなにを見たのかはわからなかったが歩き方が軽くなっていた。 今日は遠くまで晴れて奈紗荷山がくっきりと見えるから視界が開けていい気持ちなので奮発してコーヒーショップでアメリカンコーヒーをテイクアウトした。気取った足取りで少し歩いて一口飲み、空を見上げて一口飲んでいるとあっと言う間にな

          緑スカート 青い尻

          八月三十一日の夜に

          流星群が流れヒップホップにグルーブした騒がしい夜はあっけなく終わり。友達やそのまた友達は自分の戻る場所へと散って行った。最後までそれを見届けたのは私だった。日が経つにつれて静かさを増す夜を過ごすと蜃気楼ように掴み所のない不安も増していった。 ムラセは安全に交通するための白やオレンジのラインを灼熱のアスファルトの上で引いているだろうし、アカザキは嫁の実家に帰省して気を使っているだろう。遊び続ける奴や学校へ行くやつもいる。今年の夏もみんなの前で人ってのはなにかの拍子にバラン

          八月三十一日の夜に

          豆を追ってく散策師

           豆を追ってくと古びた三階建のアパートの庭ともいえる草むらに入らなければならず少し考えて進むことにした。家を出てからほんの十分ほどしか経っていないから鈍い思考回路を通っていたのだ。一階の一番西の部屋にほとんど裸な格好をした女がいて世間話に花を咲かせたのだかなによりも不思議だったのが湯気がでる暑さのなのにもかかわらず扇風機二台を対面させその中で涼しんでいたということだ。暑い空気を流しているだけ、なのでロングヘアーは顔にベッタリ張り付きその姿は熱量を上げるので結わえばいいとヘアゴ

          豆を追ってく散策師

          思い出しやがれ 夏休み

           昼間暑すぎ冷房の効いた部屋でテレビを観ながらこんなんでいいのか夏と自問する。子供の時はチャリをこいで公園や川で暑さではなく遊ぶことに熱中していた。隙間なく楽しいことを考えて思いつき試していくとあっという間に夏休みが終わっていて、急激に日常に戻されて重苦しい空気を吸うことに慣れてしまったことを思い出しやがれ。  

          思い出しやがれ 夏休み

          夏の終わりには音がなる

             夏の終わには音が鳴る。雷でも軍事機でもミサイルでも花火でもなくとても大きな爆発音か破裂音か静かな闇の音なのかもしれないが毎年確かに聞こえて驚いて一息つくとそれが夏の終わりを告げているのだとわかる。昼間の年も明け方の年もあるし九月の半ばや八月の半ばの時もあってその後一週間は眠たくてつらくて意識を半分高気圧に持ってかれたよう思う。  眠たいだけでねるわけじゃない。遠くのアスファルトに一人残され揺れていてそこから動かないでいる。    ようやく戻ると外は軽く新鮮な空気に変

          夏の終わりには音がなる

          夏のマドンナ

           日常に嘘のない女だけが夏に透明度の高いブルーが広がる。  毎年一人か二人しかみない本当のマドンナは今年はまだみていないのは部屋から出ないからで日が落ちてからランニングにいくのが日課になればいいくらいなもので日中に外出しても人が少ない時間帯を狙って行くし陽射しがきついからサングラスをかけたらほとんどそのブルーは見えなくなるのだった。  井戸のそこに堕ちていくようなブルー 欲しがった透けるようなブルーは南の白い砂浜を連想させる。  ランニングの後の張った太ももと心地よい

          夏のマドンナ

          鬼剃り展覧会場はどこ?…アートサイダー夏物語…

          早朝のサッカーグラウンドを走る。芝は湿りをもっていて踵にひっつく。いい汗をかいてもまだ六時前だ。朝食にカップラーメンと焼肉弁当を食べて直管の単車に跨る。 夜更かしした日は夜に散歩をする 夏物語 プロテインをはじめて飲んだ日 山頂の景色は人それぞれ 夏の田舎の交差点にダンプが通るとほんとうの夏がやってくる 蝶々になろうとしている 玄関を開けるといつも電線が横切る さよならグットラック みてくれてありがと

          鬼剃り展覧会場はどこ?…アートサイダー夏物語…

          暑くてクサくて木洩れ日よ

          すっかりマスクをしないとパンツを穿き忘れたような気持ちになってきて恥ずかしい感情が芽生えはじめた。 平日のほとんどのイカ子のマスクを集めることが簡単になりそれもすっかりお馴染みになると休日のマスクが欲しくなってきた。 イカ子というのはあだ名で本名は別にあるが皆んなそう呼んでいるから私もイカ子と呼んでいるのだけれどこうして思えば本名を知らないし年齢も知らないが知ったところでなにかあるわけないことも知っているから気にかけやしないしなにかあるとイカ子との道中この濃密で汗臭い時

          暑くてクサくて木洩れ日よ

          開けっぴろげ おっぴろげ

          タイトル 四万八千円 日本列島に晴れのマーキングをする。 春なのか秋なの分かりにくい白空の朝であった。カレンダーを見ない生活をしていれば私は春の朝であると答えただろう。湿り気が秋にしては少々多い。 水溜りが乾きはじめていてる。どこかの家からは女の声が聞こえてどこかの家から魚を焼くにおいがして気持ちが悪くなったのは寝不足のせいもあるだろう。子供の頃から朝食が苦手でいて思春期真っ只中は包丁の叩く音で気持ちが悪くなった。それを避けるように夜遊びを始め朝食が終わる頃に帰ったり

          開けっぴろげ おっぴろげ

          狩に行くプレーがやりたい

           晴れないし雨も降らない夕方過ぎバカのひとつ覚えに二キロと少し続く住宅街を歩いてぶち破っている。アホほど大群の鳥の声と夕食と人の家の様々なにおいをバチ破ってフットサルコートにたどり着く。四面あるコートを周回しながらプレーのイメージを鮮明して集中力を高めていく。ボヤけたり別のイメージが沸いてくるプレーはできないことを知ってる。  八月が目前なのに明けない梅雨のせいで夏の終わりのような空気の中で集中力が高まる。素早く攻守を切り替えどんどんハイプレスをかけて相手の攻撃を潰していく。

          狩に行くプレーがやりたい

          尾根

          山から雲が流れていてこんな日は明け方が長くなるから散策師。尾根に整備されたふかふかの遊歩道は喉に詰まる山臭に足元をとられてこんちくしょう襲撃されるがすぐに馴れたら枝葉から光でた美しさや時折訪れる世界で一番静かなときにとてもうるさい私はなんだろうと散策していた矢先に気がついた。どこから尾根に合流したのか胴長を穿いた女が歩いている。いったいいつから前にいたのか検討がつかないのだけれど、確かに私の前をガブガブと足音をたてながら東へ進んでいる。後ろ姿から若い女の雰囲気を感じとった。