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「最低保障年金」は悪くない案だけど、その財源を消費税にするのは、反対!

65歳以上の高齢者層はベーシックインカム(BIと以下略します)制度がもう既にあります!
公的年金制度がそれに該当します 基礎年金と厚生年金のことです
(基礎年金は、年金保険料を支払うときには「国民年金」と言い、給付されるときには「基礎年金」と言います)

正確には、年金保険料が収められていないと公的年金は給付されないから「無条件に一律に」ではないので、BIとは言い難いところが欠点としてあります

この欠点を改良したもの?と思われるのが下記リンク先に書かれた「最低保障年金」制度です

この制度の良いところは、いろいろな事情で年金保険料を納めていなくても今の基礎年金の部分だけは支払われるように、100%税金で賄うというところです
これによって「無年金」という問題は解消できるでしょう

この「最低保障年金」制度に現行の基礎年金を置き換えるアイデアは、まさにBIです
スバラシイ!と賞賛したいところですが・・・

「上記リンク先に書かれた最低保障年金の案」には問題があると私は思います

最低保障年金の財源を「消費税」にしよう!という意味のことが書かれています、これは問題だと思います(まだそれで決まったわけではありませんし、最低保障年金制度自体もまだ素案です)

さらにこの案が今の世論の多数派と一応そうなっている与党で論じられているため、BIのさきがけとしては良いスタートアップ環境にあると思うけど、その一方で消費税増税のための方便として作用してしまうのを、私は心配します

このまま「社会保障の財源は消費税で!」という方針で固まってしまうことはいくつもの問題があると、そう思ったからここでnoteせずにはいられません

上記リンク先の記事には「現在徴収している国民年金保険料を徴収するのをやめて、代わりに消費税を5%上げる」と書いてあります

これを検算してみましょう

国民年金保険料は20歳以上60歳未満の人が対象で、一人あたり年間約20万円ほどの額になります
20歳になってから60歳までこの保険料を納めることは義務ですから「保険税」という税金と言い換えられることもあります
日本の20歳から60歳までの人口は約6000万人です
なので1年間あたり、20万円×6000万人=12兆円 の国民健康保険料が基礎年金の財源として国庫の入金されているものと想像できます
しかし近年の基礎年金資金額は税金と保険料が共に半々づつ充てられているので、高齢者に給付する基礎年金はその倍の総額24兆円になり、内訳は50%が保険料、残り50%が税金という構成になっています

一方で、上述の「最低保障年金制度」の案ではこれを全額税で賄うとしている案なので、今まで保険料からの12兆円分をやめて消費税を増やして充てることにする!こういうことになります

このために消費税を5%増額したらいいじゃないか!と書いてありますが、コレ本当なのでしょうか?

検算してみます

最近の国の消費税はほぼ10%(食料品などは8%ですが概算計算なのでここを無視します)となっています
政府の統計を見ると、その額はちょうど約24兆円だそうです
税率10%で24兆円を集めているなら、更に12兆円を上積みしたいなら5%増やせばよいことが計算できます
だから国民健康保険料をやめて消費税5%増やしましょう!は帳尻が合っていることになります

一見良さそうに見えますが、ここにひとつ悩ましいことが隠れています

国民年金保険料は20歳以上60歳未満の人から徴収されるけど、消費税はそれ以外の全員が「買い物したら」払わなくてはなりません

子どもも高齢者も当然に買い物します
例えば60歳以上の高齢者は現在は保険料を払いません(480カ月かけていない人は60歳過ぎても任意で足りない月数の保険料が追加してかけられる制度は例外的にありますが)
ということは今は年金保険料を支払う対象でない人も、買い物ついでに保険料に代わる「5%増額された消費税」を払うことになるという意味が消費税を財源にするということになります

つまり、基礎年金の財源を全国民から薄く広く集めましょう!ということになるわけですね

これによって20歳から60歳までの働いて年金保険料を納めていた世代は年金保険料が安くなって(会社が天引きする年金保険料の中に国民年金分も入っているから)喜ばしい!かもしれないです

ただ、その人達の家族、特にお子さんのために買うものにも全部5%アップされた消費税がかかって来るってどうよ!?という悩みも起こるのではないでしょうか

しかも、会社が天引きする年金保険料は、実は半分だけ、労使折半の制度になっているのです

今は会社員の人が払っている年金保険料は実は労使折半のために半額で済んでいるのですね、ウレシイことに
その反面、会社は全従業員に半額分の保険料を国に払っているわけです

だから最低保障年金制度が実現したら会社側はウレシイわけですが、
社員の側は基礎年金部分の半額だけが安くなり、その減った額を上回る消費税5%アップのパンチを食らうことになってしまうでしょうということは十分に考えられると思います

他方、年金生活者層の高齢者は激オコ間違いなしです

なにしろ受け取る年金額は変化しない(らしいが?)のに消費税だけ5%増やしたら、そりゃ生活困るでしょ!

問題は、いつこのことに高齢者層が気づくのか?ここが問題です

そのうちに
「来月から制度が変わって基礎年金といっていたのが最低保障年金になりますよ」
「国民健康保険料を集めるのやめて、同額を消費税を5%だけアップさせて賄いますから国民の皆さんの負担は変わりません」
アナウンスされる日が来るような気がします
その時に、上述のトリックに気づくかな?

制度が始まってしまってから
「ヤバ!年金変わらずのくせに増税やんか!、俺達高齢者はもうとっくに国民健康保険料なんか払ってないぞ!」
こうなるのではないかと、私はちょっと心配になります

この結果、怒った高齢者層は何をするかというと・・・

年金だけで生活している人の暮らしはますます苦しくなるでしょう
年金は厚生年金を含めても高い人でも月に25万円ぐらいにしかならないから、年金だけで暮らす人は贅沢したくてもできないはずです

仮に年間200万円で暮らしている年金生活老夫婦は、たぶん年間150万円ぐらいは消費税がかかる買い物をするでしょう(残りは介護保険や健康保険、それに固定資産税などの非課税出費)
ということは5%消費税増で年間7万円ぐらいは税金で余分に持って行かれます
こういう世帯が全体の約25%(2021年の厚生労働省の国民生活基礎調査)いるようです

その他75%は他の収入があるか貯蓄を持っている高齢者世帯で、たぶん生活水準はもっと高くて年間の課税消費額は300万円を超える人はザラでしょう

そういう人達は消費税が5%上がったら、モノやサービスを買わなくなってしまうのではないでしょうか
というか、昨今のインフレの影響も加わって、買いたくても買えない高齢者人口は増えてしまうでしょう

もし、それでも消費税増で今の基礎年金を最低保障年金制度に換えてしまったら、それが前例となるのがもっと怖いはなし

きっとその先の「現役世代以下へのBI給付」という検討や議論も「消費税増で」となってしまうことは目に見えています

基礎年金を最低保障年金に換えるのは、ある意味簡単です

給付金額が変わらずに「保険料から税金に付け替えるだけですよ」で済むから国民の反応もそうキツくないでしょう

だから最低保障年金制度は案外早い時期に法整備が進んで、消費税財源で実現されてしまうと想像できます

それがその先のBIへの「前例」になってしまう!これが一番の問題です
日本は「前例主義の国」です

これがもたらすシナリオは二つあります

一つめのシナリオは、貧しく質素な国になっていく

現役世代以下のBIを検討するなら高齢者世代がやったように消費税財源とすることは必須、だってもう前例があるんだから・・・
これで以降のBIは問答無用で財源は消費税増税で決まり!

この結果、日本は今後長く長~く、モノやサービスが売れない「貧しい国」になり、人々は質素な暮らし
家庭菜園や自給生活が流行り、物々交換する人達も増えるでしょう

二つめは、消費税財源にするのが嫌なら、全部やめちまえ!

もう「最低保障年金という実質的な高齢者へのBIを消費税でやった」は前例となっている方法なんだから今更変えることなんかできねぇんだよ!

これで以降のBI導入は立ち消えに!

しかしBIの本来の目的は、この後の世の中がきっと直面するAIやそれによるロボット(今でもほぼ実現されている作業者がほぼいない工場、自動運転、自立配送、遠隔操作などなど)技術の進歩により、少子化で働き手が減った時代であっても「もはや働ける仕事が見つからない」人達への生活保障なのです

「それを実現したけりゃ、財源を消費税増税で賄う」この合意書に国民はOKを出せ、こう迫られるのではないでしょうか?

「あ、そう!NOなの」「ではもうBIの議論は止めましょう」
「それでも生きる方法は自己責任で決めてください」
こんなふうな、悪い予感を強く感じている上述リンク先の記事でした

じゃあ財源をどうするんだ!?

まずは今の基礎年金の制度をそのまま続行させ(高齢者にはもう公的年金制度があるので焦って変える必要もないから優先順位は最後)現役世代のBI(BIより「負の所得税」の方が実際的だと思う)を先に導入させる前提で、

そのときの財源は消費税を少しは含めてもいいかもしれないけど、他に特に法人税、金融資産税、他に所得税、固定資産税などに広く配分して、場合によっては貯蓄税(個人預貯金や企業の内部留保に累進課税するやりかた)の導入検討が良いのでは?と、個人的には思っています

その他に国としての貨幣発行益が得られ、それによってBIを回せるしくみ(たとえば半減期通貨など)も実用化して欲しいと思うけど、前例主義のこの国では、まあ願っても無理だろうと諦めなきゃしょうがないでしょうか?

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